トゥーム・レイダー
Tomb Raider


2000年10月08日 神奈川 横浜東宝 にて
ゲームヒロイン、ララ・クロフトが秘宝を巡って大暴れ。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


イギリス貴族の礼嬢ララ・クロフト(アンジェリーナ・ジョリー)はお宝ハンターとしても有名なお方。パソコンオタクの相棒と執事を従えて、今日もロボット相手に戦闘訓練の日々です。惑星直列が近づいてきたある日、ララの家の隠し部屋で謎の時計が動き出しました。その時計の中にあった星座盤こそ、世界を思うがままにする聖なるトライアングルへの道標だったのです。謎の組織イルミナティの連中がその星座盤を奪いにやってきます。ララとイルミナティの間で、世界を思いのままにする超お宝聖なるトライアングルの争奪戦が始まります。果たして世界の覇者となるのは誰?

もともとは、ゲームのキャラクターだったララ・クロフトを、生身の人間で映画化したということらしいのですが、もとのゲームを知らない私にとっては、全くおニューの映画となったのですが、やたらと頭がよくって強いララ・クロフトをアンジェリーナ・ジョリーが演じて、ワイルドでかっこいいヒロインがびしっと決まっていました。もともとのゲームでもこういうキャラだったのかなあ。

展開はアクションに次ぐアクション、見せ場に次ぐ見せ場という感じで、結構凝ったストーリーはあるのですが、それを説明する間もなくドンパチシーンになってしまいます。要は、それを手に入れることができると世界を思うがままにできるお宝があって、それを惑星直列の時までに手に入れなきゃならないというお話です。ララの父親がその謎をとくカギを持っていたもので、彼女もお宝争奪戦に巻き込まれてしまうのです。さらにララの父親の過去も絡んできて、そのあたりのドラマをサイモン・ウェスト監督はきちんと描こうとした節はあるのですが、視覚的な見せ場に引っ張られすぎたせいか、それとも、ヒロインのキャラクターが強烈だったのか、ドラマ部分はどっかへすっ飛んでしまったようです。

ただ、見せ場や設定の趣向がどこかで見たようなのが多いのは気になりました。気がついただけで「バットマン」「レイダース」「シンドバッド黄金の航海」「ハムナプトラ」「ハドソンホーク」といった映画を思い出してしまいました。まあ、ゲームなら、映画の趣向をパクったって構わないと思うのですが、それをもう一度映画に引っ張ってきた時には、そこにオリジナリティを感じさせてくれないと映画としては今イチということになってしまいます。アクションシーンや視覚効果はそうとう手間とお金がかかっていまして、それを見るだけでも映画としてはモトは取れるのですが、いかにもゲーム感覚で、ドラマ的な興奮が乏しいので、あまりお金をかけたほどの効果が上がっていないように思えてしまいました。

映画というのは確かに見せ場をつなげていく作り方もできるのですが、最近の映画は予算が潤沢になりすぎたのか、見せ場から先に決めて、ドラマを後付けしたような映画が出てきています。この作品でも、ロボットとか動く石像とか見せ場を構成する連中が登場するのですが、物語としての必然性は何もありません。それ自身はすごいお金と技術がかかっていそうなんですが、もしドラマ主体でものを作ったら無駄使いということで却下されそうな連中なんです。人形アニメーションで有名なレイ・ハリーハウゼンが、晩年の作品ではキャラを出すためだけの映画になってしまっていたのを思いだしてしまいました。それをハリウッド映画ならでは贅沢な作りと見ることもできますが、まず脚本から始まって物語が肉付けされていくという作り方になっていないように見えるのは、あまりうれしくありません。折角の見せ場もドラマとして盛り上げてくれれば、もっと印象に残る名場面になり得たのかもしれないのに、勿体ないような気がするのです。

アンジェリーナ・ジョリーがネコと獅子の両方の顔を持つヒロインをカッコよく演じて決まっているのですが、彼女以外の脇役がまるで印象に残りません。特に悪役側はメンツが不足でして、単純な設定、直線的展開の映画なのですから、悪役は一目で物凄く悪い奴だとわかるようにして欲しいものだと思いました。ヒロインは登場してすぐに、強烈な印象で観客のハートを掴むのに、敵役のみなさんが貫禄もスゴミも知恵もなさそうでは、ドラマとして盛り上がらないのです。これも、ゲームから派生した映画の限界なのかなあ。

世界各地へロケした映像は見物ですし、グレアム・レベルの音楽もアクションと神秘性の両立に成功してますし、この題材としては、サイモン・ウェストの演出も健闘していると思います。でも、これでは、映画はゲームに勝てないという印象を与えてしまうのは、基本的な作り方に何か問題があるのかもしれません。これなら、実写のアンジェリーナ・ジョリーをとり込んだゲームの方がきっと面白いだろうと思います。ステージクリア毎にシャワーシーンのサービスカット付きなんてやられたらかなり頑張れそうな気がしますもの。


お薦め度×とにかくヒロインがかっこよくて見た目で勝負。
採点★★★
(6/10)
見せ場をつないだ以上の面白さがないと映画としてどうかな。

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