written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
ちょっとハミ出し刑事ユベール(ジャン・レノ)がかつて自分の前から姿を消した恋人ミコの訃報を聞き、日本にやってきます。すると、そこには自分とミコの間に生まれたというユミ(広末涼子)がいました。彼女の口座には何と2億ドルが入っていて、さらに黒服の男がユミの後をつけまわしていたのです。
リュック・ベンソンという人が脚本とプロデュースを手がける映画って「ヤマカシ」「ダンサー」のようなケッタイな映画あり、「TAXI1&2」のような快作もあって、今回の映画も題名からして、ケッタイな映画になっているのではないかという予感がありました。それに日本を舞台にした映画ですからね。異国情緒を前面に出して「フィフス・エレメント」みたいなノリになるのではないかというイヤな予感がありました。しかし、本編は意外とマトモな小品として仕上がっていまして、「TAXI2」のジェラール・クラヴジック監督は、ストレートにそしてコミカルにドラマを展開しています。
脚本がリュック・ベンソンだけにかなりぶっ飛んだ設定になっていまして、かつて、フランスの情報員として日本にいたユベールが、ミコという日本女性と恋に落ちるのですが、突然彼女が姿を消して19年がたっているところから物語は始まります。そして、彼女の訃報を聞いて日本に来てみれば、そこにミコの娘のユミがいたといて、その父親がユベールらしいのです。そこから先は、口より先に手が、手より先に銃が出るというユベールと、キャピキャピハイテンション娘のユミとの交流が描かれていきます。
ジャン・レノは冒頭の登場シーンから、かなりアブない刑事ぶりを見せるのですが、コミカルなキャラクターになっているので、「レオン」のような重い展開にならず、突然娘ができてアタフタするあたりも、サラリと演じています。クラヴジックの演出は、思い入れとかタメの演出はせずに、シーンをテキパキとつないで、1時間35分という、この内容には丁度いい長さにまとめている点を評価したいところです。
広末涼子は、日本語でしゃべるところのいかにも軽そうな女の子の部分と、フランス語で話すシリアスな部分のギャップを頑張ってこなしているという印象でして、ドラマの軽いテンポに合わせたほどほどのシリアス演技が、全体とのバランスをとっていて好印象でした。20歳という設定なんですが、まるで子供みたいに見えるのは、狙った演出なのかもしれません。「レオン」のナタリー・ポートマンが年の割りに大人びて見えたのとは逆に、実際よりも幼く見せたのが印象的でした。
敵は全身黒ずくめのヤクザでして、いかにもマンガチックないでたちではあるのですが、これが結構カッコ良くて、ジャン・レノとのゴルフ場でのアクションなどなかなか迫力がありまして、香港映画のその他大勢よりは、強そうに見えるのがマルです。
日本が舞台の映画で、登場人物が皆フランス語を流暢に話すのは、フランス映画だから当たり前ですし、そこで描かれる日本も妙にデフォルメしたところは少なくて、突然、京都の清水寺が出てくるところも、おかしな印象は与えません。まあ、なぜ京都に来て、そこで何するのかというのは、ムチャクチャなご都合展開なんですが、私的には許容範囲でした。ラストは予定調和のハッピーエンドで、妙なカルチャーギャップもなく、自然な親子の情愛として、お話を終わらせるあたりは、ヒネリはないですが、娯楽映画としてはきれいにまとまったというところです。
お薦め度 | ×△○◎ | 小品ながらライトにまとめて後味良好。 |
採点 | ★★★ (6/10) | 広末涼子健闘してます。律儀な小悪魔って感じかな。 |
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