ファイナル・レジェンド
The Order


2002年06月01日 東京 銀座シネパトス2 にて
ヴァン・ダム主演の冒険活劇、でも予算は厳しいみたい。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


美術品専門の怪盗ルーディ(ジャン・クロード・ヴァン・ダム)の父親オスカーはマトモな考古学者です。ところが、その父親がイスラエルで消息を絶ちます。オスカーは、十字軍の時代に出来上がった教団オーダーの教典を見つけ出したのですが、それがどうやら何者かに狙われたようなのです。テルアビブに乗り込んだルーディを出迎えた父の友人は謎の二人組みに殺され、警察はルーディをアメリカへ送り返そうとします。一方、友人からもらったカギで、ルーディは地図とレポートを手に入れます。どうやら、オーダーの内部の過激派が何か企んでいるようなのです。ルーディは婦人警官ダリアの協力を得て事の真相に迫ろうとします。果たして父親は無事なのでしょうか。

ジャン・クロード・ヴァン・ダムの映画がまだまだコンスタントに作られているようで、この映画はヴァン・ダム版ハムナプトラというのが売りみたいです。とはいえ、あんなA級のバジェットではなく、カーチェイスとヴァン・ダムのアクションがメインの作品です。でもB級と呼ばれる映画でも、前作の「レプリカント」のように丁寧なドラマとアクションの積み重ねで面白い映画に仕上がっているものもあり、雰囲気と見せ方の迫力でそれなりの映画としてまとまっていた「レジョネア・戦場の狼たち」といったものもあり、低予算だからといって必ずしもつまらないわけではありません。さて、今回は、十字軍から話が始まり、タイトルバックの空撮もスケールの大きさを感じさせはするのですが、これが全編を貫くまでには至らないというか、最初から安い展開が読めるという感じなんですよ。

まずは、オデッサでのお宝を盗み出すサスペンスが即アクションに切り替わるんですが、これがどうにも決まらないのです。「レプリカント」のリンゴ・ラムはカットを丁寧に割り、きちんと押さえのカットも入れてアクションをきちんと見せる努力をしていたのですが、今回は寄りのショットをつないだだけなので、誰がどうなってるのかよくわからないカットが多いのです。よくわからない割にはスローモーションが多いのもイライラさせられましたけど、絵が最初からビデオソフトを意識したような感じなんです。シェルドン・レティックという監督は、かつて初期のヴァン・ダムの作品を手がけた人だそうですが、単に見せ場もどきをダラダラとつないだという印象でして、ドラマとしてのメリハリをつけるには至りませんでした。今は、体技を見せ場にするのであれば、CGやスタントマンでないことをどうやってお客に納得させるかというのが、大変重要なはずなんですが、そのあたりも大雑把ですし、カーチェイスも通りがかりのものを、何でもかんでも破壊するので、タダの迷惑暴走族にしか見えないのです。

映画のお話としては、父親失踪から、それを追ってイスラエル入りした主人公に謎の追っ手が迫ってくるわ、警察に追われるようになるわという巻きこまれアクションの展開となっていますが、その巻きこまれ方がかなり強引でして、脚本は粗っぽい出来のようで、演出でその隙間を埋めるにも至っていないようです。ご都合主義というのは、娯楽映画としてはあっても仕方ないと思いますし、ダラダラと説明を並べるよりは、その方が映画の面白さが増すこともあります。でも、映画を観ている最中は、観客にそれと悟られないくらいにテンポよくやってくれないと、娯楽映画としては及第点にはならないでしょう。この映画は、なぜどうして?を説明しきれていないという印象でした。

とはいえ、爆破シーンなどもあり、大量殺人阻止がクライマックスにはなっており、定番の最低ラインは押さえているので、観ている最中は退屈しないようにはなっています。また、ブルガリア交響楽団を鳴らしたピノ・ドナジオの音楽が、こんな映画に勿体ないような、きめの細かい音作りをしています。ヴァン・ダム映画、次はまた、リンゴ・ラムと組むようですので、そっちに期待といったところでしょうか。


お薦め度×こういうB級アクションを暖かい目で観て頂ける方に。
採点★★☆
(5/10)
とりあえず一通り揃ってます、後は音楽でカバーか。

夢inシアター
みてある記