スウィート・ノベンバー
Sweet November


2000年10月27日 神奈川 藤沢オデオン2番館 にて
一見ベタな恋愛映画みたいだけどちょと違う。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


広告マンのネルソン(キアヌ・リーブス)は、運転免許試験場で知り合ったサラ(チャーリーズ・セロン)から、あなた不幸だから助けてあげる、私と1ヶ月一緒に暮らしなさいと、とんでもない申し入れをされて目を白黒。そんな時、彼は仕事もガールフレンドも一度に失って意気消沈、サラの押しの強さもあって、結局彼女と暮らし始めてしまいます。自由奔放に生きるサラの生き方に影響されながらも、彼女にひかれていくネルソン。どうやら、彼は「11月くん」で、その前には「10月くん」がいたらしいのです。一体、サラはなぜ、こんな押し売りボランティアみたいなことをしているのでしょうか。

この先は、映画の結末に触れてますので、これからご覧になる方はパスして下さい。

発端は何やら陰謀の匂いを感じてしまいます。だって、チャーリーズ・セロン嬢みたいな美人が、突然一緒に暮らしましょうなんて言い出すのですぜ。最初は疑ってかかるネルソンですが、自分が職も恋人も失ってしまうと、彼女の申し出に乗ってしまいます。このあたりの巻き込まれ型キャラクターは、キアヌ・リーブスの得意とするところです。でも、まだ彼女がなぜそういうおいしい話を彼に持ちこむのかがわかりません。

でも、結局、この映画は死病ものだということがわかってきます。うーん恋愛映画の定番とは言え、またパターンな展開をするのかと思いきや、意外な展開を見せるのです。ヒロインは限られた命の中で、人生の意味を見出そうとして、押し売りボランティアみたいなことをしているのですが、その中で、ネルソンに本気で惚れてしまったようなのです。そこまでなら、この手の映画ではありがちな展開なんですが、その後、ヒロインはネルソンの愛を受け入れた上で、彼の前から姿を消そうとするのです。彼女の言うには、自分の幸せな姿を思い出にして欲しいから、彼がその思い出と共にあると思えばどんなことにも耐えられるのですって。つまり、これから病状が進行して衰えていく自分を一番愛する人には見られたくないってことらしいのですよ。何だかすごくエゴイスティックな気もするのですが、もともと、彼女がネルソンを自分の家に引っ張り込んだのも、かなり強引なナンパみたいなものですから、そっかー、このヒロインは最後まで自分のポリシーを貫きたいのねーという受け取り方もできます。

一方の巻き込まれネルソンの方は、そんな彼女にリードされっぱなしで、最後まで、二人の関係で彼が主導権を握ることができません。見様によってはずいぶんとふがいない男にも見えるのですが、ある種のやさしさと思えばそれなりに納得できなくもないのです。ここで、キアヌ・リーブスの掴みどころのないキャラクターが際立ちました。ラストの彼の表情は後悔しているようでもあり、振られた男の顔のようでもあり、結局、彼女の心を掴みそこなったドン臭い奴のようにも見えました。では、ここで彼がもう一踏ん張りして、彼女を最後まで看取ったとしたらどうなるか、美しくない苦痛に歪む彼女を看取ることが二人にとって最良の選択になるのか。古風な考え方をすれば、お互いが愛し合っているのなら、死が二人を分かつまで共にあるべきだということはできます。でも、彼女にとってそれは望むところではありません。

ここでふと思い至ったのは、結局、ヒロインにとっては、ネルソンは思い出のアルバムの1ページ以上のものではなかったのかなということでした。彼が自分をそれ以上の存在にしようとした時、彼女はそれを拒否したのですから、彼は体よく振られたということもできます。相手から見た自分を、自分の都合のいいようにしておきたいという願望は理解できるのですが、それでも結婚したいという彼の気持ちは無視してもいいのかと、文句の一つも言いたくなります。でも、この二人は最終的にそういう関係を承認したのです。目隠し鬼でサラを捕まえ損なうラストは、バックの寒々の空気と共に、デッドエンドのような印象を持ってしまいました。私にとっては、とても美しい愛の結末とは思えませんでしたもの。この映画の監督パット・オコナーはアイルランド出身の一癖ある映画を撮ってきている人ですが、この映画でも、ちょっとひねった視点が、素直には泣けないけどなかなか面白い映画に仕上がりました。でも、この映画の宣伝も、パンフを読んでも純愛ものみたいな見せ方をしてるところからすると、私のような見方はひねくれているのかもしれないです。


お薦め度×やさしさとおマヌケは紙一重なのかも。
採点★★★☆
(7/10)
この結末の寒々とした空気は何?

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