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横浜のあるお金持ちのお邸 「もしもし、松本さんのご主人ですか。」 「ええ、松本ですが。」 「お前の息子を預かっている。返して欲しければ1億円用意しろ。」 「何だって! でも、ウチの息子はここにいるぞ。」 「え? そんなばかな。息子を電話に出せ。」 「ホントだってば。ウチの裕之はここでクレヨンしんちゃんを観てるけど。」 「だから、息子の声を聞かせろ!」 「息子って、俺の息子だぞ。おーい、裕之ちょっと来い。」 「オジチャン、コンバンハ。」 「ほら、ウチの裕之だ。出直すか?」 「ありゃ、ホントだ。こうなりゃ同じ事だ。1億円出さなきゃ、この子の命はないぞ。」 「この子って、どこの子だよ。」 「どこの子ったって。ともかく、この子を見殺しにする気か?」 「居直り強盗だね、まるで。もう、警察を呼ぶ。」 「警察を呼べば、この子の命はないぞ。」 「だから、どこの子だよ。」 「この子を見殺しにしたら、あんたが世間から袋叩きだぞ。子供が学校でいじめられるぞ。裕之の身代わりに子供を死なせたって。」 「お前が一番悪いんじゃないか。おまえこそ、子供はいないのか。親はいないのか。モザイクなしでテレビで詫び入れることになってもいいのか。」 「強気になりやがって、ほんとにこの子を殺すぞ。」 「だからさあ、誰の子だよ。俺は認知しないぞ。」 「もういい。細かい段取りは後で電話する。」 「あ、ちょっと待て。これ市内からかけてるのか。」 「だったら何だよ。」 ![]() 「なにぃー。いつの間にそんな仕掛を!!」 「テレビとか新聞見てないの?これだから世事に疎い奴は。」 「じゃあ、電話きれないって事か?」 「いや、そうは言ってないけどね。」 「鬼のようなやつだな。オレはどうすりゃいいんだ。」 「とにかく、子供の親を探す方がいいんじゃないの? ホントの親ならもう少し親身になると思うよ。」 「それも一理あるな。わかった、子供の声聞かせる。」 「おい、裕之ちょっと来い、この声、友達の誰かか?」 「わかんなーい」 「ありゃ、外が騒がしくなったぞ。どういうことだ。」 「多分、警察じゃないか? うちはISDN回線で、もう一本電話あってね。」 「て、事は何か? それ使って警察に電話を....」 「逆探知が間に合ったってことかな?」 「ギャフン」 かくして、NTTのコマーシャルみたいなこの事件の顛末は、広末涼子主演でテレビドラマ化されたのでした。 |