|
06-012 アクアマリンのペンダントトップ 2005年1月 アクアマリン(0.75ct、6.7x4.7x3.0mm、マラウイ産)/キュービック・ジルコニア(1.5mm、2.0mm)/SILVER950 約15x47mm
知人に「アクアマリンを使ったブローチかペンダントトップを作ってほしい」と頼まれ、そのテストケースとして作成したものです。テーマは「流れ」。エメラルドカットのアクアマリンとキュービック・ジルコニアのメレ(小粒石)を使いました。
そもそもは「3月の誕生石を使うか誕生花のモチーフで」とかなり漠然とした相談だったのですが、幾つかデザイン画を作成し、その内の1点を実作しました。使う石の大きさに合わせる為、全体の大きさもデザイン画と実作では若干異なっています(実作の方が大きい)。
テストケースということもあって、あまり高価な石を使わなかったのですが、購入後テーブル面に大きな傷があることに気が付きました。ルース(裸石)ケース上面にぴったりとくっついていた為、購入時に判らなかったのです。「石を購入する場合にはどういう点に注意しなくてはならないか」という、良い勉強になりました。
又、メレの石座を小さく作り過ぎた為、良く見ると綺麗に留まっていません。
何かを作る度に、計らずも色々なことを学びます。経験に勝る教師なし、です。
「サンタマリア・アフリカーナ」という、色の濃いアクアマリンがあります。1970年代からアフリカのモザンビークの鉱山で採掘されてきましたが、残念ながら現在ではほぼ掘り尽くされてしまったそうです(当然ながらここ数年で価格も急激に上がっています)。
|
|
|
06-013 ハートシェイプカット石のペンダントトップ 2005年1月 スモーキー・クォーツ(ハートシェイプ)/SILVER950 約38x30mm
ハートシェイプカットの石を用いたペンダントトップを作りなさい、という課題です。変形石の場合、石座の形も石に合わせる必要があるので、その実習、という訳です。
周りからは「ハートの石を使ったデザインなんて恥ずかしぃ!」という声も聞こえましたが(課題は殆どの生徒に共通です)、課題を「発注主の注文」と考えればそうもいっていられません。「どんな注文にも応える」が職人としての目標です。
  私は矢尻にハートシェイプカット石を配した弓矢をデザインしてみたのですが、単なる弓矢ではつまらないので、弓にも飾り羽を付けることにしました。甲丸で作ったバチカンは、矢の羽の裏に作り付けです。
羽模様を片切りタガネによる「彫り」とすることは早々に決めたのですが、彫り模様は梨地(つや消し)に施すことで一層映えます。そこで、全体が組み上がった後、弓等の光沢仕上げ部分にマスクをした上で羽を金剛砂で荒らし、石留めの前にタガネとキサゲで模様彫りを行いました。
本来であれば模様も綺麗に左右対称にならないといけないのですが、「切る」「削る」に比べて「彫る」は格段に難しいです。使い方、つまり持ち方や叩き方がまだまだ下手なのでしょうし、そもそもタガネの刃の形がきちんと対称になっていないのかも知れません(タガネも自分で研いでいます)。
又、石留めでも大失敗をしました。掲載写真では判らないと思いますが、魚子(ななこ)タガネで丸爪を倒す際、石のテーブル面をまさに横断する引っ掻き傷を付けてしまいました。魚子タガネを侮っていました。
仕上げの磨きは青粉→ウィノール→アモールという工程を採った為、光沢面はまさに鏡の様な仕上がりです。
ハートシェイプカットは、何も「ハート」と捉える必要はありません。この作品の様な使い方もできますし、複数個使って花弁やクローバーにもなります。想像力を鍛えなければ、と思う今日この頃です。
|
|
|
06-014 コインのペンダントトップ 2005年2月 オーストラリア 5セント硬貨(ハリモグラ)/SILVER950 約20x29mm
オーストラリアには珍しい動物が沢山いますが、コインにもそんな動物達が登場します。ここで使ってみたのは5セント硬貨。片面にハリモグラがデザインされており、反対面はエリザベス女王の横顔になっています。
今回使用したコインは、数年前にオーストラリアに行った際に持ち帰ったものです。実際に流通していたものですから、かなりおおきな傷も付いているのですが、磨き上げればこの様に綺麗になります。むしろ程々の傷は「本物感」が出て良いのではないでしょうか。
作った部分はフレームとバチカンの部分だけですから、創作物としては大それたものではありません。貴金属店に依頼すれば、コインの大きさに合わせた出来合いのフレームを見繕ってくれるのですが、手加工であれば当然どんな大きさ、どんな形状のコインにでも対応できます。
尚、コインそのものには一切加工を行っていませんから、フレームを外せば通常の硬貨として通用します。
「旅行の思い出に」と旅先の現地硬貨を持ち帰った経験のある人は多いと思います。が、往々にして「両替袋に入れっぱなし」のまま「引き出しの奥にしまいっぱなし」ということに…。
デザインの優れたコインであれば、こうして「使える」様にしてしまってはいかがでしょうか。コインの大きさや形状にもよりますが、フレームの作成も承りますので(勿論コインも留めます)、是非ご相談下さい。
|
|
|
06-015 ブローチ「夏の宵」/第8回内海村パールジュエリー・デザインコンテスト入選 2004年8月 真珠/SILVER950/SILVER925 約60x50mm
内海村(現愛南町)は四国の西南に位置し、日本一の生産高を誇る真珠貝の養殖地です。地域興し事業として始まった「内海村パールジュエリー・デザインコンテスト」ですが、今回で8回を迎えました。作品の条件は「和珠(日本産の真珠)を1つ以上使ったジュエリーであること」です。
  デザイン案は幾つか考えましたが、最終的にはデザインの授業でラフを描いたものを発展させ、「蛍の光」を真珠で表現することにしました。左は原原案、原案、決定稿です。
羽を広げて飛んでいる虫、及び点在するシードパールは蛍、その下のU字光沢は蛍の光の軌跡、銀線は風を、甲丸の筋目板は水の流れを表現しています。
入学してまだ数ヶ月。一体どの部分をどう作るのが適当なのか、という根本的なことも良く判らずに創った為、造りとしておかしい部分も多々あります(何しろキャストを使ったのはこれが初めて)。ロウ付け時に火を避けようとして部分的にアルミ箔でフードを付けたら、アルミと銀が合金化した染みができてしまったり、組み立てたものの上に座ってしまったり、色々と大変な思いをしましたが、これ1点の取り組みだけでとても良い経験が沢山できました。ン年ぶりに徹夜もしましたし。
因みにこちらは「第8回内海村パールジュエリー・デザインコンテスト」パンフレットに掲載された写真です。
今後どの様な流れになるかは判りませんが、今のところパールジュエリー・デザインコンテストは純粋に「発想」と「創る楽しさ」を大切にしています。高級志向でも、アートでも、販売目的でもなく、ただ楽しんで創ること。
どんな形であれもの創りに関わるものとして、持ち続けたい精神です。
|
|
|
06-016 羽根のブローチ 2005年4月 合成スピネルx2(濃青色及び淡青色、スクウェアカット)/キュービック・ジルコニアx3(2.0mm)/SILVER950 約75x16x11mm
ラウンドやオーバルカット以外の変形石を2つ以上用いたブローチを作成する課題です。変形石は袋爪の実習、それを二つ以上というのはデザインの実習と捉えれば良いでしょう。
爪の作成はともかくとして、変形石を2つ以上用いたデザインというのが、実際にやってみると中々の曲者です。
 一番苦労したのはデザインです。最近漸く気が付いたのですが、どうも私は翼や羽根の類が好きみたいですね。結局は今回も羽根になりました。空を飛ぶことに憧れているのでしょうか…。
さて、単なる羽根ではつまらないので羽根の下に「くるっ」と巻きを付けて宝飾っぽくしてくみました。しかし、ラフスケッチでそこにメレを入れてみたのが運の尽き、絶対にないよりあった方が良いのです。こうして見よう見まねで彫り留め(マス留め)に挑戦することと相成りました。
決して見事な仕上がりとはいえないし、何より初挑戦で曲面に留めること自体に無理があったともいえるのですが、何とか見られる形に仕上げることができて胸を撫で下ろしています。
羽根全体は梨地仕上げでタガネで彫り模様を入れています。「くるくる」と軸の部分は光沢仕上げです。
「全体のバランスを考えると、羽根本体の方にもメレを幾つか散らした方が良いね」という意見をデザイナーの方から頂き、なるほどなぁと思いました。学ぶことの果てはありません。
|
|
|
06-017 翼リング 2005年5月 SILVER925 #16 8.3g
ソフトワックス(シートワックス)の課題で作成したものです。原則としてワックスの課題は原型保管なのですが、ソフトワックスは簡単に破損してしまう為、現実的には保管は困難です。保管が困難ということは時間が経ってから提出を求められることもありません。それならいっそ鋳造してしまおう、ということで、今回の作品となりました。
シートワックスは体温程度で十分に柔らかくなり、自由に変形させることができる為、簡単に原型を作成することができます。その代わり(当然といえば当然ですが)、板状の構成でしか作れません。ここでは翼の形に切り抜いた数枚のシートワックスを重ね、テクスチャを入れた上で、リング状にしたシートワックスと接合しました。実際にはそれだけでは非常に薄い隙間ができ、鋳造時に石膏片(スの原因となる)が発生する危険があるので、瞬間接着剤で目止めをしています。
鋳造が出来上がってみると、ハードワックスで作ったものよりも仕上げが大変であることが判りました。というのは、ソフトワックスはとても軟らかい素材である為に傷が付き易く、それが全て金属に転写されてしまうのです。又、鋳造業者での作業工程でも変形する場合があります。
金属にすることを考えない素材レベルでの実習課題の為、実用性はあまり高いとはいえません。大胆なデザインで目立つことは確実ですが、気を付けないと凶器になります。
|
|
|
06-018 アール・デコ風イヤリング 2005年5月 ペリドット(8x6mm)x2/キュービック・ジルコニアx22(2.0mm,1.5mm)/SILVER925 約16x11mm(片側) 2.9g(片側)
カット石を用いたイヤリングを作成する課題です。課題としては中石+地金だけで良いのですが、やはり早い内にメレ(小粒石)を沢山散りばめたものを作れる様になっておきたいので、この様なデザインにしました。実はアール・デコの正しい定義は知らないのですが、なんとなくこんな雰囲気ですよね。
 使った石は昨年のミネラルフェアで購入したペリドットです(「今日の一枚」2004年5月22日に載せているもの)。2つの石の間には、シャープさや色の深さの点で若干の差がありますが、それ程目立つものではありません。どちらもとても綺麗な緑です。ペリドットには「イヴニング・エメラルド」という異名があるのですが、若干黄色味がかった光が差し込むと、右の写真の様に美しく輝きます。
課題が「ピアス」ではなく「イヤリング」だったので金具をどうしようかと考えたのですが、たまたま東急ハンズでクリップ式のものを見つけ、お試しという意味もあってそれを使ってみました。挟む面が広く、かなりしっかりしたクリップですが、大振りなので小物イヤリングには不向きです。今回のものにも少々大き過ぎました(金具は耳の後ろに隠れるので今回は未加工で取り付けています)。
上でも書いた通り、今回は片側当たり11個のメレCZを彫り留めしました。まだまだタガネが上手く使えていないので、面が綺麗に出ていませんが、何とか全数無事に留められたので満足しています。
このデザインは気に入っているので、実はゴム型を取って地金のコピーを幾つか作ってあります。中石も8x6という標準的な寸法なので、色々と選ぶことができます。そんな訳で、販売用のものも作成予定です。
|
|
|
06-019 サファイア結晶のリング 2005年6月 サファイア(6x4mm,0.43ct,タイ・カンチャナブリ産)/キュービック・ジルコニアx6(2.0mm)/SILVER925 #10 7.1g
綺麗なカラーバンドの入ったサファイアを入手しました。ちょうど六角結晶の角の部分が入っているので、それを上手く活かしたい、そう思って考えたデザインです。あえて中石をずらしてトップ全体で結晶を表現してみたのですが、いかがでしょうか。
 結晶の成長に従って帯状に色の濃淡(カラーバンド)が残ったサファイアがあります。均質な色合い、という観点では評価外になってしまうのですが、石自体がデザイン性を持っている、と考えると、それぞれが面白い逸品といえるのではないでしょうか。
さて、そのカラーバンド入りサファイアですが、バンドの向きに合わせてカットされている訳ではない為、六角形に組み込もうとするとどうしても斜めになってしまいます。しかし本作のデザインでは、機械的な六角形の「静」の中に斜めのサファイアの「動」の要素が上手く組み合いました。
 トップ面は地金を平らにしただけでは面白くないので、本作では6個のメレCZを玉留めしています。又、リング周囲は梨地仕上げにしてあるのですが、今回は手製の梨地タガネを使ってみました。金剛砂を使う場合に比べてかなりしっかりとした荒らし面になります。
まず石が気に入って購入し、作品にしたら全体がお気に入りです。一つとして同じ石はありませんから、完全な一点もの。もともと販売を考えていたのですが、いやはやどうしたものか…。
|
|

|
06-021 アール・デコ風ピアス(アイオライト) 2005年6月 アイオライト(8x6mm,カボション,インド産)x2/キュービック・ジルコニアx22(2.0mm,1.5mm)/SILVER925 約16x11mm(片側) 1.9g(片側)
「06-018 アール・デコ風イヤリング」のアレンジで、カボションカットのアイオライトを載せてみました。
  「06-018 アール・デコ風イヤリング」では中石を丸爪で留めましたが、こちらは石のカットが異なるので並爪としました。又、周りのメレCZは玉留めにしましたので、煌きが一層増しています。
 アイオライトは大変に多色性(偏光性)の高い石で、濃く鮮やかな紫が、見る角度を変えると褐色に迄変化します。
アイオライトには別名が多く、鉱物学者の名に因んだ「コーディエライト」、二色性を示す「ダイクロアイト」、「ウォーターサファイア」等とも呼ばれます。和名は「菫青石(きんせいせき)」です。
かつてバイキングは、アイオライトの薄片を用いて太陽の正確な方向を知り、安全に航海したといわれています。又、ヨーロッパでは「愛を守る石」としてお守りにされてきました。
|
|
|
06-023 ストーン・カメオのペンダントトップ 2005年9月 ストーン・カメオ(10x8mm)/ペリドットx3(φ3.0mm)/シトリン(7x3mm)/SILVER950 約45x23mm 6.6g
総合制作2の課題で作りました。今まで身に付けた技術を駆使して何かを制作する、いってみれば「まとめ」としての自由課題です。
とはいっても、何かしら新しい要素も入れてみたくなります。そこで今回は「ストーン・カメオを使う」「ストーン・カメオを活かしたデザインを考える」という大枠の基、アンティーク・ジュエリー風のデザインにまとめてみました。
使ったカメオは、(予算の都合もあり)割と小ぶりのものです(左下の欠けは最初からあったもの)。女性の横顔の彫ってある側は薄い青、裏側は深みのある緑色です。きちんと鑑別した訳ではありませんが、この色調だと染色メノウでしょう。
最初周囲に置くメレはCZを想定していたのですが、実際に置いてみると非常にカメオと不釣合いでした。恐らくカメオの落ち着いた感じと、CZの過剰にぎらついた感じがそぐわないのだと思います。そこで急ぎ色石のメレを何種類か用意し、最終的にペリドットとシトリンを使いました。どちらの色、輝き加減とも、カメオに対してバランスが取れていると思います。
地金部分はアンティーク・ジュエリーの本を参考に「カンティーユ」という技法(薄い地金を巻き上げてボリューム感を出す)と「グラニュレーション」という技法(粒金)を真似てみました。巻き上げた地金にはミルグレイン(ミル打ち)をしてあまりす。
 カメオの石座は、簡単には周囲と底板さえあれば良いのですが、先生にそそのかされて透かし模様を入れてみました。こうすることでメノウの裏側の色も綺麗に見える様になります。
又、ペンダントトップの様に全体の場面の大きなものは、真平らに作るとそれだけで安っぽく見えてしまいます。それは避けたかったので、全てのパーツを曲面状に配置してあります。
因みに、石の爪から粒金まで、全て含めると64のパーツで構成されています。使ったロウ材は、石座に2分、本体の組み立てに3分、バチカンに5分、粒金に7分です。
カメオをジュエリーに仕立てるのって、カット石より難しい気がします。ただフレームが付いているだけって結構多いのですが、野暮ったいと思いませんか?
|
|