ハート・オブ・ウーマン
What Women Want


2001年1月28日 神奈川 横浜東宝 にて
女性の考えていることが全てわかったら? 私なら不幸だけど。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


ニック(メル・ギブソン)が努める大手広告代理店のクリエイティブ・ディレクターに、ライバル会社から敏腕広告ウーマン、ダーシー(ヘレン・ハント)がやって来ます。これからは女性をターゲットにした広告展開をして行かなくてはという会社の方針です。自宅で女性製品を試していたニックは、ドライヤーで感電してしまい、その日から、彼は、女性の思うことが聞こえるようになってしまいます。仕事のライバルでもあるダーシーの考えていることも聞こえてしまうので、彼女のアイデアを先取りなんてこともできますし、女性心理に疎かったニックにとって、これは天からの贈り物。でも、そんなパワーと関係なく、ニックとダーシーはお互いにひかれあうようになって、話はちょっとだけややこしくなってしまうのでした。

いわゆる、男の中の男と呼ばれる連中は女性の心なんかこれっぽっちもわからない奴ばっかなんですって。なるほど、言われてみれば、そんな気もしますね。そんな一人のニックは、もてるし自信家だし、女性をくどくのもお手のものです。とはいえ、今の購買層は女性ですから、広告マンたるもの、女性心理を呼んで女性市場を制していかねばならない、うーん、ごもっとも。と、そんな状況にあるニックに、女性の考えることがみんな聞こえるようになってきます。最初のうちはパニック状態のニックも、この能力を仕事にフル活用するようになります。女性心理をこれで押さえたというわけです。その上、突然やってきて自分の就くべきポジションを横取りしたダーシーのアイデアも盗めるわけですから、笑いの止まらないニックというわけです。うまくいってない娘との関係もこれで修復できそうな予感です。

確かに女性の気持ちを理解するのは難しいです。だからと言って、女性の思うことが全て声として聞こえてくるのがいいことかというと、私にはどうも不幸な境遇に思えてなりません。だって、相手は自分の心が読めないのですから、相手との関係はフェアじゃないし、バランスが取れませんもの。少なくとも、愛する人とそういう関係になりたくありません。まあ、仕事で役立つ能力ではありますが、周囲にそういう能力のある人がいたら、絶対お近づきになりたくないですもの。でも、この映画は、その能力の是非については深追いはしません。むしろ、いびつな関係から始まったニックとダーシーの恋物語がメインであり、二人がどうやってフェアな関係にたどりつくかを描いているのです。その決着のつけ方はありがちではありますが、一ひねりもありまして、ラストのニックのセリフがなかなかにシャレてます。

メル・ギブソン演じるニックは、前半の軽いキャラクターに比べて、後半二枚目になりすぎるところはあるのですが、重くなりすぎずサラリと演じているところはうまいです。一方の相手役のヘレン・ハントは、登場シーンでのいかにもなキャリアウーマンぶりから、段々と女性としての奥行きが見えてくるあたりで、見事な演技を見せます。その他にも、マリサ・トメイ、アラン・アルダなどが脇で二人をうまく支えました。また、娘を演じたアシュレー・ジョンソンがプックリ体型のいかにも小娘という感じで面白かったです。

この映画の脚本や監督が女性なのですが、その割にはニックに描き方は好意的でして、まるでやな奴という風にはなっていません。これはスターであるメル・ギブソンがキャステイングされた時点で脚本に修正がかかったのかもしれません。やはりギブソンをいけすかない奴にはできなかったのでしょう。ですから、映画と前半と後半で、キャラクターに明確な差がつくはずが、曖昧になってしまったようです。その分、お気楽コメディとしては上々の出来になったとも言えますから、一長一短なのでしょう。でも、前半の主人公のキャラクターとうまく折り合いをつけるマリサ・トメイが、影が薄くなってしまいましたから、折角のトメイがもったいないなという印象も残ってしまいました。今度は、男性の心を読めるヒロインの映画を男性のスタッフで作ってみたらどうなのかな。意外とやな女になっちゃいそうな予感がするのですが。


お薦め度×この題材をロマンティックコメディにまとめたうまさ。
採点★★★☆
(7/10)
脚本監督が女性なのにこの展開は意外です。

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