ハムナプトラ2
The Mummy Returns


2001年06月30日 東京 新宿プラザ にて
徹底的に見せ場をつないだファンタジックな大活劇。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


前作が縁で結婚したリック(ブランダン・フレイザー)とイブリン(レイチェル・ワイス)は、子供が生まれてからも、せっせと古墳探しをしています。そんなある時、伝説のスコーピオン・キングの存在を証明する腕輪を手に入れます。彼はかつて邪神アヌビスの兵士を得て、砂漠を暴れまわった男で、彼を倒したものは、世界最強と言われるアヌビスの兵士を得ることができるのです。一方、エジプトでは、リックにより封じ込まれていたイムホテップが甦ります。どうやら、イムホテップは、スコーピオン・キングを倒して、アヌビスの兵士を得て、世界を思うようにしようと企んでいるのです。果たしてイムホテップの陰謀を阻止することができるのか。そして、スコーピオンキングを倒すことができるのか。

前作は、エジプトのミイラが甦るというお話だったのですが、今回はそれよりスケールアップして、スコーピオン・キングなる伝説の男を登場させ、その復活を企むイムホテップという、二重の物語にして、手の込んだ展開を見せます。しかし、展開としては徹底的に見せ場をつないだと言ってよく、オープニングのスコーピオン・キングの伝説から、スペクタクルな見せ場になっており、主人公たちの登場シーンでは、遺跡の屋台崩しを見せたり、さらにロンドンに話が移ってからは、人間、ミイラ入り乱れてのチャンバラに、2階建てバスのカーアクションと、もう見せ場でストーリーを語ってしまおうと言わんばかりのサービスぶりで、脚本・監督のスティーブン・ソマーズは観客を一瞬たりとも退屈させまいと知恵を絞ったいます。

特に感心したのは、中盤までをロードムービーの展開にしたことで、移動の合間にストーリー説明をしてしまい、到着先で一気にドラマをまとめてしまうという構成は見事でした。何しろ、今回はリックとイブリンの因縁話から、イムホテップとその恋人の時間を超えた愛に、スコーピオン・キングの復活という相当欲張った設定になっているもので、これをじっくり説明していると、ドラマの流れが滞ってしまいます。そこをテキパキとさばいたソマーズの手腕は評価されてよいと思います。

視覚的な仕掛けでは、CGをフル活用したと思われる群衆シーンにさらに敵味方入り乱れての合戦シーンが素晴らしい効果を上げています。昔は遠景の人間はリアルなマット画で描かれていて、それはそれで見事な効果を上げていたのですが、CGを使うことで、遠景の人間も動き出すようになっちゃいましたから、技術の進歩には目を見張るものがあります。

ともあれ、ラストまで飽きさせずに一気に引っ張って行く映画ですから、やや疲れる映画でもあるのですが、それは、遊園地のジェットコースターのような刺激アトラクションに乗った後のような感じです。娯楽としてはそれで十分モトが取れる映画なのですが、劇場を後にした時、何か物足りなさも残ってしまいました。面白い映画を観たなあという後味には、何かが足りないという感じなのです。見せ場や興奮度では他の映画に比べて断然優っているのですが、何かこう前作よりも足りないものを感じてしまいました。

その理由はいくつか挙げられると思います。まず、主人公への感情移入度が小さいということ、前作では、きちんとキャラクター説明があった主人公も、今回は続編だからということか、もうあらかじめのお約束として、リックもイブリンも登場します。また、今回のドラマの事実上の主人公がイムホテップだとわかるまでに時間がかかること、そして、スコーピオン・キングの扱いがあまりよくないことなどが挙げられます。ソマーズの脚本、演出は、観客に考えるヒマを与えずに見せ場で興奮を誘うという点においては見事なのですが、ドラマとしての潤いを欠いたという印象でしょうか。普段、こういうジャンルの映画で中盤、ドラマの流れがもたつくとイライラして自分ですが、そのもたつきの部分がドラマの潤いになっていたということに気付かせてくれる映画になりました。やはり、ドラマの流れを崩しても、主人公や脇役のキャラをきちんと説明しきらないと、観てる間は楽しくても、1本の映画としての後味を残す事が難しいのでしょう。キャラをうまく立たせるということでは「ザ・グリード」で見事な手腕を見せたソマーズにしては、今回はちょっと見せ場サービスに目がいきすぎたという印象でした。

物語がそういう展開なので、今回は役者の見せ場があまりなく、イギリスから呼んだレイチェル・ワイスやジョン・ハナといった達者な役者ももったいないような使われ方をしています。全体的にRPGを観ているような気分になる展開なのですが、ラスト近くに見せる奇蹟はかなりやりすぎという感じで、映画としての満腹感がないのが今一つということになってしまいました。


お薦め度×大画面でいい音響の劇場で観て大満足。
採点★★★
(6/10)
映画を観たっていう満腹感が足りないんだよなあ。

夢inシアター
みてある記