ミルグレインとは「千の(ミル)粒(グレイン)」という意味です。ですから日本語で用いられる「ミル打ち」というのは少し変で、いうとしたら「グレイン打ち」の方が適当ではないかと思うのですが、ここではそれは置いておきましょう。

ミルグレインは「粒を作るタガネ」を用いて金属表面に無数の粒を作り出す加工です。「ロレット」という、より簡単にミルグレインの加工ができる道具もあり ますが、この道具を用いた場合には、特に硬い金属では綺麗な「丸み」を出すことができません。ルーペで見るだけで簡単にそれが判ってしまいます。
荒井技巧では、粒の大きさに合わせたタガネを用いて、一粒一粒を作り出す方法を採っています。コスト高にはなりますが、ロレットを用いた加工や、型で作ったものとは仕上がりが格段に違います。

■ミルグレイン加工をするときのベース形状について
「ミルグレインは後加工なのでイメージ通りに自由にできる」と思われがちですが、実際には、イメージ通りにできるかどうかは、ベースの形状に大きく左右されます。
ベース形状に関する注意を作成しましたので、加工を検討されている方はご一読下さい。
【ミルグレイン加工をするときのベース形状
(pdf)】





■突起を作り付けておくミルグレイン

ミルグレイン自体は後加工ですが、それを作る為の「板状の突起」を予め作り付けておくことで、土台よりも高い位置に加工をすることが可能となります。



■後加工によるミルグレイン1(一般的なもの)

全く何もないプレーンな表面にタガネで細い線を彫り、残った凸部にミルグレインを施す方法です。この方法では、ベースの事前加工は全く不要です。

ロレットを使った加工は低コストですが、次の様な難点があります。
1)刻みが深くない…工具の構造的にやむを得ませんが、加工が全体に浅い為、仕上げでミルグレインの印象はどんどん薄くなります。
2)きちんと丸くならない…特に金系の地金は加工硬化が強く出る為、ロレットで綺麗に丸くすることは困難です。特に、粒の頂上付近にしわが寄りがちです。

荒井技巧では寸法に合わせたタガネで一つ一つ粒を作っていく為、大きさ、ピッチ、艶、高さの整った綺麗な仕上がりとなります。

リングの縁の部分に加工したものは良く見掛けますが、中央の写真の様に中央にライン状に加工することも可能です。



■後加工によるミルグレイン2(側面にかけて丸みを強くしたもの)

全く何もないプレーンな表面にタガネで細い線を彫り、残った凸部にミルグレインを施す方法です。
この方法では、ベースの事前加工は全く不要です。

リングの外側方向だけではなく、側面方向に掛けても丸みを強くしてあります。

一般的なミルグレインと、この「側面にかけて丸みを強くしたミルグレイン」は、どちらが良い、悪いというものではありません。あくまでもデザインや好みによる使い分けになります。例えば、一般的なミルグレインの方が、側面のエッジがよりシャープにはっきりと出ます。

尚、
完全に球体を作り出している「側面まで丸いミルグレイン」とは全く加工が異なります。こちらはあくまでも「丸みを強く」してあるだけであり、球体になっている訳ではありませんので、その点は予めご承知置き下さい。

加工はリングだけではなく、石座の周囲にも可能です。
3番目と4番目の写真は、粒の直径が凡そ0.7〜0.8mmと大きなものです。特にK18等硬さのある金属に対してこの大きさの加工をするのは、ロレットや通常のミルタガネでは不可能です。


■側面まで丸いミルグレイン(試験中)

この加工を請けているところはあまりないのではないでしょうか?
上面だけではなく側面にかけても丸みを持たせることが可能です。
一見すると粒金細工の様です。

2015-9-1現在、試験的に加工を請けています。
幾つか制限があり、
1)粒の直径は凡そφ0.5mm、ピッチは凡そ0.4mmです。これよりも小さい粒は作れますが、大きい粒は難しいです。
2)Pt900、真鍮への加工は実績がありますが、その他の地金への加工は「やってみないと分かりません」。特に硬さのあるK18YGやK18PG、K14等は、試した結果「加工できません」となる可能性は否定できません。今後実績は増やしていく予定です。
3)丸みを付ける関係で、加工箇所の形状に制限があります。
4)通常のミルグレインに比べて加工費が高くなります。多方向からの加工が必要な為です。
これらについてご了承頂いた上で、興味のある方は、是非お問い合わせ下さい。



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