written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
ジョン・コナー(ニック・スタール)は自分の運命を呪いながらがも、今はホームレスに身を落としていました。自動車事故に遭った彼は、薬を盗むために忍び込んだ動物病院で女医のキャサリン(クレア・デーンズ)と知り合います。彼女は中学の同級生でした。そこへ、女ターミネーター(クリスタナ・ローケン)が現れ、キャサリンを標的として殺そうとします。何だかよくわからないキャサリンの前にさらにターミネーター(アーノルド・シュワルツネッガー)が現れ、ターミネーター同士の戦いが始まります。女ターミネーターは人間側の反乱軍の主要メンバーを本人が気付く前に殺してしまうという任務を帯びていたのです。ジョンはその事情をすぐに飲み込みますがキャサリンには事情がさっぱり。でも、スカイネットによる反乱はすでに秒読み段階にあり、そして、キャサリンの父親こそ、その中心人物であり、彼ならスカイネットの暴走を止められるかもしれないのです。さあ、どう出る、ジョン・コナー。
ターミネーターの第一作は世紀末的な未来観をベースに派手なアクションの連続で見事にエンターテイメントに仕上げた娯楽映画でしあ。2作目はたっぷりとお金をかけた大作の作りで、視覚的な仕掛けが見事でした。ジェームズ・キャメロンがスケールの大きな物語をさらに
この後の第3作目というのは、お話としてどう展開させるのかという興味がありました。冒頭はジョン・コナーが悪夢に悩まされながら、放浪の旅をしているという何か辛気臭いもの。そして、すぐに女ターミネーターが現れ、若者を順に殺していきます。そして、ジョンの逃げ込んだ病院でキャサリンと二人のターミネーターにご対面ということになります。以降、映画は、ターミネーター同士の追跡、闘いのみで、その合間にドラマが入るという構成は、娯楽映画として成功していると申せましょう。
「ブレーキダウン」で、「お、これはすごい」と思い、「U−571」では「行き当たりばったりじゃないの」と思わせた、ジョナサン・モストウの演出は、今回はシンプルなストーリーをアクションで最大限に膨らませることに成功しています。人類の危機をシンプルにまとめた手腕はなかなかのものと申せましょう。第一作の有名なセリフ「嵐が来る」の雰囲気を全編に漂わせておいて、それに立ち向かおうとするジョン・コナー、そしてラストのちょっと意外な展開まで、モストウの演出は一本筋が通っています。伏線もきちんとつけてありますし、ターミネーターの行動にミステリーの趣向を盛り込んであった(後で気付いたので)のは、なかなか芸の細かいところを見せます。
ただ、第2作にあったスケール感とかハッタリといったものはないため、面白いんだけど、大作として売るのには無理があったようです。でも、シュワルツネッガー主演であり、SFXにも相当お金がかかっています。よく見りゃお金かかってるんだけど、映画の味わいとしては、タイトにまとまった佳作というところに落ち着いてしまいます。それはそれで、映画そのものの値打ちが下がるわけではないのですが、宣伝のイメージとはちょっと違うものが出来上がっていたというのは、観客にとって、期待はずれとなり、逆にこの映画の評価が不当に低くなってしまわないかと言うところが気になってしまいました。
ターミネーターは過去への旅してくるわけですから、当然一種のタイムパラドクスものになる可能性があるのですが、脚本はそこをうまく迂回して、観ている間は気にならないレベルにはまとめています。また、SF的にはターミネーターの行動とか弱点にそれなりのご都合主義が見えてしまうのですが、そこは娯楽映画のお約束というところでしょうか。
演技陣では、10年間で一体何があったんだジョン・コナーと言いたくなるニック・スタールが見た目はともかく、悩めるジョン・コナーを好演しています。また、特筆すべきは女ターミネーターを演じたクリスタナ・ローケンでして、女マッチョではない、ネコ系のしなやかな殺戮者を好演してまして、機械らしからぬ「氷の微笑」はこの映画の見所と申せましょう。シュワルツネッガー演じる旧タイプのターミネーターなんですが、この作品では、一応コナーを守るヒーローのキャラとなっていて、ロボットらしからぬ葛藤やユーモアを見せてくれるのですが、ラストの一捻りのおかげで、第一作目のハードなキャラが甦ってくるあたり、なかなか凝った見せ方の役どころになっており、シュワルツネッガーも単に当たり役を楽しんでる以上の演技を見せています。
SFXでは、ILMがメインで後数社が参加していますが、これ見よがしのCGがなかった分「チャーリーズ・エンジェル」「ザ・コア」よりもセンスを感じさせる一方、お金と手間をたっぷりかけたという印象でした。また、特殊メイク&メカニカル部門をスタン・ウィンストンのチームが手がけており、SFXの使い方も贅沢なようです。
頭を使ってハイコストパフォーマンスなB級映画だった1作目から、大作化した2作目になり、今回は予算は大作、でも、出来はB級SFのセンスに溢れた作品ということで、当初の精神に戻ったということもできましょう。でも、このストーリーなら、こんなお金をかけなくても面白く作れるような気がしますし、モストウの演出力をすれば可能だったとも思うわけです。最近コミックの映画化が花盛りで、どれも大作仕様のSFX大盤振る舞いの作品になっているのですが、果たして、そんなにお金をかける必要があるのかなって思い至ってしまいました。この作品も、シュワちゃんのギャラを別格とすれば、1作目の頃の技術と予算で作れたのではないかと。
お薦め度 | ×△○◎ | ストーリーがきっちりとまとまってて、よくできたB級SF映画。 |
採点 | ★★★☆ (7/10) | スケール感よりも、見せ場を絞り込んだ演出のセンスを買いたい。 |
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