written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
誘拐されたパルパディーン議長を救うためにアナキン(ヘイデン・クリステンセン)とオビ・ワン(ユワン・マクレガー)は大活躍、無事に救出に成功します。パドメはアナキンの子供をみごもっていましたが、一方のアナキンはパドメの死の悪夢を見ます。一方、ジェダイは議長の不穏な動きに気付き、議長のお気に入りであるアナキンに彼の身辺の監視を依頼します。そんなジェダイにアナキンは不満を持ち、そのアナキンをパルパディーンは取り込もうとします。そして、ついにはアナキンはフォースのダークサイドに取り込まれてしまいます。そして、パルパディーンはその正体を現して皇帝として帝国に君臨するのでした。オビ・ワンはアナキンを倒すべく彼を追います。そして、ついに師弟間の因縁の対決が火蓋をきるのですが。
「スターウォーズ」のエピソード4(以降これを第一作と呼びます)が公開されてから、四半世紀以上が経ちました。その間に計6本の「スター・ウォーズ」が作られて、各々大ヒットを飛ばしてきたのですから、大したものです。今の若い人は最初の「スターウォーズ」の公開時のフィーバーぶり(この死語がよくあてはまる)は知らないでしょうけど、アメリカでの大評判から1年近く待たされて、それでも大当たりしたのです。この映画によって宇宙を舞台にしたSF活劇、そしてSFXを駆使した映画が次々と作られるようになったのですから、今の映画のほとんどが何らかの形で、「スターウォーズ」の影響を受けていると言っても過言ではありません。
今回は、前作エピソードUよりも評判がよくドラマチックな内容だということで期待はありました。ただ、今回は結末は最初から割れているので、その結末に向けてどうドラマを引っ張っていくのかというところが見所になります。アナキンはダースベイダーになることは端から決まっちゃってるわけで、これをひっくり返すわけには行きませんし、オビ・ワンやヨーダを殺すわけにも行きません。後が続きませんからね。しかし、その制約の中で、かなり思い切ったドラマ展開を見せており、ジェダイのほとんどが殺されるといったショッキングな展開をはじめ、死んでも後が続く関係者は皆殺し状態となります。クライマックスでは、アナキンはほとんどスクラップ状態で、ダースベイダーに改造されることになるのです。
第一作はヒットするかどうかわからない状況で製作されたわけで、これ一発で終わりかもしれないということでそれなりに完結したストーリーにはなっていました。そして、この第一作はすこぶる明るい宇宙チャンバラになっていたのです。正直、ルーカスは明るく楽しい宇宙チャンバラを作りたかったのではないかと思いました。「帝国の逆襲」でややドラマチックな展開を見せたものの「ジェダイの復讐」でやっぱりキャラで楽しませる娯楽活劇に仕上げていましたから、そういうカラーの映画を期待しました。ところが新シリーズになってからは、若干宗旨変えをしたのか、アナキンがだんだんとダークサイドへと落ちる話をメインにして、お話が妙に暗ぼったい展開になってきたのです。そして、本作では、かなり陰惨な殺し合いのお話になってしまいまして、第一作のような、軽さ、楽しさは影をひそめ、ヘビーで陰気な映画になってしまいました。
ドラマチックであるということでは、確かにその通りでしょうし、アナキンの物語としての「スターウォーズ」を作ったんだと今言われれば「ま、そうかも」とは思うのですが、第一作とはあまりにも雰囲気が違うってのは、どうも釈然としないものがあります。ルーカスが撮りたかったのはこういうの話だったのかなあ。まあ本人が脚本・監督しているのですから、思い通りのものが作れているのでしょうけど、六部作という設定に引きずられて、陰惨な話にせざるを得なかったという印象を持ってしまいました。そういう設定をカバーするためにキャラクターとか趣向を増やしているのですが、ユーモアのかけらもない展開は、第一作のインパクトを知ってる身としてはしんどいものがありました。ドラマチックな展開として評判のよい「帝国の逆襲」だって、R2−D2やヨーダ、チューバッカといった面々が結構笑いをとっていたのですよ。
じゃあ、シリアスドラマとしてはどうかというと、アナキンがダークサイドへ引っ張られる動機がかなりしょぼいというか、単なる若気の至りみたいなので、乗り切れなかったです。SFとしての仕掛けがすごいので、気付きにくいとは言え、こんな程度の若造にとんでもない力を与えてしまったジェダイの皆さんは思慮不足と言われても仕方ないでしょう。第一作では圧倒的な悪の存在感で他のキャラクターを圧してしたダースベイダーだったのですが、これではキャラのスケールダウンにしかならないのですよ。
でも、世間の評価は「スターウォーズ」サーガを完結させたという、それだけでも点数が高いようで、まあシリーズに幕を引いたということでは、「猿の惑星」よりはずっといい出来ではあるのですが、でも、やっぱり六部作の呪縛にかかって迷走しているという気がします。私の「スターウォーズ」を好きな理由が、「明るく楽しい宇宙チャンバラ」にあるので、その期待にはこたえてくれなかったということになります。
お薦め度 | ×△○◎ | 活劇としてはよく出来てるとは思うけど、こんな話にしたかったの? |
採点 | ★★★ (6/10) | 昔の「スターウォーズ」が懐かしいって思うのはオヤジの懐古趣味かな。 |
|
|