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written by ジャックナイフ またまたのサントラものでございます。今回は新作中心のご紹介です。 ■「ワンダーランド駅で」ラブストーリーのプロローグで一本の映画に仕上げてしまったしゃれた小品の音楽は、ボサノバのコンパイレーションといえますが、その中にクラウディオ・ラガッツィのオリジナルスコアが入っているという構成です。ボサノバと言われても、「イパネマの娘」くらいしか聞いたことのない私ですが、このアルバムを聞いてると、ボサノバってのもいいもんだなあって思いましたから、ボサノバ入門盤としてもかなりいけてる一枚です。ラガッツィのスコアもクラリネット、ギター、スキャットとピアノによるしゃれたジャズタッチというのが楽しい一品で、映画の持つふんわりとした雰囲気を,サントラアルバムも見事に再現してます。アストラッド・ジルベルトとかアントニオ・カルロス・ジョビン、タンバ・トリオといった面々が参加してますが、個人的にはアルバム1曲目の「パトゥカーダ」(ベベウ・ジルベルト&ヴィニシウス・カントゥアリア)がお気に入りです。BGMとして聞いても楽しいアルバムでして、午後の紅茶気分(どんな気分じゃ)に最適な一枚と申せましょう。■「シャンドライの恋」ベルトルッチ監督が描いた、崖っぷちの無償の愛の物語の音楽は、ヒロインの故郷のアフリカ音楽に、音楽家の奏でるピアノ曲という二つの音楽が交錯するのですが、サントラアルバムも、その二つの流れが交錯した構成になっています。しかし、テーマとして、アレッシオ・ヴラドのオリジナルスコアが映画の中で大変大きな比重を占めていまして、全体として統一感のあるアルバムになっています。オリジナルスコアは音楽家の作曲したという設定のピアノ曲ですが、主人公のヒロインへの恋慕を込めた情熱的なピアノが圧巻です。その他、画面に登場して自ら歌うC・J・オワングの歌うアフリカ民謡のような歌が大変印象的ですし、BGMとして登場するパパ・ウェンバやカリフ・ケイタのアフリカン・ポップスも魅力的な音でして、さらに、バッハやモーツァルトのピアノ曲まで登場するというゴッタ煮のような構成ですが、聞いているとあの映画の世界が眼前に甦ってきますし、変わりだねコンパイレーションアルバムとしても楽しめる仕上がりになっています。■「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」芸術家としての天才も、その私生活はかなり不幸、そんなありがちな現実を正面から描いたドラマの音楽を「ノストラダムス」「マングラー」などを手がけたバリントン・フェロングが担当しました。実在した有名なチェリストの物語だけに、既成曲も多く使われているのですが、特にエルガー作曲の「チェロ協奏曲」が大変印象的で、この映画のテーマ曲とも言える扱いとインパクトになっていまして、当のデュ・プレによる演奏が映画でも使われ、サントラCDにも収録されています。このドラマティックな曲は予告編でも本編でも使われていまして、この音楽の持つイメージが映画を支配していると言ってもよく、他の音楽の印象が薄くなってしまっていることも事実なのですが、フェロングのスコアは控えめにドラマを支えているという印象です。このオリジナルスコア部分は、フェロング自身が指揮をして、ロンドン・メトロポリタン・オーケストラが演奏しています。オープニングで砂浜を走りまわる幼い姉妹を描写した曲など、流麗なストリングスに木管が加わってファンタスティックなイメージを作り出していますし、妹の農家を描写する静かな音楽も、デュ・プレ自身の演奏する激しい音との好対照を作り出しています。ラストも彼の音楽により、ささやかな希望を残しながら、静かな余韻を残すことに成功していますし、縁の下の力持ちの典型というべきスコアです。■「ファンタジア2000」リニューアルではなく、新しい視点からの音楽の映像化作品です。クラシックの名曲に別のイメージを重ねています。今回のラインナップは「ベートーベン:第5番」「レスピーギ:ローマの松」「ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー」「ショスタコビッチ:ピアノコンチェルト2番」「サン・サーンス:動物の謝肉祭」「エルガー:威風堂々」「ストラビンスキー:火の鳥」が、ジェームズ・レバイン指揮、シカゴ交響楽団による新録音で、後「デュカス:魔法使いの弟子」のみ旧作からの引用で、フィルハーモニア管弦楽団による演奏となっています。大体、メジャーな曲が多くて、かつオーケストラをフルに鳴らす曲をピックアップしてありますので、子供向けクラシック入門盤としてもオススメの一枚です。映画を観て、このCDを繰り返して聞くと幼心にも音楽への興味が深まるのではないのでしょうか。個人的には、「ショスタコビッチ:ピアノコンチェルト2番」という曲を初めて聞いて、ドラマチックな音の発見があったというところでしょうか。とはいえ、これから「ローマの松」を聞けば、空飛ぶ鯨の群れのイメージが頭に浮かんでしまうのは、どんなものでしょう。■「続・荒野の用心棒」30年以上昔の映画のサントラ盤が最近海外で、完全盤として発売され、輸入盤店で購入できるので、ちょっとご紹介です。映画自体は、マカロニウエスタンの典型とも言うべきもので、「荒野の用心棒」とは全く関係なく、ある町に流れてきたジャンゴがそこのいざこざに巻きこまれるというもので、「ジャンゴゥー」という日本の演歌みたいな主題歌がヒットしたそうです。そして音楽担当は、今や「イル・ポスティーノ」「遥かなる帰郷」などでもはや名匠の域に達しているルイス・バカロフです。舞台がメキシコということで、南米風サウンドを交えて、マカロニウエスタンのいわゆる定番の音を聞かせてくれます。エレキギターのデケデケデンという音、そしてサビの聞いたメインテーマ、ドラマチックな盛り上げ部分、もはやパロディとしても使われなくなった(オリジナルを知ってる人が少ないから)音楽ですが、こうして聞くと却って新鮮に聞こえてしまうのが面白いところです。「続・荒野の用心棒」以外は日本盤が出ています。 |
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