written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
ブラピが中国の刑務所で何やらやらかそうとしています。どうやら誰かを脱獄させようとしているみたい。でも、後一歩のところで発見され、24時間後には処刑される運命にありました。これを知って驚いたのアメリカはCIAです。だってブラピは工作員なんだもの。それに目的もターゲットも不明なので、どうしていいやら、もう困っちゃう。そこで、登場するのが元上司で退職間際のレッドフォード。CIAがブラピを見殺しにしようとしていると知って、一人で何か画策しているようですが、果たして、CIAのオフィスにいるレッドフォードが、中国の刑務所のブラピを救うことができるのでしょうか。
ロバート・レッドフォードとブラッド・ピットという2大スターの顔合わせによる、スパイサスペンスです。監督のトニー・スコットは「クリムゾン・タイド」など盛り上がる映画を作る才人ですが、詰めの甘さが大味な印象を与えてしまう娯楽映画の職人です。今回はオープニングからなかなかにスリリングで期待させるものがあります。中国の刑務所にやってくるブラッド・ピットは何かわけありな様子、そして、ある囚人を連れ出そうとして失敗するまでが、なかなかの盛り上がりを見せます。
そして、お話はアメリカのCIAへ移ってからは、ピットをどうするかという対策会議の場となり、そこに元上司のレッドフォードも同席し、ピットの過去について語られます。現状の打破のために、ピットの過去がそんなに大事なのかなんて野暮なことは言いッこなし。そこで、ピットがCIAの仕事をするようになった経緯から、なぜ中国の刑務所に潜入したかまでが語られるのです。並行して、ピットの過去を隠し、何とかしてピットを助け出そうとするレッドフォードの活躍が描かれるのですが、このあたりは、組織と個人の闘いといった構図になり、孤立無援なピットを、組織の中で孤立無援のレッドフォードが救うという展開となっていきます。
ます、この映画は、レッドフォードとピットの二人のスター映画であることが前提になっていまして、そのために他のディティール部分にはかなり目をつぶっている節があります。でも、せっかくこの二人が出てくるのであれば、双方が立つような作りでないと映画としては面白くありません。結局はレッドフォードがかっこいいところをさらってしまうのですが、まあスターの貫禄の差から言っても無難な展開と言えます。今のレッドフォードはかつての甘さに年齢からくる渋みが加わって、数少ない甘渋な二枚目になってますから、ピットがまともに張り合っても、噛み合わないと読んだのか、絡みそうで絡まない二人の距離感はなかなか巧いと思いました。また、回想シーンでは、ピットにシリアスな芝居をたっぷりとさせることで、彼の見せ場もきちんと設けられているのは、さすが娯楽映画の職人芸と感心しました。
また、二人の男の友情というのか、レッドフォードがポーカーフェイスでピット救出を画策するあたりが、コミカルな味も交えて、きちんと描かれているのも好感が持てました。
と、この先は映画の結末に若干触れますので、ご注意下さい。
◆
後は、孤軍奮闘のレッドフォードが見事に組織を出しぬいて、ピットを救出してくれればいいのですが、ここで、かなりムチャなことをしたおかげで、映画そのものが大変後味の悪いものになってしまいました。アメリカではこの映画相当ヒットしたそうですから、この後味は問題にならなかったのかもしれませんが、ならなかっとしたら、アメリカもかなりヤバイんじゃないかという気がしました。
結局、ピットを救出するのに、米軍ヘリで刑務所を襲って、強引に連れ去っちゃうのですよ。これって、時代が1991年だと言っても、中国に対する侵略行為じゃないですか。それに、そもそも発端がピットの色恋沙汰にあるとわかってみれば、その為に何人の命を危険にさらすんじゃいと文句の一つも言いたくなります。米軍兵士はニセの命令書によって、命を的に脱走幇助をするハメになるわけです。その張本人がレッドフォードなら、レッドフォードは、中国から脱走テロの張本人として引渡し要求をされても仕方ありません。これは、スター映画だから許されているのか、作り手が中国をなめてかかっているのかはわかりませんが、ソ連崩壊後の敵役を探すのに苦労してるのは認めても、今、この時代、このご時世にこういう映画を作るセンスはどうかと思います。だって、この映画のラストはどう見てもハッピーエンドのつもりらしいんですが、実はハッピーなのは、主要関係者3人だけで、後は、米中ともに苦々しい思いをしていることになるのですから。他に手段はないというのは、何となくわかるのですが、だったらそんな設定で娯楽映画作るなよと文句の一つも言いたくなってしまうのでした。
お薦め度 | ×△○◎ | この後味の悪さはいかがなものか |
採点 | ★★★☆ (7/10) | 作りとしては面白いだけにラストがなあ |
|
|