ザ・リング
The Ring


2002年11月10日 神奈川 横浜ニューテアトル にて
観たら死ぬビデオの謎に女性記者が挑む。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


新聞記者のレイチェル(ナオミ・ワッツ)の姪が奇怪な死に方をします。彼女は見たら七日後に死ぬというビデオを観てしまったらしいのです。そして、同じビデオを観た彼女の友人も同じ時刻に奇怪な死に方をしていました。そして、レイチェルは姪たちが1週間前に出かけたロッジで気になるビデオテープを見つけます。その中身は不気味なイメージ映像の羅列です。それを見終えた途端、電話がなり、レイチェルに「あと七日」と告げるのです。このビデオにはサマラという少女の怨念がこもっているらしいのです。果たして、レイチェルはこの呪いのビデオから逃れることができるのでしょうか。

1998年の「リング」という日本映画は、ホラーでありながら大ヒットし、その後、日本でもホラー映画がメジャーに作られるようになりました。そして、今回はそのハリウッド版映画のリメイクです。日本の「リング」は都市伝説、ビデオ、怪談という要素をうまくまとめてマジに怖い映画になっていました。ここに目をつけたのが、ドリームワークスでして、鈴木光司の原作よりも、映画版「リング」を丁寧にリメイクしています。「リング」では、恐怖の存在として貞子という女の子が登場しますが、この映画では、やはり同様の存在としてのサマラという少女が登場し、彼女の過去を主人公が追うという構成になっています。

私は、映画版「リング」を既に観ていたのですが、今回のリメイクの忠実な再現ぶりには、冒頭から驚かされました。女の子二人のお泊りシーンから、雰囲気、空間の切り取り方まで日本版にそっくりでして、オリジナルにかなり忠実に作ろうとしている意図が感じられました。アーレン・クルーガーの脚本、ゴア・ヴァービンスキーの演出とも、映画版「リング」の雰囲気をそのまま伝えようとして、妙な小細工をあえて排除しているようです。また、オリジナルにあったショック演出も極力排して、静のテンションを維持することに成功しています。オープニングのお泊りシーンや葬儀のシーン、そしてヒロインの住むアパートのたたずまいなどは、ホントにこれアメリカ映画なの?と思うくらいに、日本版の感覚と一致していてビックリしました。

日本版では都市伝説としての「呪いのビデオ」から話が始まるのですが、この作品では、眠っていた呪いのビデオが目を覚ましたような描き方をしていまして、因縁話としての怪談の要素が強まりました。でも、そもそもの発端である邪悪な存在が不幸な少女であるという設定は残していまして、そこにシンパシーを寄せた作りにしていて、ラストでひっくり返すという仕掛けは、「リング」「リング2」「リング0」を総括したような印象があります。成り行きで続編へ展開していった「リング」に比べると、続編への布石も破綻のないものとなっているように思えますし、これは後から作る方が有利なのでしょう。とはいえ、ラストをやはり都市伝説でまとめた「リング」に比べると、こっちの方が直接的ですから、拡散する恐怖というのが伝わってくるところまで至らなかったのはちょっと残念でした。

映画として一番怖いシーンをラストに持ってくるというのは、最近の映画では珍しいです。いわゆるオチとしてのショックシーンはありますが、そういうオマケでなく、ドラマの本筋として、ホラーシーンを持ってきて、恐怖の余韻で映画を終わらせるというのも、考えてみれば意外と新鮮です。

とはいえ、アメリカと日本の違いとしては、邪悪な存在に対するシンパシーの寄せ方が大きいようです。何だかんだと言っても、貞子はかわいそうな境遇で、それゆえに絶対的な悪という存在になってしまったという見せ方を日本版ではしていました。一方、サマラは一見かわいそうなんだけど、実はものすごい邪悪な存在だという、少女の姿を借りた悪魔みたいな見せ方なんです。善悪二元論というのも大げさですが、アメリカでは怨霊というのは似合わないのかもしれません。

役者陣では、ナオミ・ワッツが大変魅力的でして、ヒロインに関しては日本版よりもこっちに軍配を上げます。また、ブライアン・コックスとかジェーン・アレクサンダーといったベテラン陣も好演でして、つかみどころのないサマラというキャラクターの造形に一役買っています。ハンズ・ツィマーによる音楽は、シンセサイザーによるドヨーンという音響効果と静かな悲しみに満ちたテーマ曲とを使い分けていまして、ここでも日本の「リング」シリーズの川井憲次と尾形真一郎の音を集大成したような音にまとめています。


お薦め度×オリジナルにかなり忠実、そしてかなり怖い。
採点★★★☆
(7/10)
静かな怖さを運んでくる演出のうまさがマル。

夢inシアター
みてある記