展示室/貴金属・宝石[4]


06-033
ルチルサンのリング -夜明け-
2006年2月
ルチルクォーツ(9x7.5mm)/キュービック・ジルコニアx3(3mm,2.5mm,2mm)/SILVER950
#10.5
3.75g

以前ルチルクォーツを探した際に、たまたま端にルチルサンが半分入った石を見付けました。このサイズで形の判るルチルサンが入っている石はあまり見かけません。入る位置、向き共に使い易いものではありませんが、それを逆手に取れないか…
こうして手の上に「夜明け」が訪れました。

延べ出しのアレンジ課題で作ったものなので、リング本体は地金を叩いて作っています。横方向に丸めた腕の上に覆輪座を載せ、脇にパイプから作ったメレ石座を僅かな放射状に配しています。
中石座はあえて傾けて配しました。中石のルチルサンのある側を持ち上げると共に、覆輪の一部を深く抉って、カボション底面近くにあるルチルサンを見える状態にしています。
ルチルサンは、スタールチル、太陽ルチル等色々な呼び名があり、ヘマタイトの核からルチルが放射状に成長したものです。
「06-019 サファイア結晶のリング」同様、石に合わせて創ったデザインです。石の面白さを活かしたデザインにできたと思いますが、如何でしょうか?
06-034
表面仕上げサンプル1
2006年2月
SILVER950
#10.5
1.91g

表面仕上げのサンプルに作ったリングです。
一旦光沢仕上げにした後で表面処理を行っています。梨地とは違う、方向性のある面の小さな塊の集合の様に見えます。梨地よりも細かな光沢があります。
06-035
表面仕上げサンプル2
2006年2月
SILVER950/キュービック・ジルコニア(2mm,ライトシャンパン)
#10.5
2.11g

表面仕上げのサンプルに作ったリングです。
一旦光沢仕上げにした後で表面処理を行っています。梨地とは違う、方向性のある面の小さな塊の集合の様に見えます。梨地よりも細かな光沢があります。「06-034 表面仕上げサンプル1」よりもキラキラ感が強い仕上げです。

06-036
トルマリンメレのリング -UZUMAKI-
2006年2月
トルマリンx2(3mm)/SILVER925
#10
4.78g

「うずまき」って何だか好きです。
原型はハードワックスで、リング部とうずまきは一体の彫り出しです。石座はワックスで玉を作り、リングに付けました。淡緑、深緑の2つの石はどちらもトルマリンです。

これで石がピンクだったらケイ・ウノさんの入り口みたいですね。
お値段は「高い!」と思われるかも知れませんが、ゴム型を使用していない1点ものですので、ご容赦下さい。

06-037
ピンクトルマリンの彫り留めリング
2006年2月
ピンクトルマリンx3(2mm)/SILVER950
#10.5

「卒業迄に創れ!」と圧力をかけられ(笑)、創りました。
シンプルな甲丸のリングに、ピンクのトルマリン3石を連で彫り留めています。仕上げは光沢で、内甲丸にしてあるので装着性はとても良いです。

「思ったよりラブリー」って、石を持ってきた張本人(=依頼者)にいわれたくありません(笑)。さすがに選ぶのに時間をかけただけあって(3つ選ぶのに1時間かけたそうです)、石がとても綺麗で揃っています。
この作品の結論は、「やはり彫り留めは難しい、連は更に難しい」です。

06-038
銀と銅のリング
2006年2月
SILVER950/銅
#10

銀と銅を重ねてリングにしてみました。
銀と銅を重ねてリングを作りました。溶着ではなく単なるロウ付けです。これだけ広い範囲(輪に沿って1周)ロウ目が見える訳で、張り合わせそのものが大変難しかったです。仕上げは「06-035 表面仕上げサンプル2」と同じ荒し仕上げです。
問題は、銅は銀よりも更に変色しやすいということ。10円玉を見れば判ります。

広い範囲を如何に綺麗にロウ付けするか、簡単な様で難しいです。

06-028
ターコイズのセットジュエリー「Al'antica」(卒業制作)/日本宝飾クラフト学院2005年度卒業制作展 奨励賞受賞
2006年2月
ターコイズx19/ペリドットx5/ホワイトトパーズx16/SILVER 950/SILVER925

全面にミル打ちを施したアンティーク風のセットジュエリー(ネックレス、ブローチ兼ペンダントトップ、イヤリング)です。先日開催された日本宝飾クラフト学院2005年度卒業制作展で奨励賞を受賞しました。

卒業制作ですから、そのときに持っている技術を惜しみなく使わなくてはいけません。通常の課題と比べたら時間もたっぷりと取れるので、「全パーツ地金手加工で、アンティーク風のセットジュエリーを作る」という目標を立てました。
使う石はいつもお世話になっている業者さんにまとめてお願いしたのですが、「なるべく揃えて」といっても相手は天然石、そうそう思い道理にはいきません。大きさを揃えれば色が揃わず、色を揃えれば大きさや高さが違う、という具合です。しかし「石を連にして見せる作品」であることを考えれば、必然的に色の方が優先です。
更に、カンティーユ(巻き線)による飾り付けをする関係で、石をある程度持ち上げなくてはなりません。かといって、2mmも3mmもある裏板を付けたら野暮ったいし、何より重くなります。そこでこの様に、花模様に板を曲げて裏板の代わりとしました。手間は掛かりましたが、見た目も軽い感じですね。
金具類も色々と手加工に挑戦しました。まだまだ至らない出来ですが、久々の「設計」は面白かったです。因みに僕はこういった構造部品の設計にはCADを使います。今までの(全然違う)職歴、無駄にはしません(笑)。

実はアンティークジュエリーにこれと似たものがあります。というより、順番からいったら「実在するアンティークジュエリーに似た作品を創った」というべきでしょうね。

06-039
シルバーリング "Chi cerca trova"
2006年3月
SILVER950
#7

学校の最後の制作時間に作ったものです。
"Chi cerca trova"はイタリアの諺。読み方は「キ・チェルカ・トゥローヴァ」で、「求める者は見出す」という意味です。

至ってシンプルな甲丸リング(両側を削ぎ落としてあるので別な呼び名があるのかも知れませんが)です。リング表面に文字高さ1mmの刻印で"CHI CERCA TROVA"と彫り込み、字の中をいぶして黒くしてあります。
これを創った時点で、僕は就職活動中です。あちこち当たりましたが、「年齢が高い」という理由で断られる場合が少なくありません。技術がない、センスがない等、職人としての資質を理由にされるのなら納得もいきますし、修練のしようもあります。しかし、年齢ばかりは努力ではどうしようもありません。
それでも、
"Chi cerca trova".
自分自身にも向けた言葉です。

リングやペンダントトップに文章を刻印するというのは、他にも多くの方、業者さんがなさっていると思います(例:ナチュラルモーメント)。ですから、二番煎じといわれればそれまでなのですが、まぁ、こんなこともできるよ、というサンプルです。

06-039
ブルーベリーのペンダントトップ
2006年4月
サファイア(2mm)/SILVER925
13(幅)x22(高さ)mm
2.0g

そもそもは学校の「ワックスパターンのアレンジ」という課題で作ったものです。羽根の様なパターンは、実は指輪のデザインの一部なのです。

原型はインジェクションワックスとハードワックスで作ったのですが、今回のプラスαは「ハードワックスで作る真球」です。横に石座として付けたのがそれです。 通常ワックスで球を作る場合、離型材(ベビーパウダー等)の上に溶かしたワックスを垂らして作るのですが、その方法では球が大きくなるに従って潰れてきてしまいます。僅か直径4〜5mmでも重力の影響は無視できません。「お饅頭」の様な形になってしまうのです。それを何とか回避できないか、削り出し以外の方法で完全な球を作れないか、という、僕からのワックスに対する挑戦です。
で、何とか上手く作る方法を見付けました。如何ですか? つぶれていないでしょう。細かい方法の説明は省きますが、興味のある方は別途お問い合わせ下さい。
留めた石はサファイアです。無選別品で色むらや抜けがある為、決して上等なものではありませんが、100%天然です。

石座の形が何となくブルーベリーっぽいので「ブルーベリーのペンダントトップ」という名前にしてみました。
06-041
蜜蜂のリング
2006年5月
イエローコモンオパール(1.152ct,8.1x6.2mm),アイオライトx2(2.5mm)/SILVER925
#10
8.55g

花にとまる蜜蜂。
春先の野の光景。
そうです。実は春の完成を目指していた作品です。
発端は今を去ること1年余。たまたま持っていた黄緑色の石を見た友人が「その石の爪の上に蜜蜂を止まらせたら面白いね」といったことに始まります。題材を温めるにしては、ちょっと長過ぎましたが…。
原型は全てハードワックスで作り、しかも一括鋳造をした実験作でもあります。爪はちょっと太過ぎた感がありますから、もっと細いものも用意できる様にならないといけませんね(もちろんこの爪やパイプ状のメレ石座もハードワックスで作っています)。
使った石はイエローコモンオパール(発端となった石とは異なります)と、アイオライトです。補色関係に近い色味なので、色相差の割にはバランス良く見えると思いますがいかがでしょうか。
重なり合った葉っぱの表面にはサンドペーパで筋目を入れました。蜂の羽にも槌目等のテクスチャを入れることを考えたのですが、色石を2種類使っていて、更に葉っぱにテクスチャがあり、それ以上やるとくどくなりそうだったのでやめました。
葉の重なった立体感は良く出たと思っています。ボリュームの割には意外な程高さがありません。
コモンオパールは遊色の出ないタイプのオパールで、この他にも色々な色があります。あまり色が強くないので、優しい感じのする石です。




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