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ヴェローナビーチ、ロレンス神父宅 「こんばんは、どうも夜分に申し訳有りません。私ロス市警の殺人科の....」 「刑事さん?私がロレンスですが、何か......?」 「いやあ、今回のロミオさんとジュリエットさんの一件、ホントに御愁傷様で。」 「ええ、2人の純粋な至高の愛がもたらした最悪の結末と申しましょうか。」 ![]() 「すでに、プリンス署長に全てお話しましたが。」 「いえ、ちょっとした確認でして。あなたがロミオから、ジュリエットさんとの結婚の決意を聞かれたのはおとといの朝でしたね。ええっとメモが、ここに、あったあった。」 「そうです。前日の舞踏会で知り合って、意気投合したとか。」 「また、随分と思い切りのいい、ロミオさんという青年随分と気が短い。」 「それをおっしゃるのなら、純粋なのです。親ごさんたちの争い事に心を痛めておいででした。」 「はい、確かにロミオさんそのようでした。でも申し上げにくいのですが、ジュリエットさんはそうでもなかった.....」 「それはどういう意味です?失礼な事を言うと.....」 「単刀直入に申しましょう。検死解剖の結果、彼女妊娠してました。4ヶ月です。」 「何ですって、それにジュリエットを解剖した?!」 「まだ、あります。血液からジオチソンが検出されました。これお薬にくわしい神父さんならご存知でしょうが。」 「ジオチソンは堕胎用の内服薬です。正規のルートでは手に入りません。」 「そうです。でも、仮死状態にする薬をジュリエットに渡すことのできたあなたならどうでしょう?もしも、あなたがジュリエットに渡した薬の中にジオチソンが入っていたら?」 「失礼にも程がある。真実はお話したとおりで、神もご存知だ。」 「そう、そこです。よござんすか、この一件の当事者が2人とも死んでしまった今、真実をご存知なのは、あんたと、後は神様だけ...。」 「だとしたら?」 「あなた、プリンス署長の前で証言しました、マンチェアに身を隠していたロミオさんへの手紙が郵便の遅配のせいで間に合わず、ジュリエットさんが死んでない事が伝わらなかったって!」 「そうです、それについては後悔ばかりで.....」 「だが、あなたが実際に送った手紙にはジュリエットさんが死んだとだけあって、仮死の薬のことなんざ、これっぽっちも書かれてなかったんです。遅配のおかげで、手紙はあなたの手元に戻って、もう証拠はない。」 「あなたは一体.....」 「そして、子供の父親はあなたです。まず、堕胎させて、あわよくば2人の心中をでっちあげようとこんなまわりくどい演出をしたんです。大成功でした。」 ![]() 「もし、最初に渡した薬が本当に死に至らしめる毒であれば、ジュリエットさんが検死解剖される恐れがある。だから、あなたは仮死状態にする薬にジオチソンを混ぜたんです。これなら自然死に見えます。そして、蘇生した後、お腹の子供が死んでも警察沙汰にはならない読みです、はい、お見事でした。」 「おお、神よ。この男の無礼な振る舞いを.......」 「ですが、あなた一度に色んな効果をねらいすぎました。ジュリエットさんが自殺をして一安心したお積もりでしょうが、その結果、お腹の子供はそのままです。この意味わかりますか?」 「あ......」 「これが胎児のDNA鑑定書です。父親はあなただ。」 「ああ.....刑事さん、誰が、この事に気付いたのですか?」 「ジュリエットの乳母さんでしてね。あの若くて未来ある2人が自殺をする筈がないって。あたしだってそう思いますよ、2人の写真を見ればね。あなたのシナリオはある意味で完璧でした。でも、あまりにも古風すぎました。」 「でも、あの2人は本当に自ら命を絶ってしまった。」 「そう、あなたとロミオとジュリエットの3人だけがシナリオ通りに動いたんです。しかしそれがあなたの命とりになりました。結果的に2人の純粋さがあなたの罪を暴いたんです。表にプリンス署長がお待ちです。」 この事件が後に戯曲化されまして....... |