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もうひとつの「身代金」

ジャックナイフ
(64512175@people.or.jp)
映画をネタに小話作ってみました。正確には映画を肴にでっちあげたのですが。
ともかくも、「身代金」というお題で、出来上がったのがこれです。

横浜のあるお金持ちのお邸

「もしもし、松本さんのご主人ですか。」
「ええ、松本ですが。」
「お前の息子を預かっている。返して欲しければ1億円用意しろ。」
「何だって! でも、ウチの息子はここにいるぞ。」
「え? そんなばかな。息子を電話に出せ。」
「ホントだってば。ウチの裕之はここでクレヨンしんちゃんを観てるけど。」
「だから、息子の声を聞かせろ!」
「息子って、俺の息子だぞ。おーい、裕之ちょっと来い。」
「オジチャン、コンバンハ。」
「ほら、ウチの裕之だ。出直すか?」
「ありゃ、ホントだ。こうなりゃ同じ事だ。1億円出さなきゃ、この子の命はないぞ。」
「この子って、どこの子だよ。」
「どこの子ったって。ともかく、この子を見殺しにする気か?」
「居直り強盗だね、まるで。もう、警察を呼ぶ。」
「警察を呼べば、この子の命はないぞ。」
「だから、どこの子だよ。」
「この子を見殺しにしたら、あんたが世間から袋叩きだぞ。子供が学校でいじめられるぞ。裕之の身代わりに子供を死なせたって。」
「お前が一番悪いんじゃないか。おまえこそ、子供はいないのか。親はいないのか。モザイクなしでテレビで詫び入れることになってもいいのか。」
「強気になりやがって、ほんとにこの子を殺すぞ。」
「だからさあ、誰の子だよ。俺は認知しないぞ。」
「もういい。細かい段取りは後で電話する。」
「あ、ちょっと待て。これ市内からかけてるのか。」
「だったら何だよ。」
身代金 「電話きると、あんたの電話番号がこっちに出るんだけど。」
「なにぃー。いつの間にそんな仕掛を!!」
「テレビとか新聞見てないの?これだから世事に疎い奴は。」
「じゃあ、電話きれないって事か?」
「いや、そうは言ってないけどね。」
「鬼のようなやつだな。オレはどうすりゃいいんだ。」
「とにかく、子供の親を探す方がいいんじゃないの? ホントの親ならもう少し親身になると思うよ。」
「それも一理あるな。わかった、子供の声聞かせる。」
「おい、裕之ちょっと来い、この声、友達の誰かか?」
「わかんなーい」
「ありゃ、外が騒がしくなったぞ。どういうことだ。」
「多分、警察じゃないか? うちはISDN回線で、もう一本電話あってね。」
「て、事は何か? それ使って警察に電話を....」
「逆探知が間に合ったってことかな?」
「ギャフン」

かくして、NTTのコマーシャルみたいなこの事件の顛末は、広末涼子主演でテレビドラマ化されたのでした。
(完)