written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
タクシー運転手のジミー(ジャッキー・チェン)がその運転を買われて、ある富豪のお抱え運転手としてやとわれます。ところがそのご主人様は世界をまたにかけるビッグな諜報部員だったのです。ご主人様と一緒にいると車が爆弾カーに追われて、九死に一生を得たものの、ご主人様は入院、そして、ジミーは成り行きで、ご主人の名をかたって、事件の調査をするハメになってしまいます。ご主人様の持ち物でジミーが気になっていたタキシードを試しに着てみると、それは何と、最新テクノロジーを利用したスーパータキシードだったのです。スイッチ一つであらゆるジャンルのエキスパートになれちゃうというスグレもの。それを着込んだジミーは彼をビッグなスパイと信じ込んでいるエージェント、デブリン(ジェニファー・ラブ・ヒューイット)と共に、謎の飲料水会社へ乗り込んでいくのでした。
オープニングは飲料水工場での殺人でして、前半は水を巡る陰謀と、主人公ジミーの動きが並行して描かれます。ジャッキーは毎度の期待を裏切らない三枚目キャラで登場し、周囲の成り行きに困った顔をしながらも、コミカルに動き回って、ドラマのテンポをうまく引っ張っていきます。ジャッキー・チェンの善人ぶりは、映画にまろやかな味わいと軽さを与えているのですが、最後まで、そのまま走ってしまうのが、彼のハリウッド作品の傾向です。それは、香港映画にあった、シリアスな部分が飛んでしまい、ドラマとしてのメリハリを欠いてしまっているとも言えます。そうなると、ジャッキーも動けるコメディアンとしての地位しか与えられていないことになり、ちょっと寂しい気分にもさせられます。
サスペンスとしては、気色悪い特殊メイクあり、SFチックながらシリアスな陰謀ありと、007を思わせる仕掛けをぶち込んではいるのですが、かなりえげつない悪役と対峙するはめになる主人公が、最初から最後まで同じ軽さで見得を切るシーンがないのは、主人公の活躍が実はタキシードのおかげだからという設定だからでしょうけど、ドラマとしての盛り上がりを欠いてしまったように思います。
とはいえ、趣向としては、過去のジャッキーの映画でやってきたことは押さえてはいますので、観ている間は退屈することなく、楽しめることができます。相手役のジェニファー・ラブ・ヒューイットが登場はかっこいいのですが、その先はちょっと外したにぎやか系キャラで、かなり笑わせてくれるのは、意外な収穫でした。
ただ、やはりジャッキーの使い方というのを考えると、この先の彼のハリウッド作品に期待してよいのかなって気がします。「ラッシュアワー」あたりまでは、快調だったのですが、この先、コメディの方へ行ってしまうのは勿体ないような気がします。彼のアクションはシリアスなシチュエーションでこそ生きるものですから。それとも、年齢的にシリアスアクションが無理になってきたから、こっちの方へ路線変更しようとしてるのかなあ。彼の出演映画の中で、一番つまらないNG集のエンドクレジットも、それを裏付けているようで、ちょっとしんみりしてしまったのは、彼のハードアクションを何本も観てきたからでしょう。これ一本を何の雑念もなく観てみれば、そこそこ笑えるコメディアクションなのですから。
お薦め度 | ×△○◎ | シリアスさとマヌケさのバランスがよくないのはなぜかなあ。 |
採点 | ★★★ (6/10) | ジャッキーはハリウッドであるポジションを固定しつつあります。 |
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