「エリイアン4」をお題にした小噺
野菜嫌いの子供たちに一石を投じる小話シリーズ(大ウソ)
今回のお題は「エイリアン4」
一家の食事時に不意をついてくるものの一つがテレビのニュースです。
「最近は色々と海外から新しい野菜が入ってきますね。そんな中で今注目されているのがこれです。」 「ちょっと、見た目はセロリのようですが、根元の方がちょっと赤みがかっていますね。」 「お父さん、今食べてるのがそのヴェポーラよ。」 「ほー、チンゲン菜かと思ったら。」 「このヴェポーラっていう野菜なのですが、現代のバイオ技術の結晶と呼ばれているんですよ。」 「バイオというと、一種のクローン野菜なのでしょうか。」 「このヴェポーラには、みんな生産者の顔写真入りのカードがついています。」 「最近の有機栽培野菜によくついてくるやつですね。」 「ウチのにもついてきたわ。ほら。」 「お母さん、どうしてこういう野菜についてくる顔ってブサイクなオヤジが多いのかしら。」 「ああ、ホントだ。なんだか、メシがまずくなるよなツラだな。」 「ところが、これはただの生産者ではないのです。この野菜を作るにあたって、まず生産者の方の血液を採取します。そして、このヴェポーラの種子にその血液から抽出したDNAをかけあわせるのです。」 「え、すると人間と植物の合成野菜なのですか。」 「そうです。これにより、ヴェポーラは根元部分に非常に多くのタンパク質を含むようになりますし、また、アミノ酸が旨味成分となって今までの野菜にないコクのある味になっているんですよ。」 「なるほど、文字通り、この生産者の方の血を分けた子供みたいなものですね。」 「げーっ、もういらない。お母さん、へんな野菜買ってこないでよ。」 「俺もいらないよ。気持ち悪いよなあ。」 「そんな、もったいないじゃない。」 「焼いたり、炒めたりすると、肉の風味もあり、一方澱粉質はほとんどないので、ダイエット食品としてもお薦めなんですよ。タンパク質、食物繊維、ビタミンとまさに夢の食品というわけです。」 「うーん、なるほど、ヴェポーラは日本でも栽培されているのでしょうか。」 「ええ、一個所、埼玉の戸田の有坂さんが栽培しています。」 「あー、確かに有坂って書いてあるわね。」 「うわー、やだやだ。」 「えー、今のニュースの中で一部誤りがありました。ヴェポーラと掛け合わせるのは人間のDNAではなくて、豚のDNAでした。お詫びして訂正いたします。」 「あー、何だ。豚だったんだ。じゃあ......」 「じゃあ?」 「このオヤジよりマシってこと?」 「お父さん、残さず食べて下さいね。」 「いや、豚とか人間とかという問題では......」 まー、色々と頭悩ます世の中になってきたものです。 ジャックナイフ(64512175@people.or.jp)
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