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06-020 ルチルクォーツの馬蹄モチーフリング 2005年9月 ゴールドルチルクォーツ(8.9x7.7mm,2.99ct)/キュービック・ジルコニアx2(3.0mm)/SILVER925 #13.5 7.4g
「ルチルクォーツを留めた馬蹄モチーフのリングが欲しい」という注文を請けて作成したものです。ルチルクォーツの脇にCZを配してみました。
 ルチルクォーツの両側にCZと馬蹄を置き、全体として一文字のデザインです。馬蹄の表面には鋲模様をタガネ(ナナコタガネの先端を削り直して作ったもの)で打ちました。多分この模様がないと「磁石?」と思われてしまいます。
ルチルクォーツは、いざ探してみると大振りなものが多く、このデザインに合う程度の大きさで、綺麗にルチルの入っているものが中々見付かりませんでした。別に2つ購入したのですが、その後にたまたまこの石と出会いました。明るく密でしっかりとした金色。まさに探していた石です。
メレ石座も含めてハードワックスで削り出したのですが、メレの爪がちょっと太かったです(爪もハードワックス)。留めるのも大変でした。今後の課題です。
古来ヨーロッパでは馬蹄を幸運のお守りとしてきました。「U字型で幸運を受け止める」という意味がある様です。それを考えると、絶対にUの向きにしないといけないんですよね。∩にしたら幸運を全部落としちゃう…。もっとも、「馬蹄を付けた馬が幸運をかき集める」等、他にもいわれはある様ですが。
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06-008 天使のペンダントトップ「降臨」/第9回パールジュエリー・デザインコンテスト出品 2005年9月 アコヤ真珠x4/キュービック・ジルコニアx16(2mm,1.5mm,1.25mm)/SILVER950/SILVER925 約70x90mm
昨年に引き続き、今年もパールジュエリー・デザインコンテストに出品しました。残念ながら本作品は選外です。
天使本体の部分は、元々は「パールジュエリーのリフォーム」という総合制作課題で作成したものです。そのままの出品も考えたのですが、どうせだったらもう一ひねり加えよう、ということで、頭上に装飾を追加しました。イメージしたのはヨーロッパの建築装飾です。
尚、天使の手に載っている真珠は、昨年のパールジュエリー・デザインコンテストの入選賞品として戴いたものです。

天使像はムクではありません。頭から肘と膝の辺り迄、中が空洞になっています。羽根も含めて8つに分割鋳造し、組み合わせてロウ付けしています。分割数が多くそれぞれの位置固定が困難だった為、各パーツ間に銀線のサポート(支え)を打ち込み、ロウ付けが全て終わってから削り落としました。それでも翼のロウが作業中に涸れてしまい、組み立て終了後に片側が取れてしまいました。苦肉の策で半田付けしています。
天使の体は光沢仕上げ、翼は梨地にしています。又、装飾部分は鋳造で構造を作り、各種切りタガネ、梨地タガネで模様付けをしました。CZは彫り留めをしています。
これは翼のワックス原型です。裏と表で羽根の形状が異なります。鋳造に失敗する可能性がある為、本当はもっと厚手に作らないといけません。無事に鋳造できて何よりでした。
この制作では「平面的な翼にしない」を目標にしたのですが、立体感と動きのある仕上がりにできたと思います。「サモトラケのニケ」には及びませんが…。
さて、原型を作るに当たってデザイン図面を描かなくてはなりません。しかし、想像のみで翼のある人体の3面図を正確に描ける程のデッサン能力は、あいにく持ち合わせていません。そこで、紙粘土で翼を作って女性のモデル人形に取り付け、写真を撮って図面起こしをしました。当然こういった写真も保存してあるのですが、やっていることがあまりにもマニアックで、一歩間違えると「危ない人」に見られかねないので、公開は控えます。
天使にしてはちょっとグラマラスに作り過ぎたかも知れません。友人には「美香ちゃん」といわれました。
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06-022 「幻想」/第9回パールジュエリー・デザインコンテスト入選 2005年9月 アコヤ真珠/K18YG/SILVER950/SILVER925 約32x39mm
第9回パールジュエリー・デザインコンテストで入選した作品です。
荒野に浮かぶ月、額装に載る蜘蛛。全体のイメージはダリの描く幻想風景です。
非常に目立つ形で異素材を使っていますが、デザイン上はあくまで月、つまり真珠が主役です。
因みにこの真珠は、昨年のパールジュエリー・デザインコンテストの入選賞品として戴いたものです。
  額装はワックスの削り出しで作っています。辺単位で作成し、大きさを調整しつつ四角形に組み立てました。なるべく「額縁」らしくする為、正面と側面に辺に並行する装飾の溝を彫っています。この溝を彫る為に、真鍮版を削って型刃を作りました。
全体をきれいに接合するのは大変に難しかったです。はみ出たワックスや変形した箇所はできる限り修正したつもりだったのですが、やはり金属になるとその凸凹がはっきりと判ってしまいますね。こういった作業を如何に上手くできる様になるかは、当面の課題です。
バチカンとそれを額に留める金具は、950銀の板材加工です。なるべく無機的にしたかったので、あえて直線的な形状にし、鋲で額に留めた様にデザインしました。
さて、その額に入ったグランド・キャニオンの様な「風景」ですが、これは10年以上も前にミネラルフェアで購入した「ランドスケープ・マーブル」という石です。絵ではありません。洞窟性の岩石で、その模様が風景の様に見えることからこの名があります。そもそもは木製の額に入ったイタリア製の飾り物だったのですが、真珠と組み合わせてみると中々面白い幻想画の様になったので、作品素材として使いました。岩石系の石である為見るからに脆く、石留めの際に大きなストレスを加えない様に気を付けました。
蜘蛛はK18YGです。金を使うのはこれが初めてで、しかも知人から貰った端材の寄せ集めです。胴体は金地金の直接削り出しで、眼もナナコタガネで6個彫ってあります。脚は0.2mm程度の薄い板材に延ばし、傘の骨の様にU字型に丸めて曲げました。節の部分はヤットコでつまんで細くしているだけですが、簡単な加工の割りには感じが出たと思います。胴体と足は金ロウで接合してあります。
もともと裏板は付ける予定はなかったのですが、石留めが丸見えなのはあまりにも粗雑な感じを与えます。そこで急遽板材を切り出し、取り付けることにしました。表面には毛彫りタガネで蜘蛛の巣を彫ってあります。
作品の一部となったランドスケープ・マーブル、10年以上の長い眠りから起こした感じです。大切に「保管」していた訳ではないので(苦笑)若干表面が荒れてしまっているのですが、こういう形で古いものを蘇らせることができると、ちょっと嬉しいです。
※本文冒頭の青い背景の写真は、寺岡秀幸氏の撮影によるものです。愛南町DE・あ・い・21ホームページに掲載された写真を、許可を得て転載しています。
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06-025 サファイアメレのリング 2005年10月 サファイアx3/SILVER950 #11
「青い石を彫り留めた指輪を作ってほしい」という要望に応えたものです。
随分前からいわれていたのですが…
先日ようやく無選別サファイアメレを2ct分購入したので、その中から約2.0mmの石を選び出し、彫り留めました。無選別である為大きさも色味、色の濃さもばらばらで、3つ並べて載せておかしくない組み合わせを見つけるのが思いの外大変でした。
 シンプルな甲丸ですが、だからこそ加工の出来不出来が丸見えになってしまいます。今回は(自分の作品では)初の試みとして、リングの内側も曲面にしてみました。装着性が大変良くなり、仕上がりもとても綺麗です。
石留めをする前にサファイア以外の石も合わせてみたのですが、CZのシャンパンカラー等もシンプルな形状ととても良く合います。
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06-026 すり出しアレンジ -タツノオトシゴ- 2005年10月 SILVER950 #10 2.8g
貴金属加工の課題も内容的には一通り終了し、振り出しに戻ります。これは「甲丸すり出しリングアレンジ」という課題で、入学後かなり早い段階で取り組む「甲丸すり出しリング」の変型版です。
 特にタツノオトシゴを意識した訳ではないのですが、出来上がったら別々な人から「タツノオトシゴ」といわれました。
表面は、買ったままになっていたサテンブラシを使ってみました。均一で綺麗な筋目が付けられます。全体をサテン地にした後で山の部分をへらがけ、バフがけし、メリハリを付けました。
今回も内甲丸(リングの内側が曲面)にしています。
別な人には「ポン・デ・ライオン(ミスタードーナツの商品)みたいだね」といわれました…
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06-027 K18YGアウインリング -青は藍より出でて藍よりも青し- 2005年10月 アウイン(1.85mm,ドイツ アイフェル産)/K18YG #11 3.4g
職人日記にも書きましたが、今年のIMAGE2005(国際ミネラルアート&ジェム展)で念願のアウイン(アウイナイト、藍方石)を手に入れました。初めて見たときから憧れていた素晴らしい青。そして、リングの金色との素晴らしいコンビネーション。シンプルであってこそ引き立つリングになりました。
 ご覧の通りシンプルな甲丸リングです。センターに直径1.85mmという小さいアウインを彫り留めてあります。一見「06-025 サファイアメレのリング」と似ていますが、今回は石の周りを凹面にし、リングの甲から石のガードルにかけて馴染ませてあります。更に、通常の打ちタガネで凹面を打つと深い傷が付くので、先端を緩い曲面にしたタガネを新しく作りました。石の真円を崩すことなくしっかりと留まっています。
アウインの和名は「藍方石」。写真では伝え切れないのが残念なのですが、アウインはラピスラズリの構成鉱物の一つ、といえば、その青さを実感して頂けるのではないでしょうか。非常に稀産で、宝石としてカット可能な原石はドイツのアイフェルでしか採れないそうです。商業目的の大規模採掘は行われておらず、大きなルースの価格はダイヤモンドを凌ぐこともあるそうです。
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06-030 トルマリンメレの平打ちリング 2005年10月 トルマリン(3mm)/SV950 #11 4.2g
デザインの授業では「平打ちリングを20点」「パールペンダントを20点」等と、ひたすら点数を描かされます。デザインの先生曰く「もうこれ以上は思い付かない」ところまでいくと、「面白いものがぱっとひらめく」だそうです。
楽しくもあり苦痛でもあるその授業の作品群、見返してみると結構面白いものがあったりするのですね(点数が多いので描いた本人も忘れている)。今回の作品はそんな中の一つを実作にしたものです。
これは入学間もない頃「平打ちリング」を多数描かされた内の1点です。ラフスケッチではカット石が留まっていますが、実作では今年のIMAGE2005で入手したトルマリンのメレを使ってみました。中々面白いリングに仕上がりました。
一旦プレーンな平打ちリングを作った後、大きく切れ込みを作って丸線をロウ付けしてあります。石座は丸めた薄い板をリングの上に載せて覆輪にし、底の部分をセッティングバーで平らに均しました。
今回は特に目新しい技法は取り入れていません。それどころかうっすらと火ムラを作ってしまいました。情けなや…
手前味噌ですが、スケッチより実作の方がずっと良いです。
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06-029 ハムスターのペンダントトップ 2005年11月 SV925 31(高さ)x16.5(幅)x18(厚み)mm 約14g
ジャンガリアンハムスターをモチーフにしたペンダントトップです。モチーフというより、そのもの彫刻ですね。動物造形の某社ではありませんが、できる限り忠実に再現したつもりです。
  ハムスターは馴れてくると(といっても飼い主の顔を識別できる訳ではないのですが)、ケージ(かご)を上って「ごはん」をせがむ様になります。モチーフにしたのはその姿です。
ただ今回は、姿を忠実に再現しようとしたのが仇になって、重心がかなり後ろになってしまいました。チェーンからぶら下げるとひっくり返り気味です。身に着けたときはこれ程ではないので、実用上は概ね(?)問題なし、としましょう。「下を向くと目が合う」という前向きな考え方もできますし。
  どうすればハムスターの感じが出るのか、今回は複数方向からの写真を用意してまとめて印刷し、その上にマジックで「造形上のポイントとなるライン」を描き入れてから作業に取り掛かりました。特に気を付けたのが、鼻の頭からスタートし、眉弓を通って耳に至る曲線です。又、以前動物造形の得意な先生に「背筋(背骨)をはっきりと浮き出させないと動物感出ない」といわれたので、その点も注意しました。眼は一番最後に盛って付けています。眼は体表の構成要素とは別、なのです。
原型はワックスで作成していますが、毛並みはその段階でタガネを使って彫り込んでいます。裏抜きの関係で湯口を体表に持って来ざるを得ず、必然的にその部分のテクスチャーは消えてしまいます。しかしタガネでテクスチャーを作ってあると、地金になった後もほぼ同じ感じに再現できるのですね。実際に、ぱっと見では型による毛並みと後加工による毛並みの見分けは付きません(細かく見ればハツリ面の光沢で判別できますが)。又、タガネによるテクスチャーは非常にシャープで、毛並みの表現にはとても向いています。
カンの下側には「お名前プレート」を付けてみました。「すずらん」は上にも写真載せた我が家のハムスターで、この作品のモデルです。
具象って、簡単でもあり難しくもあると思います。
ゴールがはっきりしているという面では単純にテクニカルなのですね。造形のパーツを実物にどれだけ近付けるか、それは技術力の問題で、誰でも訓練により上達できます。
しかし作品全体をどう「アート」にするか、という面は、技術力だけでは如何とも解決し難い問題です。制作者のセンス次第であり、技術力ではなく豊かな感性が必要になります。
そういう見方をすると、この作品はあくまで「ハムスターの再現」であり、残念ながらアートには至っていませんね。
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06-031 どんぐりのピアス 2005年11月 SV925 純チタン金具 約18mm(実の部分の長さ) 片側約4g
「どんぐりをモチーフにしたピアスが欲しい」「金属アレルギーなので、全体又は金具をチタン製にしてほしい」という注文に応えて作製しました。
 どんぐりの形状は回転体である為、ハンドモータの先に地金の塊を取り付け、ヤスリや彫刻刀による簡易旋盤加工により地金原型を作成しました。実の部分の整形終了後に、ハンドモータに固定していた回転軸の部分を精密やすりで整形し、柄の形を作っています。
笠の部分のテクスチャは原型時に入れてしまうかが悩みどころでしたが、色々なパターン展開や、キャスト後のダレを考慮し、未加工でゴム型を取りました。キャスト品の鋳肌処理後に矢坊主、サテンブラシ、バフの順に処理をして、メリハリのある網目模様を作り出しています。
 写真撮影に使った飾り台は、通販のフェリシモで扱っているトルソ型のアクセサリースタンドです。これだけでも部屋の飾りになる、ちょっと面白い逸品です。
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06-032 ハムスターのハットピン 2006年2月 SV925 洋白(ピン) 89(ピンを含む長さ)x16.5(幅)x14(厚み)mm 約15.5g
ジャンガリアンハムスターをモチーフにしたハットピンです。「06-029 ハムスターのペンダントトップ」と同じシリーズで、カンの代わりにピンを付けました。
 ピンの付け根が体の中央部なので、服に着けたときにピンが見えず、一所懸命しがみ付いている様に見えます。
現品は頼まれ物として作成したので、裏側のプレートにイニシャルを入れました。実はこれ、ワックスをタガネで彫って鋳造したものです。地金に直彫りで文字を入れる自信がなかった為の策なのですが、予想よりも綺麗に仕上がりました。プレート部全体は粗めのサンドペーパによるヘアライン仕上げです。
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