スティグマータ
Stigmata


2000年05月27日 神奈川 ワーナーマイカルみなとみらい7 にて
「エクソシスト」風ホラーとミステリー面白さ。


written by ジャックナイフ
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ピッツバーグの美容師フランキー(パトリシア・アークエット)のところにブラジル旅行していた母親から、おみやげだということで妙なロザリオを送られてきます。それから、彼女の身に異変が起こり始めます。まず、手首からの出血、そして、背中にムチで打たれたような傷ができ、どうやら、これはキリスト教で言うところの聖痕(スティグマータ)というもので、キリストが死ぬ前に受けた傷が次々に体に現れるというもので、過去にも例のあることなのだそうです。バチカンから調査にやってきたアンドリュー神父(ガブリエル・バーン)の前でも不可思議な現象が起こります。でも、聖痕って信仰の厚い人にしか現れない筈なので、教会へ行く習慣もないフランキーにこんなことが起こる筈はないのです。どうやら、この事件には裏にまだ隠された謎があるんでないのかしら。

オープニングは、ブラジルのベロキントという町で、そこの教会にあるマリア像が目から血の涙を流すという奇蹟の調査にアンドリュー神父がやってくるところから始まります。こういう類のもの、壁に浮き上がるマリアの像とか、血を流すキリスト像、マリア像なんて話は、「世界の不思議」の本なんかでよくお見かけするものです。そんな不思議な現象が、ピッツバーグの美容師に現れるという展開は、その昔のオカルト映画「エクソシスト2」「エンティティー」なんてのを思い出させます。そして、彼女は、単に傷ができるだけでなく、妙な言葉を話したり、突然男の声で怒鳴り出したりするようになってきます。

おー、悪魔か何かに乗り移られたのか、でも聖痕って、信仰の厚い神様に近い人だけに出るらしく、フランキーの身に何が起きているのかが、アンドリュー神父にも見当がつきません。アンドリューの上司であるバチカンの枢機卿も何か腹にいちもつあるみたいだし、このあたりから、物語は因縁話の様相を帯びてきます。そしてラストで隠された謎が判明するのですが、その謎の正体は劇場でご確認下さい。この映画は、キリストの受けた傷云々という聖書の話から始まるのですが、実は怨霊怪談だったというのが面白いところです。おかげで、私のようなキリスト教文化に知識のない無宗教な人間でも、筋が理解できましたもの。このプロットなら日本でも同じ話が作れそうだと思いました。

キリスト教の教えというのは聖書に書かれているのですが、聖書というのは伝聞の寄せ集めということで、本当のキリストの言葉というのは、まだ特定されるに至っていないそうです。ですから、あちこちから新しい文献が見つかったり、これがホンモノとかいう文書が見つかったりして、物議をかもしだすのだそうです。その中身によっては、これまでのキリスト教の教えが揺らいでしまうことがあったりすれば、それを公に認めることは教会の権威の失墜となり、それはウソだと言い張らざるを得なくなることもあるそうな。そういう前提があってのお話だけに、ここに出てくる教会は真実を闇に葬る敵役ということになります。まあ、一度権威を持った人間はそれを守るためなら何でもするというのは、どこの世界でもあることですが、キリスト教の元締めなら、その権威は地球規模ですからね。そのためなら何でもやるだろうなあってのは、かなり説得力があります。聖痕なんていうより、生身のバチカンの方がよっぽど怖いというお話でもありました。

映画としての見せ方は、MTV出身の監督らしく、聖痕が現れるところでは、速いカット割りでイメージカットを積み上げるものです。メインプロットが地味な分、視覚的に派手にしようとしているのはわかるのですが、示唆に富んだストーリーに、しっかりした役者を使っているだけに、あまり仕掛けに頼らない方がよかったように思いました。聖痕が出るシーンは特殊メイクでかなり気持ち悪い見せ場になっていまして、音によるショックシーンもありまして、ホラー映画としての作りは定番を押さえているという印象でした。ただ、音楽の使い方がずっと垂れ流しという感じで、メリハリを欠いてしまったという印象がありました。各々の曲はCDで聞きなおすといいところもあるのですが、使い方のセンスに問題があるのかなあ。


お薦め度×MTV風の音と絵作りは好みがわかれるかも。
採点★★★☆
(7/10)
世紀末オカルトかと思いきや、西洋怪談になっていくのが一興。

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