ウェルカム・トゥ・コリンウッド
Welcome to Collinwood


2003年09月05日 神奈川 川崎チネチッタ3 にて
一攫千金を目指すダメダメな人々の情けない結末って?


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


車泥棒のコジモが留置所の終身刑の男に聞いたビッグな儲け話、そこで自分の情婦に身代わりを探せと告げるのですが、なかなか人材がいなくて伝言ゲームの挙句、金に困った5人の男がつるんでしまいました。リーダー格はボクサー崩れのペロ(サム・ロックウェル)で、その儲け話の中身をコジモから聞き出すことに成功、あるアパートの空き部屋から、隣の金庫室に抜けるポイントがあるとわかります。そこで、準備にとりかかろうとした矢先、空き部屋に誰か引っ越して来ちゃったからさあ大変。そして、コジモはペロを追って脱獄してくるし、果たして、この一攫千金物語はどこへ行き着くのでしょうか。

スティーブン・ソダーバーグとジョージ・クルーニーという「ソラリス」コンビ(「オーシャンズ11」コンビの方がいいかな)がプロデュースし、新人のアンソニー&ジョーのルッソ兄弟が脚本、監督を手がけた犯罪コメディです。時代はそんな昔じゃない頃とタイトルが出るのですが、どうにも不景気な時代のアメリカの地方都市が舞台らしいです。ですから、登場する連中みんな金に困っていてビンボ臭いことこの上なくって、そのメンツに個性的な役者を揃えておかしなリアリティを醸しだしています。女房がムショに入っていて赤ん坊連れのウィリアム・H・メイシー、妹思いなのに堅気になりきれないアイザイア・ワシントン、小汚いジジイのマイケル・ジェッター、どう見てもパっとしないアンドリュー・ダヴォリに、一応中心人物っぽいサム・ロックウェルと、犯罪のプロには程遠いメンツのドタバタが展開します。

このビンボ臭いどよんとした空気は映画全体に漂っていまして、同じ犯罪映画でも「ミニミニ大作戦」のようにドラマが弾むところがありません。もともと、ダメダメな連中の弾まないドタバタを狙っているようで、ルッソ兄弟の演出は、何をやってもうまくいかない展開が徐々にエスカレートしていくさまをトボケた味わいで描いていきます。世の中、思うようにはいかないよねえというお話なんですが、特別なワルでもないけど、甲斐性なしの登場人物には、ささやかに感情移入できてしまいます。一応は、このヤマで人生が変わるということでみんな張り切るのですが、最初から、ダメだなこいつらという気分がプンプンしているのです。冒頭でヨレヨレの登場人物を見せて、そこから時間を遡るという構成なのですが、それでも最後に大逆転を見せてくれるのかという期待もかすかにはありました。でも、やっぱりかなり情けないところに落ち着いてしまうところを人情喜劇として楽しむのが正解のようです。特にクライマックスが一番バカ展開を見せるってのは珍しいかも。

登場人物のダメぶりは丁寧に描かれていまして、達者な演技陣が各々に好演しているのですが、そのメンツに感情移入できないと、ドラマを楽しむ時の視点が定まらなくなってしまうかもしれないです。もし、これを徹底して外野の視点で楽しもうとすると単なるバカの事件にもならないドタバタになってしまうので、物足りなさを感じるかもしれません。このダメダメな連中に共感できた方が、「あー、こいつら何やっとんねん」とツッコミを入れつつ、この映画を楽しむことができると思います。そういう意味では、夢と希望に胸ふくらます子供や若造向けの映画ではありません。人生なんてこんなもんさと達観したいけどできない、老いの二歩手前くらいの中年(特に私のような三流サラリーマン)には、じわっとくるものがあるのではないかと。

とはいえ、せっかくの演技陣を使い損ねた感もありますが、まあ1時間半にタイトにまとめた小品だからという言い訳もできるかもくらいの映画に仕上がっています。映画そのものはトホホな映画ではないんですが、映画観終わったときの印象は「トホホ」なんだよなあ。銀座シネパトスがメイン劇場だというのがふさわしい佳品というべきか。


お薦め度×おもしろうてやがて悲しき、というより、最初からちょっと悲しげ。
採点★★★
(6/10)
設定は面白くて、役者もいい、後もう少しキャラが立てば。

夢inシアター
みてある記