1999年サントラベストテン


written by ジャックナイフ
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少々遅れ馳せながら、1999年サントラベストテンを作ってみました。
今年は映画を観た本数がいつもより多かったぶん、いいサントラにもたくさん巡り逢うことができました。

第1位「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」

映画としての出来栄えは今一つでしたが、その映画をカーター・バーウェルの音楽が見事に救っていました。子供が歌う南部民謡に軍隊のドラムをかぶせるオープニングからテンションの高い音作りは、後半の重厚なテーマまで、この映画の持つ空気を的確に描写しています。映画の出来がもっとよければ評価も上がっただろうにと思うので、ここであえてベストワンとさせていただきました。

第2位「輝きの海」

ベテラン、ジョン・バリーが手がけた文芸ラブロマンの一品で、ちょっと聞けばすぐにバリーとわかる定番の音です。でも、いいんですよ、これが。海から来た男と奔放な娘の恋をバリーの音楽は、海をモチーフにしたテーマ曲から、ゆっくりと愛のドラマへと展開していきます。いつものバリー節だとわかっていながら、この音楽に心揺さぶられ、この音楽なくしてこの映画は語れなくなってしまうのです。

第3位「8MM」

骨太なサイコスリラーをマイケル・ダンナが手がたい音でまとめあげています。ハリウッドを中近東風サウンドで描写するといったテクニックもあるのですが、ドラマ部分を大変シリアスな音でまとめて、殺人フィルムという扇情的な設定とは裏腹な普遍性のある人間ドラマを見事に支えていました。

第4位「ラン・ローラ・ラン」

設定、映像、展開すべてが遊び心満載の映画でしたが、音楽もノリノリのテンポで映画を疾走させてくれました。映像とのマッチングも絶妙で、先走りすることなく、映像の呼吸と見事にシンクロしたビートの効いたサウンドは、それだけ聞いても楽しい一品です。

第5位「鳩の翼」

1999年は「恋に落ちたシェイクスピア」「エリザベス」「娼婦ベロニカ」などのいわゆるコスチュームプレイが多く公開され、その音楽もそれぞれ聞き応え十分の出来栄えでしたが、なかでも光っていたのが、エドワード・シャーマーによるこの作品でした。今世紀初頭という時代とその悲劇を静かに奏でた品の良い音作りで、控えめだけど耳に残る音楽は、何度も聞き返しのきく音になっています。

第6位「メッセージ・イン・ア・ボトル」

映画はかなりベタな恋愛モノなんですが、ガブリエル・ヤーレによる音楽は、海の重厚さに切ない想いを加えて、聞き応え十分のオーケストラ音楽を展開していました。ここでクールな音を入れられたら台無しになってしまうところに、きっちりラブストーリーの音をつけました。この音を聞くと、ロマンチックワールドに引きずりこまれてしまいます。

第7位「ゴールデンボーイ」

映画自体も意外な見応えのあるものでしたが、この映画の音楽もおどろおどろしいスリラー音楽で始まりながら、人間ドラマの音としての厚みを持った音として展開していくという、なかなかに聞き応えのあるものでした。「ユージュアル・サスペクト」「迷宮のレンブラント」などを手がけ、編集者としての顔も持つジョン・オットマンの最高作ではないでしょうか。

第8位「ホーンティング」

怖くないホラー映画ということで、私としては評価の低い本編ですが、名匠ジェリー・ゴールドスミスの音楽は、怖さを除いた悲しみとやさしさの音をつけています。サビ抜きの鮨みたいですけど、それをまろやかに仕上げる手腕はさすがにベテランならではのものと思います。

第9位「セントラル・ステーション」

普段行いの良くない人もたまにはいいことをしてしまうという物語に、アントニオ・ピントとジャック・モーレンバウムの二人が、素朴で泣かせるスコアを提供しました。ちょっと異国情緒を漂わせての音作りですが、聞き返すとなかなかに色々なカラーの音を交えた楽しいアルバムになっています。

第10位「エントラップメント」

アクション映画の音楽と言いますと、「ソルジャー」「エネミー・オブ・アメリカ」「ラッシュ・アワー」「RONIN」など、粒ぞろいの1年だったのですが、スリルと重厚さを併せ持つというところで、この作品が頭一つリードしているように思います。クリストファー・ヤングは「屋根裏部屋の花たち」「告発」などシリアススコアの多い人ですが、職人的なうまさでこの映画に渋い華を添えました。

この他にも「微笑みをもう一度」「スネーク・アイズ」「タンゴ」「アルナーチャラム」「永遠と一日」などが印象に残りました。また、2000年に向けましては、「ボーン・コレクター」「完全犯罪」のクレイグ・アームストロング、「THE CIDER HOUSE RULES」「愛されし者」のレイチェル・ポートマン、そして、「アメリカン・ヒストリー・X」「狂っちゃいねえぜ」のアン・ダドリーに期待しています。これらのサントラCDは既に輸入盤で入手可能ですが、どれもなかなかに聞かせるスコアになっています。そんなわけで、2000年も「ちょっとサントラもの」もよろしくお願いいたします。

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