written by ジャックナイフ E-mail:64512175@people.or.jp
1994年、映画学校の学生3人がバーキッツビルの森で行方不明となり、後日撮影されたフィルム、ビデオが発見されました。その中を見てみれば、彼らはその森に伝わる魔女伝説のドキュメンタリーフィルムを撮ろうとしていたようです。それほど大きくない森の中で伝説の場所を撮影し終えた彼らですが、夜中に不気味な音や人の声を聞きます。これはヤバいと逃げ出そうとすると道に迷ってしまい、いよいよ得体の知れないものが彼らの身近にまで迫ってきているようなのです。一体、3人の身に起こった出来事とは?
制作費3万ドルとか、社会現象までになったとか評判の高さは知れ渡っていました。ビデオカメラに向って「ごめんなさい、私のせいだわ」と泣きながらつぶやく女性のアップのみの予告編のも結構そそられるものがありました。これはひょっとしてホントに怖い映画かもしれないという期待もあったのですが、実物を観てみると、これどっかでみたようなという気分になってしまいました。
オープニングは主人公3人が出かけるところからで、登場人物の誰か一人が必ずカメラを持っているという設定で、楽しい撮影旅行気分から映画は始まります。取材先の町に入ってから、町の人にブレア・ウィッチ伝説のインタビューシーンを撮ります。映画にするつもりの部分は16ミリフィルムで、そして、日常記録はデジカメという設定がリアルです。監督のヘザーは勝気で後二人の男性陣を指揮下に置こうとするタイプ。カメラマンにジョシュはゴーイング・マイ・ウェイのアウトロー。録音係のマイクは軽いお調子ものっぽいけど悪い奴じゃなさそう。そんな3人がいよいよ森の中の伝説の場所へと向っていくのです。
昔、日本テレビでやっていた川口浩の探検隊シリーズのノリと言っていいでしょう。そして、メンバーのキャラクターがはっきりしていて、メンバー間の葛藤が描かれるあたりは、「電波少年」か「ウリナリ」を思わせます。なるほど、どこかで観たことがあると思ったら、テレビでよくある仕掛けだったわけです。その怪奇版だと、目新しいのかと思えば、「トゥナイト」の心霊スポットツアーでそういうネタにも見覚えがあります。とはいえ、こちらはお金をとって観る映画の分、仕掛けと怖さのクオリティはアップしています。
不気味な事件が次々に起こり、その恐怖と空腹と疲労から、3人は段々と仲たがいをはじめてしまいます。それでもカメラを回しつづけているといるというのは、ある種のお約束なのですが、このじわじわとくる恐怖にうまく乗れるとそのあたりの細かいことは気にならなくなり、本気で恐怖の真っ只中に身を置いてる気分になってきます。この臨場感は映画館の闇ならではで、テレビ画面では味わえないものです。手持ちデジカムのぶれは映画館の大スクリーンでは恐怖を増幅させます。
この映画はとにかく低予算で作ったあと、インターネットに仕掛けて、虚実ないまぜの曖昧な状態をわざと作り出したらこれが当たったようです。もともとプラクティカル・ジョークのレベルのものが世紀末の不安とうまく結びついたといったところでしょうか。ロケ地には観光客が怖いもの見たさに押し寄せていい迷惑みたいですが、ウソだヤラセだとネタばらしした後でも、その「ウソだヤラセだ」を信用しないで、これをホンモノと思う人もいるらしいですから、冗談もほどほどにしろということなのでしょう。
また、インターネットだけでなく、解説本みたいのも出てきたそうで、さらにウソとホントの境界を曖昧にしているようです。私はこの映画を1本の映画としてだけ観ようとしていますから、別ルートの予備知識を仕入れる予定はないのですが、そういう予備情報があると余計目に遊べるのかもしれません。この映画のうまいところは、行方不明の3人の残したフィルム(デジカメ映像含む)のみで、それ以上の一切の解釈を加えずに映画にしてしまったというところです。ですから、各々のシーンに登場する恐怖のアイテムに何の説明も加えられていません。「これは一体何なんだ」というオンパレードなのです。そして、観客の恐怖と好奇心を目一杯煽っておいて、そのピークで、映画はブツっと終わってしまうのです。何だか気になる、すっきりしない胸やけ気分の観客に、さあさあ、この本にあの映画の秘密が書いてある、1冊1000円なら安いもんだという商売です。最初からそれを狙ったとは思えませんが、「安上がりに作る恐怖」から始まった映画作りが思わぬメディアミックス戦略を生み出したということでしょう。でも、こういうのは、日本でもありまして、水曜スペシャル「UFOは存在する」の放映と前後して同じ内eのより詳細な本を出す、矢追純一の商法と大差ないものです。
映画として観たとき、恐怖を煽るテクニックとしては、徹底的に情報を削ってしまったのが有効に作用しています。主人公3人が極限状態になっていくのですが、全体の空気は淡々としたもので、ドラマチックな盛り上げはほとんどありません。でも、その空気感がリアルで主人公に感情移入できれば相当怖いものがあります。しかし、彼らを死ぬほど怖がらせている何かはまるで見当がつきませんし、存在感もありません。それは、主人公の一人称形式の構成にして、何かの存在感を消してしまうことで、主人公の不安感を極限にまで高めようとした結果だとは思いますが、その分、主人公たちを冷めた目で見てしまうと、「それが何やねん」という気分になるのも事実です。とはいえ、ラストカットの向こうに見える絵は相当怖いですよ。
お薦め度 | ×△○◎ | ビデオで観るんじゃ怖さ激減。 |
採点 | ★★★ (6/10) | これもまた遊び心の一つの形だよね。 |
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