ボーン・コレクター
The Bone Collecter


2000年04月23日 神奈川 平塚シネプレックス2 にて
全身不随のデンゼル・ワシントンが連続殺人鬼に挑む。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


鉄道線路の近くの地面から人間の手が出ています。通報を受けたパトロール警官アメリア(アンジェリーナ・ジョリー)は列車を止めて証拠を押さえたということを評価され、捜査担当のリンカーン(デンゼル・ワシントン)から協力を依頼されます。リンカーンは捜査中の事故で全身不随で動かせるのは肩から上と指一本だけ。そんな彼はアメリアに自分の手足となって欲しいようです。彼は、現場に故意に残された多数の遺留品から、犯人が警察に挑戦していること、次の犯罪が起こることを予見します。案の定、次の事件が起こるのですが、果たしてリンカーンとアメリアは犯人にどこまで迫ることができるのでしょうか。

猟奇連続殺人というと「セブン」「コピーキャット」といった作品が思い浮かぶのですが、今回は、犯人の異常性よりも、主人公側の設定で見せる作品になっています。優秀な捜査官のリンカーンは事故で全身不随で、時々発作が起こり、最悪の場合植物人間になることを覚悟しなければならない身の上です。植物人間になるのなら、その前に死にたいと考えている彼の前に、連続殺人が起こるのです。そして、アメリアというパトロール警官の手腕に目をつけた彼は、彼女を強引に捜査に協力させます。

中盤は、リンカーンが現場調査に、アメリアを自分の手足として使うという展開がメインとなります。無線を使って、現場に一番に入らせて、惨殺死体の検分をさせるあたりは、私から見ると、ほとんどイジメかSMの世界なのです。フィリップ・ノイスの演出は、ミステリー部分より、こっちをじっくりと見せているのですが、どっかで見たようなと思ったら、シャロン・ストーンの「硝子の塔」でも、ミステリーでありながらヒロイン苛めを前面に出していました。そして、ミステリーの展開部分は一気に見せるという部分も同じです。

今回の連続殺人鬼は、被害者なんて誰でもよくって、単に自己顕示だけが目的みたいです。完全に殺人を犯すことだけが目的みたいなのです。そして、リンカーンと犯人の間でゲームのような展開になってきます。うーん、人が残酷に殺されているのと、ゲーム感覚のミスマッチは、見ていて釈然としないものがあります。「セブン」でも思ったのですが、追う者と追われる者の間の距離が縮まれば縮まるほど、被害者はやりきれないなという気がするのです。ラスト近くで犯人の真の目的がわかってくるのですが、どうにも胸糞が悪くような動機なんですよ、これも。さらにラスト近くで突発的に追加殺人が発生するのも、何だか不愉快でして、なんでここで急に成り行き殺人になるんだ、まるで打ち切りドラマの最終回みたいじゃないか、ここでこの人が死ぬ必然性はないだろうって突っ込み入れたくなりました。これがエピローグのハッピーエンドにまとめられると、不愉快極まりないままで終わる「セブン」の方が作りとしてはドラマとしてまっとうなんじゃないかって気がします。

犯人の遺留品はパズルのピースとなって、次の殺人を示唆したり、連続殺人のモトネタを示していたりするのです。これって、リアルなのかなあ、ほとんど「聖書の暗号」みたいなもので、単なる後付けの理屈のような気がします。きっちりとシナリオを組んでヒントを散りばめないと、捜査側との知恵比べなんて成立しないと思うのですが、そんなゲームをホントにやってるのかなあ、それの道具に人殺しているんだったら、とんでもないムカつく犯人です。

デンゼル・ワシントンは、肩から上だけの演技で頑張っています。また、アンジェリーナ・ジョリーは段々強くなっていくヒロインを熱演していまして、気丈さと弱さをうまく見せて、魅力的なキャラクターになっています。脇役ではリンカーンの部下の刑事たちを演じた、ルイス・ガズマン、エド・オニールが渋く光っています。また、主人公の看護婦を演じたクイーン・ラティファが好感の持てるキャラが大変印象的でして、捜査をテキパキと指示するリンカーンを見守るカットが何度も登場するあたりがいい感じです。


お薦め度×謎解きよりヒロイン苛めで盛り上がり。
採点★★★☆
(7/10)
サスペンスよりも、ヒロインの頑張りに★一つオマケ。

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