地獄の変異
The Cave


2000年10月14日 東京 銀座シネパトス3 にて
洞穴探検隊が世にも恐ろしい怪物に遭遇する


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


ルーマニアの教会の跡から、地下の大洞窟が発見されました。巨大な水をたたえた鍾乳洞です。ニコライ博士は、プロのダイバーチームを呼んで、内部調査を行うことにします。そして、ジャック(コール・ハウザー)をリーダーとするチームが召集され、博士を含む一行は洞窟調査を開始します。しかし、先行隊の一人が行方不明になり、その後も何者かがこの洞窟にいるらしいことがわかってきます。人間大の怪物、それは以前に洞窟に閉じ込められていた人間が寄生虫によって変化した姿だったのです。襲ってくる怪物に犠牲者は増えていきます。果たして一行は無事に地表に帰りつくことができるのでしょうか。

オープニングはルーマニアの山々の雪に覆われた風景でして、なかなかいい雰囲気で始まります。いわゆる秘境ものっぽい感じは、予告編の川口浩探検隊の雰囲気に近いものがありました。物語が始まってからも、その期待は裏切られませんで、怪物以外にも、地下で脱色したモグラやらサソリ、そしてウナギもどきなどが探検隊の前に現れますし、そして、お約束の探検隊内の内輪揉めもあります。まず、何キロもアクアラングで潜った先にベースキャンプを張り、さらにそこから水中を移動しながら調査するというハードな探検という設定でして、そこから、映画は洞窟の中だけで展開していきます。

「マトリックス」の第二班監督だったというブルース・ハントの演出は恐怖をあおるより、活劇風の演出を心がけているようで、本当なら真っ暗な洞窟内をかなり明るく見せて、テンポよくわかりやすい展開になっています。水中シーンもリアルな迫力がありましたし、特に中盤、洞窟内でロッククライミングの見せ場を作るなど、洞窟内だけが舞台という設定でも様々な工夫を凝らした後が見られます。ただし、その割には、半人間の怪物がなかなか全体像を見せず、かつ見せたあともそれほどのインパクトを持ってなかったというところでしょうか。「ゴジラ」「インプラント」「サイレントヒル」などどうもB級モンスター屋のイメージがあるパトリック・タトポロスによるクリーチャーは、ガーゴイルの首にエイリアンをくっつけたようなモンスターでして、クイックショットで見せる演出はOKなんですが、その怪物に見得を切らせるタイミングがあってもよいと思いました。

こういうゲテモノ映画は最近は少なくなってきてまして、あってもグロを強調した血みどろモノだったり、やたらビックリさせるだけの刺激中心の映画だったりします。この映画は、B級のセンスではあっても、モンスター映画の王道を押さえていまして、また、洞窟のシーンも美しく撮られていて、ビンボ臭さのない娯楽映画としてきちんとまとまっているところが好感が持てました。ラストで不気味な余韻を残すというのも定番ですが、きちんとやってますし、それをショック演出ではなく、じわじわと来る不気味な余韻で見せるあたりのセンスは好きです。何年か前に観た「ジーパーズ・クリーパース」と似た拾い物感のある映画でした。(「ジーパーズ・クリーパーズ」の方はもっと生理的に気色悪い刺激的な映画でしたけど。)

演技陣はメジャーな人はいないのですが、それでもコール・ハウザーやモリス・チェスナットといった面々がタイプキャラを好演しています。お久しぶりパイパー・ペラーボも殺され要員かと思ったらちゃんと彼女の見せ場が用意されてて、一番インパクトのある役どころでした。ジョニー・クリメックとラインホルト・ハイルによる音楽はオーソドックスなホラー音楽ですが、手堅い音作りは今後に期待したいです。

また、本作は、予告編が傑作でして、昔の川口浩探検隊のパロディで、やたらと思わせぶりな字幕と大仰なナレーションで大いに期待させるものでした。そして、最近のゲテモノホラーにしては、R15でも、PG12でもなく、誰でも観て大丈夫なレベルの映画になっています。


お薦め度×ツボを押えたモンスターもの、好きな人にはタマラン
採点★★★☆
(7/10)
わかりやすい、やりすぎない、安っぽく見せないってところが買い

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