2003年の映画ベストテン


written by ジャックナイフ
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2003年は例年ほどには映画を観られなかったのですが、それでも一応ベストテンを作ってみました。毎年のことながら、段々と選択がオヤジ臭くなってきたような気もします。

第1位「夏休みのレモネード」

これはもう、盛大に泣かされました。純真な子供の心を汲み取る大人たちのそれぞれの想い、そこから見えてくるのは善意と勇気と暖かいまなざし。死病映画でくくって欲しくない珠玉の名編と言っていいでしょう。

第2位「戦場のピアニスト」

こんな怖い映画は久しぶりでした。身近に死の恐怖を感じながら日々を送る主人公たちの姿、大きな絶望とかすかな希望をささやかな悔恨を持って描いた力作です。また、主人公たちにもたらした恐怖を与える立場に自らもなりかねないと気付くと怖さもひとしおでした。

第3位「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」

死刑制度を扱いながら、ケレン味たっぷりの娯楽映画に仕上げてしまうという英国のアラン・パーカーならではのシニカルな視点が光る一編でした。面白いというと罰当たりと言われてしまうような題材をうまく作ると、やはり面白いんですよ。

第4位「ラスト・サムライ」

ドラマとしてもよくできてるんですが、明治維新の日本の状況をデフォルメを加えて絵解きしてある点を評価したいです。日露戦争に勝ったことがどういう意味があるのかといったことと同様、歴史の授業で教えてもらっていない明治という時代にスポットが当たっているというところが面白いと思った次第です。

第5位「NARC」

ミステリーであり、反麻薬キャンペーン映画であり、バイオレンス映画でもある見応え十分の力作でした。直接に麻薬中毒の描写はないのですが、これほど麻薬への憎悪を剥き出しにした映画って少ないのではないかな。役者の力演も見逃せません。

第6位「シャーロット・グレイ」

いわゆるヒロインものの映画でして、第二次大戦のナチによるユダヤ人迫害を舞台にした波乱万丈の一編。ケイト・ブランシェットの熱演もあって、見応えのあるものとなりました。ラストの彼女のとった行動甘いかもしれないけど、私は大いに泣かされてしまいました。

第7位「ボウリング・フォー・コロンバイン」

劇映画ではないけれど、観客を誘導してドキドキハラハラさせたり笑いをとるテクニックを駆使した、反銃社会キャンペーン映画です。プロパガンダが主眼であることを前面に出している点が面白かったですね。この作者なら、逆の銃器礼賛キャンペーンの映画でも同じくらいの説得力で作れそう。この先、色々なプロパガンダに対して心構えができるという点でも、一見をオススメする映画です。

第8位「スパイダー・少年は蜘蛛にキスをする」

何か、趣味で作ってしまったようなデビッド・クローネンバーグ監督作品だったのですが、原作ものだったと知って余計びっくり。映像と語り口の芸で、一人の男の崩壊した内面を見事に描写していました。観終わって、何かがひっかかる、なぜか心に残ってしまう映画でした。

第9位「クリスティーナの好きなこと」

これは、もうバカコメディの快作ですね。下品だけど、きれいなおねえちゃんが徹底してやっているところが笑えるし、泣けるかも。強引で安直な結末もこの映画にはふさわしいです。セルマ・ブレア偉い。

第10位「フォーン・ブース」

晩秋はサスペンススリラーの季節というのは、今年もあてはまるようで、この映画はシチュエーションの面白さに、ジョエル・シュマッカーの丁寧な演出でドラマとしての奥行きが出たサスペンスものの快作です。

これでも、「至福のとき」「ヘブン」「WARARIDORI」「キリクと魔女」「抱擁」「トゥー・ウィークス・ノーティス」「ファインディング・ニモ」といった好きな映画がこぼれてしまいましたから、そこそこいい映画があったんじゃないかと思ってます。

それでは、例年のピンポイントベスト5を。

第1位「愛してる愛してない」の怖さ

オドレイ・トトウのラブコメだと思って観に行ったら、見事にだまされてしまった一遍。普段、女性にもてない自分を呪っていたのを、うーん、もてるってのも結構大変かもって気付かせた一品です。あんな思いするなら、もてない自分でも、ま、いいかと妙なあきらめがつくということで、やや意味不明な第1位です。

第2位「ターミネーター3」のオチ

前作「2」が超大作だったのですが、今回はタイムパラドックスを扱ったSFとしてこじんまりとまとまったという印象でした。ラストのオチもピリっと決まったという感じで、こういうのをSF映画の小品というのかもしれません。お金をかけて、SF映画の小品を作ったというのも変ですが、その小さくまとまってるところが、この映画のいいところだと思った次第です。こういう佳作をもっときちんと評価してもいいと思うのですが。

第3位「スパイキッズ3D」のサービス精神

前2作を観てくれたお客さんをきちんと意識して作られていて、かつ、一見さんにもわかりやすいストーリー展開、妙に豪華なキャスティングと、さらに立体映画という仕掛けもつけて、お客様へのサービスが大変行き届いた映画になってます。1本の映画としてどうかというと微妙なところなんですが、それでも、満員の劇場で親子揃って楽しんでいるのを見て、こういう映画もありなんだなあ、感心してしまいました。

第4位「ブロンド・ライフ」のアンジェリーナ・ジョリー

今年はヒロインの豊作な年でした。「至福のとき」のドン・ジエ、「クローサー」のスー・チーとヴィッキーチャオ、「クリスチーナのすきなこと」のセルマ・ブレア(好き)、「ニューヨーク最後の日々」のキム・ベイジンガーとティア・レオーニ(これまた好き)、「トーク・トゥ・ハー」のレオノール・ワトリング、「死ぬまでにしたい10のこと」のサラ・ポーリー、「エニグマ」のケイト・ウィンスレット、「運命の女」のダイアン・レインなどなど、あまたのヒロインがいる中で、「ブロンド・ライフ」のアンジェリーナ・ジョリーはいつものドラマチックヒロインとは違う軽めのキャラクターが大変魅力的でした。彼女はコメディでも光ること発見できたという点も含めて、彼女が2003年のベストヒロインです。まあ、単に私の好みというだけなんですが。

第5位「WATARIDORI」の鳥気分

これは劇場で観てびっくりしました。ホントに鳥といっしょに空飛んでる気分になるんですから、すごいです。映画としても、その絵が撮りたいから、この映画作ったんだというのが伝わってくるのがよかったです。これをIMAXの3D映像でやってくれたらと思うのは注文が過ぎるのかな。

後、番外で、「ソラリスの静かな展開」も挙げておきます。評価は散々な「ソラリス」ですが、あの静かで地味な展開は捨てがたい味わいがありました。

そんなわけで、本年もよろしくお願いいたします。

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