written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
雑誌の表紙にもなっちゃうセレブな会社社長ジョージ(ヒュー・グラント)は、使える法律顧問を探しておりました。公民館の保存の陳情にきたルーシー(サンドラ・ブロック)の力量を認めて、彼女を法律顧問として雇うことにします。このジョージが典型ダメ男で、公私共にルーシーに相談しないと決められないような奴。すっかり、彼のおもり役にさせられて、嫌気のさしたルーシーは、ジョージに2週間後の退職を宣言。彼女の後釜を探すことになるのですが、せいせいした筈のルーシーの心が微妙に揺らぎ始めるのです。
いわゆるラブコメというジャンルに入る映画です。男と女の出会いがあって、いさかいがあって、最後には結ばれる、これが別れのまま終わったりどっちかが死んじゃったりするのは、ドラマとしてはありですが、ラブコメとして運んできた映画の結末としてはふさわしくありません。この映画は、そのラブコメの定番を押さえて、かつ面白く作ってある一品です。
男の方は大会社の社長でしかも二枚目のプレイボーイ、女の方はリベラル派の弁護士、社会的には敵対する立場の二人が、出会い、親しくなって、その後、ささやかな紆余曲折を経て、ハッピーエンド、と、文句なしのラブコメの定番となります。さらに、笑いの部分もしっかりと押さえてありまし、マーク・ローレンスの脚本・演出は細かい描写を積み重ねて、きちんと二人のキャラクターと感情の流れを描ききっています。二人が恋愛感情以前の関係ながら、お互いにいい友人であったり、二人の食事シーンで長い連れ合いみたいにお互いの好き嫌いを取り合うあたりの細やかさが光りました。
ラブストーリーの見せ方としては、クライマックス直前でドレスアップしたヒロインを見せておいて、クライマックスでは、やっぱりダサダサの格好にさせたあたりがうまいと思いましたし、何よりも、主人公二人が実は仕事のできる切れ者の筈なのに、画面でそれを一切見せなかったところが見事でした。特に、ジョージはセレブでエリートで、それなりのモノを持った人間の筈なのに、ダメな男の部分しか見せないことによって、親近感を感じることのできるキャラになっているのです。これは、ヒュー・グラントのうまさによるところも大きく、小市民にとってはまるで別世界の出来事である恋愛ドラマを自分の背丈で楽しむことができました。
また、このドラマが巧妙だと思ったのは、いつから恋愛感情が芽生えたのかをはっきりと見せなかったことがあります。ヒロインの感情の揺らめきは、彼への想いというよりは、後任女性弁護士への嫉妬が引き金になっているようですし、ジョージが彼女に恋愛感情を抱くようになったきっかけもはっきりしてなくて、母親のようなの相談役(ヒロインのこと)への依存心が恋愛感情に変わったようにも見えるのですよ。果たして、こんなすれ違いの両想いが最終的にうまく行くのかどうかは、まだ一波乱も二波乱もありそうな予感もするのですが、映画はとにかくお互いが好きを認め合ったところでエンディングとなります。実際の男女関係からすればハッピーエンドかも?っていうくらいの結末なんですが、それ以上突っ込まずに、「これでいいのだ」という結末に丸め込むあたりが、ラブコメの真骨頂なのだと思った次第です。そして、この映画は、その決着をつけることに成功していると思います。こんなこと書いてる私も、このラストを楽しみましたし、ヒュー・グラントはうまくダメぶりだけを見せてるなあって感心し、サンドラ・ブロックは自分の見せ方をよく心得てると思いました。娯楽映画としては、かなりいい線いってます。
単なるコメディとしても、間で笑いを取ったり、会話のキャッチボールを見せたりして、こじゃれた恋愛マニュアルの趣きもありました。ベテラン、ラズロ・コヴァックスの撮影がニューヨークのロケをうまく生かした絵作りをしています。
お薦め度 | ×△○◎ | 定番以上を狙わない手堅さが映画としてマル。 |
採点 | ★★★☆ (7/10) | でもよく見ると仕事できるもん同士の恋愛だから、うらやましいんだよな。 |
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