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8月30日が土曜日だと、サラリーマンのお父さんにこんな災難もあります。 「えー、夏休みの自由課題をまだやってないの?」 「うん、まだ。」 「開き直るんじゃありません。ねえ、あなた、ツヨシったら....」 「そんな大きな声だせば、近所中に聞こえてるよ。でも、何か出さなきゃい けないんだろう。」 「でも、何やっていいか、わからなかったんだもん。」 「自由課題なんだから、なんでも自由でいいんでしょ。研究観察とか工作とか。」 「そうそう、オレの時は、アリの観察とか、カビの観察とかやったよな、工作ならヤクルトの瓶のロケットとか。」 「えー、何かカッコ悪いよー。」 「友達は何やってんだい。」 「うーん、桂木くんはペットのカメレオンの観察で、正木くんはパソコンでCGを作るって。アキちゃんはハワイで拾った貝殻でモザイク作ってる。」 「なんだか、豪勢ねえ、それにひきかえウチは夏休みどこも行ってないし。」 「なんだよ、お前まで、そういう事で夏休みの宿題が左右されるわけないだろう。」 「でも、柴本くんなんか、尾瀬に行ったときの植物標本だって。」 「ふーん、でも、勝手に植物取ってきちゃいけないんだぞ。そんな宿題で通るのか?ま、とにかく、観察日記は無理だから、お手軽な工作でもやれよ。」 「工作?何やればいいの?」 「自由なんだから、好きなものやればいいだろう。」 「えー、よくわかんないよ。」 「そうねえ、自由で課題ってのはへんよねえ。スケートだって、課題と自由演技は別物だし。」 「そんなこと言ってもしょうがないだろう。じゃあ粘土細工でもやったらどうだ。」 「あなた、今更陶芸は無理よ。」 「何いってんだ、子供のころ、油粘土やゴム粘土でいろんなもん作ったろう。」 「そんなの幼稚園のやることだよう。ボク4年生だよ。」 「そりゃ、作るモノによるだろう、ピングーだってグルミットだってもとは粘土だ。ちゃんとしたキャラクターを作るのは幼稚園じゃできないよ。」 「でも、マジカル頭脳パワーで見たけど、カッコ悪いのばっか。」 「でも、きちんと丁寧に作ればいいかもねえ。それにすれば、ツヨシ。」 「うーん、粘土かあ。」 「お前の宿題だろうが、勝手にしろ。」 でもって、粘土買ってはくるのですが。 「でも、何作っていいのかわかんないよ。」 「それこそ、自由じゃないか。菅野美穂でもキャッツアイでも。」 「あなた! そんなもの学校持っていけるわけないでしょ。」 「そうだ、この間観にいった、もののけ姫のオバケの類は?」 「うーん、オリジナリテイが.....」 「バカ、(ゴツッ)そういう事いってる場合か。」 「痛いよ、お父さん。どういうの作るの?」 「ほら、こんな感じで、タタリ神だ。結構いい線だろ。」 「あなた、うまい。ツヨシ、この線ならイケルんじゃないの?」 「でも、シシ神は作れないよ。粘土じゃ立たないもん。」 「そういう時は、針金で芯を作るんだ。」 「えー、どうやるの、よくわかんないよ。」 「ほら、ちゃんと4つ足で立つだろ。」 「へえー、すごいや、これで、タタリ神とシシ神と山犬だ。」 「あなた、コダマ作ってみたの。どう、こんなの。」 「崩れ加減がいい線いってるぞ。」 「おかあさん、すごいね、ホンモノみたいだ。うん、完成だ。」 「おまえ、このまんま、これ学校へ提出するのか。」 「だって、僕がやっても、これ以上うまく作れないから。」 「そうよ、あなた。」 全部ぐちゃぐちゃにして、最初からやれと言い出したい衝動を、お父さんは必死で抑えたのでした。 |