2000年の映画ベストテン


written by ジャックナイフ
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20世紀の最後の年のベストテンでございます。今年は観た映画のせいか、これ一本と決めるのが難しいのですが、それでも強引に10本並べてしまいました。映画の良し悪しというよりは、観終わった時の満腹度と、単なる好みの羅列になってしまいました。私はほとんど邦画を観ないので、洋画のベストテンになってしまったことはご容赦のほどを。

第1位「ヒマラヤ杉に降る雪」

恋愛ドラマであり、歴史ドラマであり、法廷ドラマであり、ミステリーである、それだけの内容を盛り込んで、過不足なく1本の映画に仕上げたのは演出の力であり、演技陣の底力というべきものでしょう。絵の美しさや音楽の見事さを含めて、映画としての満腹度が一番高かったということで、これを1番にしちゃいます。

第2位「エドtv」

テレビというメディアは怖いものですが、その怖さは、常に作る側と観る側が共犯関係にあるからだという事実をつきつけてくる映画です。後味のあまりよくない映画なんですが、人間はつくづく好奇心と嫉妬心の動物だと気付かせてくれたという点で、見応えのあるものでした。「トゥルーマン・ショー」と同類だと思ってパスした方、こっちの方がコメディ度も悪意も上ですよ。

第3位「スペシャリスト自覚なき殺戮者」

ナチスドイツのアイヒマンの裁判を淡々と追ったドキュメンタリーです。歴史に残る虐殺の元締めは、ただの小役人風チンケなオヤジでした。こんなオヤジならどこにでも転がっていそう、だとすると誰もが虐殺の加害者になりうるのでしょうか。人間の負の無限の可能性を見せて戦慄させる力作です。

第4位「ワンダーランド駅で」

恋愛映画の中でも、ステキ度が高かったのがこれ。見知らぬ二人の出会いまでをボサノバのリズムに乗せて描いた佳作です。映画館を出た後、何か気分がウキウキするような映画ってなかなかお目にかかれませんが、これはその珍しいヒットでした。

第5位「嘘の心」

フランス映画ってこんな感じだという私の先入観にぴったりフィットした作品。殺人事件の絡むミステリーながら、夫婦の微妙な感情のすれ違いを細やかに描いて、小品ながら見応えのあるものになっていました。役者のよさもあって、こういう映画を劇場で観ることができてよかったと思った一品です。

第6位「あの子を探して」

中国映画なんですが、何だか子供の頃を思い出すような不思議な味わいがありました。生活の苦しい山村で小さい子供たちを任された、13歳の女の子の奮闘ぶりをコミカルに、そしてささやかな切なさをもって描いた一品。エンドクレジットで泣かされてしまったのは私だけではないと思っています。

第7位「この胸のときめき」

これはいわゆる運命の恋というべき物語なんですが、あくまでコミカルに描いて後味のよい作品に仕上がりました。主演二人のスマートならざるところが好感が持てて、二人をとりまく人々の扱いなど、まさに下町人情喜劇の味わいがありました。ママ役専門と思っていたボニー・ハント、監督としてもあなどれません。

第8位「趣味の問題」

ミステリーものは大好きなのですが、その中でも面白かったのがこれ。金持ちの道楽か、味見役として雇われた若者が段々とその金持ちにマインドコントロールされていきます。全編にみなぎる奇妙な緊張感が、不気味な余韻を残すあたり、スリラーとしてもなかなかの出来栄えでした。

第9位「スチュアート・リトル」

ねずみが人間の養子になるというムチャな設定を納得させてしまう力ワザの映画ですが、これが丁寧に世界観を設定していて、その展開も示唆に富むところが多く、子供向けと切り捨てるには惜しい映画でした。ねずみが家族になってしまったとき、ペットの猫はどうなるんだというあたりは、なかなか盲点だったと個人的には感心してしまったのですが、そう思ったのは私だけかな。

第10位「UMA・レイク・プラシッド」

やはりゲテものファンとしてはこういう映画も外せません。残酷シーンもあるのですが、全編に流れるのどかな雰囲気は捨てがたい味わいがありました。ちゃんと役者も揃えて、ドラマ部分もきちんと作れば、なかなかに面白い映画が出来るんだと感心してしまいました。ブリジット・フォンダがコメディをこなすのが意外なうれしい発見でした。

というわけで、かなり偏ったベストテンになってしまった結果、映画としては出来のよかった「ことの終わり」「遠い空の向こうに」「シャンドライの恋」などがもれてしまい、また個人的に好きだった「氷の接吻」「完全犯罪」「インビジブル」「逢いたくてヴェニス」といった佳品もこぼれてしまったのが残念です。

そして特別賞

「リング0・バースディ」

「リング」シリーズも「らせん」「リング2」と迷走気味だったのですが、この「リング0」は怖さと悲しさの両方をミックスさせて、見事にシリーズを救ったと思います。ショックシーンを一切カットした演出の潔さと、ヒロインものとしての悲恋ストーリーがなかなかに見応えがありました。少女趣味かもしれないけど、個人的にこの映画が好きなのもので。

さらに、今年も「この映画の局部的にここが好き」というピンポイントベスト5も作ってみました。

第1位「ボーン・コレクター」のヒロインいじめ

アンジェリーナ・ジョリーが魅力的な作品でしたが、連続殺人よりも、ヒロインに死体検分を無理矢理させるというSM的趣向の方が印象に残ってしまいました。ジョリーが魅力的だからこそ成り立つのですが、これって多分狙ってやってるんだろうなあ。

第2位「オーロラの彼方に」の前半

30年前の父親と無線で話ができるというロマンチックな設定がすごくよかったです。それだけで、1時間ドラマの1エピソードにまとめたら大感動モノになったのですが、後半で「ドラえもん」もどきの展開になって、失速してしまいました。役者もいいし設定も最高なのに、結局そこそこの映画になっちゃったのが残念でした。

第3位「さくや妖怪伝」の企画

妖怪ものでヒロインもので特撮もの。こういう映画は大好きなだけにかなり期待したのですが、妖怪ものとヒロインものが今イチだったのが惜しまれます。また映画館で観るための絵になっていないというのがどうも気になってしまいました。こういう企画は、一発で終わってしまって欲しくないだけに頑張って欲しいと思った次第です。

第4位「ファンタジア2000」の鯨

アニメキャラものは「アイアン・ジャイアント」という愛すべきキャラクターもいたのですが、IMAXの大画面で見た鯨のインパクトが強かったです。空飛ぶ鯨の群れのシーンはでかい画面で観てこそのものだと思います。そうそう、「トイ・ストーリー2」の三つ目の宇宙人もいい味出してました。でも、結局、画面のでかさの違いで鯨というところに落ちついてしまいます。

第5位「チャーリーズ・エンジェル」のドリュー・バリモア

今年はヒロインが豊作でして「13F」「ミュージック・フローム・ネクスト・ドア」のグレッチェン・モル、「キッド」のエミリー・モーティマー、「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」のケリー・プレストン、「氷の微笑」「ダブル・ジョパティ」のアシュレイ・ジャッド、「狂っちゃいないぜ」「リプリー」のケイト・ブランシェット、「オータム・イン・ニューヨーク」のウィノナ・ライダーなどが印象的でしたが、結局3人のヒロインドラマでありながら、一番おいしいところをさらったバリモア嬢が一番なのではないかしら、って結局は好みの問題なんですけどね。

そんなわけで、21世紀もどうぞよろしくなのでございました。

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