展示室/貴金属・宝石[1]


06-001
ムーンストーンのピアス
2004年8月
ムーンストーン/キュービック・ジルコニア(2.0mm、ラベンダ)/SILVER950
約8x28mm

何年も前、かみさんと「東京国際ミネラルフェア」に行きました。これは毎年6月に開催されている、化石、鉱物、宝石等の展示即売会です。確か当時は結婚前、考えてみれば中々マニアックなデートですが、その時にとても綺麗なムーンストーンを買いました。当時は本当にこの道に進むなんて思ってもいませんでしたから、「その内何か作ってあげるよ」って、一体どうするつもりだったのでしょうね(笑)。
その石は今年ようやく日の目を見ました。
薄い覆輪で留めたムーンストーンを、銀地金磨り出しの金具に下げました。金具上部にラベンダ色のキュービック・ジルコニアを埋めてあります。
「パワーストーンの店」とかで売られているムーンストーンは単なる白い石ころだったりするのですが、宝飾に使われるムーンストーンは無色透明で、光の角度により石の中に青い光(「シラー」と呼びます)が浮かびます。これが月の光を連想させることが名前の所以です。ムーンストーン・レインボーという、七色が浮かぶ石もあるそうですが、残念ながら私は見たことがありません。
06-003
覆輪リング
2004年9月
合成スピネル/SILVER950

授業のカリキュラムでは、順次色々な課題が与えられていきます。私はなるべく出された課題に+αを盛り込む様に心掛けているのですが、ここでの課題は「カット石の覆輪リングを作成する」、+αは「V字腕の肩付き、唐草入りにする」でした。
作業を始めてからすぐに「一文字の肩付き」か「V字の唐草入り」のどちらかにした方が良かった、と思いました。というのは、曲がった腕を綺麗に二重にするというすり合わせ作業が中々大変なのです。
唐草はちょっとごつくなってしまいましたね。完成したリングのサイズは自分の小指にぴったり合うのですが、それを見た講師の評は「何だかいやらしいね」というものでした。喜ぶべきか悲しむべきか…
スピネルは長いことルビーやサファイアと混同されてきたのですが、色も豊富で中々に美しい石です。色の変わるアレキサンドライトタイプもあるそうです。
06-009
菫のペンダントトップ
2004年10月
アメシスト(ドロップ)/ペリドット(2.0mm)/SILVER950
約17x23mm

「総合制作」という題目で、これまでに身に付けた加工技術を以って何かを作りなさい、という課題です。ドロップ形のアメシストを花弁に見立て、菫の花を作りました。
ドロップのトップをパイプ石座の途中に食い込ませて押さえる、という方法で石留めしています。他の花弁は地金を叩いて曲げ、ガーネット粒で荒らした後にタガネで筋を彫り込みました。
ペリドットはここまで小さくなるとさすがに色が出ないですね。
仕上がりは気に入っているのですが、ペンダントトップとしては大失敗しています。というのは、裏側が細くなっている形状そのままとしてしまった為、非常に座りが悪いのです。左右の花弁にまたがる形でコキ(コの字型の金具)を付けるべきでした。
06-005
ハムスターのペンダント
2004年10月
ブラック・オニキス(2mm)/SILVER925
約30(W)x28(H)x31(D)mm

授業の課題で「プレゼント」という漠然としたテーマを与えられました。各人が「○(人)に△(イベント)のプレゼントをあげる」という仮定を立て、企画書を作成、実作しなくてはなりません。私は「『ハムスター大好きが』高じた挙句に会社を辞めて獣医を目指してしまった妻(自称『ハムマスター』)の誕生日に、ハムスターのペンダントをプレゼントする)」というストーリーを作りました。

モデルとしているのはゴールデンハムスターで、ケージの縁にしがみ付いているポーズです。尻尾は前後に揺れます。
このポーズでネックチェーンにしがみ付かせたかったのですが、世の中、中々考えた通りにはいきません。重量配分が悪く、「くるっ」と回ってぶら下がってしまうのです。仕方なく背中側に丸カンを付け、ネックチェーンのガイドとしました。
しかし又問題が。脇の部分(ネックチェーンにしがみ付く部分)を狭く作り過ぎた為、予定していた革紐が通らないのです。結局、革紐と細い金属チェーンを組み合わせることにしました。
都合の良いパーツが予め用意されている訳もなく、革紐端部の金具、引き輪と対になる丸カンは自前で作成し、チェーンの両端の小さい丸カンは直接ロウ付けしました。
眼は周りの地金を寄せて留めたかったのですが、鋳造前に石座まで彫り込んでしまった為に寸法が変わり(広がってしまった)、やむなく接着剤で留めました。
目指せ宝飾界のKAIYODO!
06-002
ベビーリング
2004年10月
ターコイズ/SILVER925

今年の7月、友人に二世が誕生しました。そのお祝いに作成したものです。って、自分の実習も兼ねてる訳ですが(笑)。
「石の脇に羽」というデザインです。
ベビーリングは内径が7mm程度と非常に小さく、当然ながら普通のリングを作るよりも加工が細かくなります。特に通常のリング用の心棒は使うことができないので、今回は「筆の軸」で代用しました。
中石は「魔避け」「お守り石」のターコイズにしました(誕生石ではありません。7月の誕生石はルビーです)。
計画では羽の裏に直接刻印を打つつもりだったのですが、曲面であることと宝飾用の刻印を持っていないことから断念しました。代わりに小さいプレートを作成し、羽の裏に留めてあります。 石座まで含めてワックスで作成したのですが、寸法が変わったり厚過ぎたり撓んだりと、中々難しいことが判りました。
06-004
蜘蛛のペンダントトップ
2004年10月
レインボー・カルシリカ(2.26ct、メキシコ産)/キュービック・ジルコニア(2.0mm)/SILVER925
約30x45mm

この10月に開催された「国際ミネラルアート&ジェム展 IMAGE2004」で「レインボー・カルシリカ」という面白い石を購入しました。石の模様を活かすデザインは? あちこちからアドバイスを貰いながら(要求しながら?)作った作品です。
モチーフは見ての通り「蜘蛛」なのですが、中石とするレインボー・カルシリカ自体にかなりクセがありますから、土台となる蜘蛛の体は単純化、図案化した造形にしました(友人の着ていたTシャツの柄がベース)。中石は覆輪留め、眼は無色のキュービック・ジルコニアを3つポンチ留めしてあります(ピント合ってません。ごめんなさい)。眼に色石を使うことも考えたのですが、中石とお互いに殺し合ってしまいそうなので、あえて無色にしました。
レインボー・カルシリカ(Rainbow CalSilica)というのは最近出回り始めた石らしく、資料も多くありません。それどころか、この色が「人工着色ではないのか」という議論にさえ片が付いていない様です。石によっては鮮やかな黄色も出る様です。
Skye'sGems/レインボー・カルシリカ
06-006
スネークスキンのペンダントトップ
2004年11月
スネークスキン/SILVER925
約9.5x23mm

それこそ10年以上前に「鉱物標本」として購入した石が出てきたので、ペンダントトップにしてみました。
ソフトワックスで変形石座を作ってみました。できてみたら裏側からの光が通って中々綺麗です。蛇の具象を作って埋め込む、というのも考えてみたのですが、石そのものに模様が入っている為に、鱗というよりも「脳みそが露出している」様にしか見えない(笑)のでやめました。
スネークスキンは瑪瑙(めのう)の一種です。
06-007
アンモナイトのピアス
2004年11月
アンモナイト化石/SILVER925
約12.5x16mm

「今日の1枚」にあるアンモナイトの化石をピアスにしました。
アンモナイト化石を覆輪石座でペンダントトップやブローチにしたものは見ることがあるのですが、ピアスは殆ど見ません。なので、購入時にあえて小さ目のものを選んでおきました。アンモナイトの化石は構造が残る分大変もろいので、爪でがっちりと押さえ込むのは危険です。このピアスも、覆輪座を寄せてこそありますが、固定は接着剤です。

06-010
ハムスターリング「おべんと持ってどこいくの」
2004年5月
SV925 ブラックオニキス/オニキス眼タイプのみ
#11
約*g

ほっぺにおべんとを一杯詰め込んだゴールデンハムスターのリングです。両手でご飯(種)を持っています。この「膨らんだ頬がリングになっている」というデザインは以前から考えていたもので、ようやく作り上げることができました。

顔全体の角度を調節し、着けた時に鼻先が大きく出っ張らない様にデザインしました。正面から見たイメージよりも実際はかなり平たくできています。
又、裏側は大きく抜いてあるので、大きさの割りには軽く、着けていて邪魔になりません。
刻印は耳の裏に入ります。
眼にオニキスを入れたタイプも作ってみました。

ゴールデンハムスターとジャンガリアンハムスター、全然違う生き物ですよね。「ハムスター」って一括りにしてしまうのは如何なものかと…
06-011
ファイア・オパールのペンダントトップ
2004年12月
ファイアオパール(4.09ct、メキシコ産)/SILVER950
約22x45mm

「カボションカットの石を覆輪留めしてペンダントトップを作りなさい」という課題で、「今日の1枚」にあるファイアオパールを使ってみました。厚みのあるドロップ形で、綺麗なオレンジ色の石です。
このファイアオパール、一見正面から見るとただの薄いオレンジ色の石ですが、斜め横方向から光が差し込むと遊色がとても鮮やかに浮かび上がります。オパールのはこのきらめきは非常に立体的なものですから、写真では十分にお伝えできないのが残念です。
さて、オパールは軟らかく破損しやすい為、取り扱いには十分な注意が必要です。十分な注意を払っていたつもりだったのですが…端を欠きました。覆輪の形で何とかごまかしましたが(表からは欠けは見えません!)、天然石の怖さを実感しました(通常課題の素材には壊れにくく安価な合成石を使います)。大きく割れたりしなかったのがせめてもの救いです。
地金が石畳の様に並んでいるのは、全て個別のパーツとして切り出し、それらを互いに細い銀線でつなぎ合わせています。残念ながら裏側の仕上げは綺麗とはいえません。「作りの良し悪しは裏側の仕上げを見れば判る」といわれます。今後の大きな課題です。
日本人は「オパール大好き民族」で、全世界の宝石質オパールの8割を消費しているそうです。私も例に漏れずオパールが大好きなのですが、当然ながら美しいものは価格が高く、現状ではとても手が出ません。いつかは「きらめくブラックオパール」を使ってみたいものです。




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