written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
ロシアの通信衛星、アイコンが故障してしまいます。収容もできず、地球に墜落させるのもまずいということで、修理せざるを得なくなります。ところが旧式の衛星だけに、今のNASAに直せる人間がいません。そこで、かつての開発者フランク(クリント・イーストウッド)に相談がかかります。彼はかつては空軍パイロットで宇宙飛行士を目指して夢かなわなかった人でして、自分のかつてのチームメイトとともに宇宙で直接修理するならという条件で、協力を申し出ます。ともかく、今のところ彼しか頼みの綱がないNASAはしぶしぶその要求を飲みます。かつての旧友3人を集めて宇宙へ飛び立つことになるフランクですが、この通信衛星には何か裏がありそうです。
映画のオープニングは「ライトスタッフ」を思わせるもので、最高速を目指すテストパイロット、宇宙を目指す彼らが結局チンパンジーに飛行士第1号を出しぬかれてしまうエピソードは「ライト・スタッフ」にもあったような。それからお話が現代に飛んで、旧式の通信衛星の故障を誰も直せない状態で、すでにNASAを去っていたじいさんに声がかかるというもの。ここから、じいさん4人がNASAに乗り込んで、宇宙飛行士の訓練をして、宇宙へ飛び立つまでは、なかなかにコミカルで役者のよさもあって楽しい展開を見せます。このじいさんたちというのが、クリント・イ−ストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ジェームズ・ガーナー、ドナルド・サザーランドという面々です。トミー・リー・ジョーンズは他の3人に比べて1世代若いのですが、それでも、彼に華を持たせる展開になっているあたりが面白いところです。このメンツの中では、今でも現役悪役をこなすドナルド・サザーランドがコミカルな役どころを好演して印象に残りました。また、かつて彼らの代わりにチンパンジーをロケットに乗せた上官をジェームズ・クロムウェルが典型的な敵役を演じてみせました。また、マルシア・ゲイ・ハーデンが、トミー・リー・ジョーンズと恋仲になるNASA職員を好演していますし、ウィリアム・ディベインの管制官もいい役どころでしたが、これら脇役をもう少し丁寧に扱って欲しいところでした。
お話の方は、宇宙に出てからは打って変わってシリアスな展開となります。ILMによるリアルな視覚効果で、宇宙での修理活動が展開しますが、これが色々とトラブル発生で、最後には地球の危機まで話が発展してしまいます。どういう危機的状況になるのかは劇場でご確認いただきたいのですが、どうして、ここまであの手この手を出さないといけないのかという気もしてしまいました。「ディープ・インパクト」や「アルマゲドン」を観る前だったら、もっと素直に楽しめたのかもしれませんが、ここで、ああいう映画の二番煎じをしなくても、設定が十分面白いのに勿体ないような気もしてしまいました。特にこの修理作業の足を引っ張る奴が登場するのですが、こいつの扱いなんか、ずいぶんといい加減な気がします。前半で登場人物のキャラクターを出そうとしている割には後半の演出はかなり粗っぽいという印象を受けてしまいました。
全体の物語としてはかなり面白いものがありまして、前世紀の遺物のような通信衛星の故障、そしてそれを修理しなくてはならない理由というのも過去の因縁からであったという設定は、皮肉な味わいがあります。そして、それを何とかできるのが、最新鋭の技術ではなく、ロートルの職人芸だったというのも設定の面白さはあるのですが、現実の問題としては物騒この上ない話です。イーストウッドとしては、娯楽映画としてまとめたかったのかもしれませんが、本当に今の先端技術が過去のゴミに対応できるのか、例えば、不発弾とか地雷の類は最新鋭の技術で何とかなるものなのかしらなんてことを考えてしまいました。
ラストは、娯楽映画ならではの「一気にことがうまく行く」的な展開なので、その前の部分のトラブルのつるべ打ちの部分とのバランスがあまりよくありません。「U−571」を観た時も思ったのですが、散々「あれもダメ、これもダメ」的状況を作って、登場人物を追い詰めておいて、最後に「結果オーライ」になってしまうという構成は、どうも素直に喜べないのです。ハッピーエンドは大好きなのですが、そこに至るまでに、散々悲惨な結末のタネをまいておいて、それらをきちんと刈り取らずに、強引にハッピーエンドにするというのは、どうも釈然としません。娯楽映画のそういうディティールまで気にする私の方に問題あるのかもしれませんが、だったら、その前の部分で、困難さのネタ振りをしなければいいじゃんと思ってしまうのでした。
お薦め度 | ×△○◎ | じいさんたちの頑張りが見所。 |
採点 | ★★★ (6/10) | 後半がいわゆる「アルマゲドン」化しちゃうのが逆に物足りない。 |
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