1999年ベストテン


written by ジャックナイフ
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今年もいよいよ押し詰まってまいりましたが、ま、こんなところでしょうということで、今年のベストテンを作らせていただきました。1998年12月後半から、1999年前半までの、洋画限定のベストテンですのでご容赦のほどを。

第1位「シンプル・プラン」

身につまされる人間の欲望、でもそれだけじゃない、ちょっとしたボタンの掛け違いが大きな悲劇を生み、そして、それは一生消えない傷を残してしまう。ビル・パクストンの凡人演技が見事。また、原作よりも血生臭さを押さえたという脚本、演出に拍手。

第2位「鳩の翼」

人は生きるためには何でもする、気取っていても、いい服を着ていても。でも、そんなことをしてもハッピーエンドは得られないのに。品のよいドラマに生々しくも切ない結末が見応えある作品となりました。

第3位「ディープ・エンド・オブ・オーシャン」

人と人との絆なんて、片方だけの思い込みだけでは、不充分。でもお互いが少しずつ歩み寄る努力が新しい関係を生み出す、そんな展開がうれしくも泣かせる映画でした。時間を人を変えますけど、それを成長と呼ぶことができるのかどうかは、微妙なところです。

第4位「運動靴と赤い金魚」

イランの映画だそうですが、主人公兄妹の身近な貧乏臭さが共感を呼ぶ映画でした。徹底して子供の視点から描かれたドラマは童心に返してくれるだけではなく、今の自分が忘れていたものを思い出させてくれました。

第5位「輝きの海」

思いっきりロマンチック気分に浸りたい時の海のラブロマンス。「メッセージ・イン・ア・ボトル」もよかったのですが、脇役の充実度と登場人物への共感度で、こっちになりました。

第6位「ウエディング・シンガー」

ハートウォーミングコメディなんて滅多にお目にかかれないのですが、これは当たりの大ヒット。ヒロインのかわいさ、ヒーローの誠実さ、お笑いシーンもタップリで、スティーブン・ブシェミのおまけつきという豪華な一編でした。うーん、これハッピーハッピーね!

第7位「セントラル・ステーション」

とんでもないオバはんと、幸薄い少年の珍道中なのですが、ラストを大感動の一歩手前でおさえた演出にボロボロに泣かされてしまいました。善意の人じゃなくてもいいことをしてしまうときがある。そんな瞬間を暖かな視点で描いているのがうれしい一編でした。

第8位「ウィズアウト・ユー」

よくある恋愛ドラマながら、MTV出身らしい凝った映像と、意外なラストで大変好感の持てる映画に仕上がりました。一瞬の恋が点ならば、人生は線である、そんな視点がこんな結末に暖かな余韻を残しました。

第9位「アイ・ウォント・ユー」

印象的な映像で見せる映画であり、いびつなラブストーリーであり、でもベースはミステリー仕立てという欲張った構成ながら、見応えのある映画になっていました。ヒロインのレイチェル・ワイスの存在感がすごいです。

第10位「ヴァンパイア・最後の聖戦」

ジョン・カーペンターのホラー映画は、まるでいわしの骨のようです。どうみても安物っぽいのに、どうも何かが引っかかって気になって仕方がないという感じでしょうか。この映画も「変なのー」で片付けてしまえそうなのに、語りだすといくらでも出てくるという変な映画でした。

特別賞「ビザと美徳」

日本のシンドラーと呼ばれた、杉原総領事を描いた26分の短編劇映画です。日系アメリカ人の作った日本人の物語で、大変静かな展開ながら、感動的なドラマとなっています。こういう日本人がいたことを忘れないためにも、覚えておきたいですし、この映画を一般の映画館で公開した、横浜のシネマジャックという劇場にも敬意を表したいと思います。この映画を劇場でお金を払って観たということは、今年の映画鑑賞における一つの事件でしたもの。
そんなわけで、「ゴールデン・ボーイ」「ファミリー・ゲーム/双子の天使」「ノッティングヒルの恋人」「メリーに首ったけ」「バグズ・ライフ」「25年目のキス」といった佳作群がはみ出てしまったのが残念でした。期待が大きかった大作「スター・ウォーズ/エピソード1」「シン・レッド・ライン」「アイズ・ワイド・ショット」は誉めるところを探さないとならないという感じで私には今イチでした。また、予告編で期待させた「交渉人」「マトリクス」「シックスセンス」といったところは、仕掛けに頼りすぎているのか、今一歩「大好き」のレベルにまでにはいきませんでした。

そんなところで来年もどうぞよろしく。

えーと、ついでに、99年の映画ピンポイントベスト5を挙げさせていただきます。これはベストテンには入らないけど、部分的に気になってしまった映画です。

第1位「ガメラ3」の渋谷壊滅

いやー、ガメラが渋谷で大暴れしてくれたのはすごかったです。都市破壊の爽快さと、人が死ぬ怖さのダブルエンターテイメントでした。今度のゴジラはどうなのかしらん。

第2位「アルナーチャラム・踊るスーパースター」の群舞

マサラムービーなんて「ムトゥ」がまぐれ当たりだったんだと思っていたら、そうでもないぞと気づかせてくれたのが、「アルナーチャラム」でした。特に主人公が最初に登場するシーンのナンバーと、太めのサブヒロインが映画撮影所で、白昼夢を見るシーンのナンバーがお気に入りでした。

第3位「マイティ・ジョー」のチャーリーズ・セロン

今年の映画のベストヒロインはこの人。この他の候補は「奇蹟の輝き」のアナベラ・シオラ、「トーマス・クラウン・アフェアー」のレネ・ロッソ、「アイ・ウォント・ユー」のレイチェル・ワイスでした。後、集団では「パラサイト」の学生女子及び女性教員の皆さんを挙げておきます。

第4位「ラン・ローラ・ラン」の走り

映画は始まってから、ヒロインがずっと走りっぱなしなんですが、この走りのフォームがかっこいいのですよ。全力疾走でかつ姿勢がよくて上半身が揺れない。映画全体がスタイリッシュに視覚的な仕掛けを凝らしているので、この走りのフォームもびしっと決まったという感じでしょうか。

第5位「リトル・ヴォイス」「エイミー」の音楽のあり方

音楽といえば、心をつないだり、開いたりするものと相場が決まっているのですが、この2本の映画は音楽を心を閉ざす道具として扱っているのが大変興味深かったです。結局、自分の言葉で語らなければ、自分を取り戻せないというところが、私のお気に入りです。

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