メラニーは行く!
Sweet Home Alabama


2003年06月15日 神奈川 横浜ムービル2 にて
セレブなフィアンセができたメラニーには他にダンナが?!


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


ニューヨークでデザイナーとして成功したメラニー(リース・ウィザースプーン)は、ニューヨーク市長(キャンディス・バーゲン)の息子アンドリュー(パトリック・デンプシー)に求婚されて幸せ一杯。しかし、彼女は故郷アラバマに亭主ジェイク(ジョシュ・ルーカス)がいたのです。早速帰郷した彼女はジェイクに離婚届にサインするように迫るのですが、なかなか素直にウンと言いません。そして、旧友と再会した彼女の中で、ちょっとずつ何かが変わり始めるのですが、そんなところにアンドリューがやってきます。果たしてメラニーはアンドリューと無事に結婚することができるのでしょうか。

前作「キューティ・ブロンド」が爆笑コメディに仕上がっていたので、この映画もその系列かと思っていたのですが、オープニングから雰囲気がちょっと違ってまして、絵が落ち着いていて、そして結構お金かかってるって感じなんですよ。「メラニーは行く」はヒロインを中心としたラブコメ仕立ての恋愛映画なんですが、「エバー・アフター」「アンナと王様」のアンディ・テナントの演出は、笑いよりもヒロインをマジメに描こうという意図があったようで、かなりやりたい放題のヒロインの物語ですが、ドタバタしたところのない映画に仕上がりました。まあ、その分、ドラマが重くなって、ヒロインがはじけなかったのは、ちょっと残念でした。アンドリュー・ダンの撮影もシネスコサイズの引きの絵が中心で、深みのある絵作りが、それはそれとして見応えがあるのですが、この話にはちょっと重いかなって気がしてしまいました。

お話の中心は、メラニーが7年前にダンナと故郷を捨ててニューヨークに出て、そして成功して戻ってくるというところにあります。物語は、前半、ダメなダンナに振り回されるメラニーという見せ方をしておいて、実はそうでもなかったことが段々わかってくるという展開で、そこで、メラニーの秘密もわかってきます。ここで、メラニーの過去を小出しにするというのは、あまり成功してないようで、ウィザースプーンのキャラを複雑にしてしまった分、素直に共感しにくくなってしまいました。

後半は、ヒロインは、アンドリューとジェイクの間を揺れ動くことになります。でも、どっちもメラニーに対して誠実であろうとするあたりがドラマを余計目に複雑にしています。別に単純なのがいいというわけではないのですが、ラブコメにしては重い展開のせいで、ラストのハッピーエンドの苦味を拭い去れなかったのは、ラブコメとしては、期待外れということになってしまいます

とはいえ、このヒロインの行動は色々と突っ込みどころが多くて、男性から見て、かなり「困ったちゃん」キャラになっているのが面白いのですよ。いわゆる、二人の男性の間で揺れるヒロインという設定になるのですが、この揺らぎ方が、至近距離から見ると、一見健気でかわいくも見えてしまうのです。ところが、ちょっと引いて時間と空間を意識して見ると、これじゃ男はかなわんなあって感じなのですよ。普通だと、男を情けない奴に描くことで、そこをチャラにするところなのですが、この映画に登場するアンドリューとジェイクは二人とも、完全ではないけれどヒロインを想う気持ちも誠実さも持ち合わせているのです。それだけに、八方丸くは収まらない決着になってしまうのを、どこまで許容できるか、娯楽映画として楽しめるかで、この映画に対する評価が分かれると思います。まあ、「メラニーは行く」という邦題に偽りなしなんですが、ちっとは考えながら行けよ、とも思ってしまうわけでして。

役者をきちんと揃えてありまして、ジョシュ・ルーカスが見せる奥行きのあるキャラクターとか、ヒロインの両親を演じたメアリー・ケイ・プレイスとフレッド・ウォードもいい味を出し、幼なじみ役のイーサン・エンブリーやメラニー・リンスキーといった面々も好感が持てて、テナント監督の手腕か、細やかで丁寧なドラマ作りが光りました。それだからこそ、余計目にこのヒロインの困ったちゃんキャラが際立ってしまったようです。南部人と北部人のカルチャーギャップとか、双方の対抗意識の部分は、関東人と関西人のそれを見てるようでなかなか面白かったですし、いっそのこと、かるーいドタバタコメディにしちゃえばよかったのかも。


お薦め度×軽いネタの割にはお金かかってる印象で、マジドラマっぽい感じ。
採点★★★
(6/10)
アメリカの南部人の北部への感情って、関西人の関東へのそれ?

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