最狂絶叫計画
Scary Movie 3


2004年10月15日 東京 新宿ピカデリー4 にて
ホラーパロディシリーズの3作目は「ザ・リング」と「サイン」だ。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


前作、前々作でひどい目に遭い続けているヒロイン、シンディ(アンナ・ファリス)は今回はテレビ局のレポーター。トム(チャーリー・シーン)の家に起こったミステリー・サークル事件に興味を示しますが上司は取り合ってくれません。一方、見ると七日後に死ぬという呪いのビデオが世間を出回っていて、ついにはシンディもそのビデオを観てしまいます。後、七日間の命と宣告され、その謎に挑む彼女の前についには宇宙人が現れ、大統領(レスリー・ニールセン)も彼女の協力を仰ごうとするのですが.....。

もともとは「スクリーム」のお下劣なパロディから始まった「絶叫計画」シリーズです。前2作はウェイアンズ兄弟が中心となって、差別ネタやら小汚いお下劣ネタをてんこ盛りで、それはそれで(まあ)楽しかったのですが、ややはしゃぎすぎの感があって、こっちがついていけなくなることもありました。今回は、「フライング・ハイ」の流れをくむ「裸の銃を持つ男」のパット・フロストが脚本に参加し、同じくデビッド・ザッカーが監督をするということで、バカ度はそのままに、よりとっつきやすいお笑いにまとまりました。質より量でネタをさばくというやり方は変わってないのですが、暴走しない分、お気楽に楽しめる映画に仕上がっています。

冒頭は「ザ・リング」のオープニングから始まり、その後は「サイン」のミステリー・サークルのシーンとなります。基本設定はこの2本に基づいていて、後「マトリックス」「8Mile」「シックスセンス」などが散りばめられていまして、お約束の障害者ネタとか、児童虐待ネタもきっちりと入っています。また、パロディ以外の下らないネタもテンコ盛りでして、それらのネタを登場人物が大マジメに演じているところが今回のいいところです。前作にあったやり過ぎ、はしゃぎ過ぎは意識的にセーブされているようで、レスリー・ニールセンでさえ、一応マジメに大統領を演じて笑いをとります。特におかしかったのは、呪いのビデオの中身でして、基本はオリジナルに忠実なんですが、これが相当に笑える内容になっていました。

また、きちんとお話が収束するところもマトモっぽい印象でして、呪いのビデオと宇宙人がきちんと関連を持ったオチがつくあたりに、まっとうな映画(?)を作ろうという意欲が感じられました。また、結構、セットとかお金がかかっていますし、「ザ・リング」や「サイン」の視覚効果をそのまま再現しているところもありまして、ウソのように長いエンドクレジットでは視覚効果の会社が6.7社、名を連ねていました。

デビッド・ザッカーの面白さは、パロディを連ねるのと並行して、昔ながらのコテコテギャグを臆面もなくやるところでして、どこかで笑えればいいやくらいにネタの密度が高いというのも特徴です。今回も、窓から放り出される若造というのを繰り返し見せるのですが、それをドラマの中でなんとなく見せているあたりのセンスを買います。その昔、こういうパロディ映画を論じる時、「新サイコ」「ヤング・フランケンシュタイン」のメル・ブルックスがやや上等で、ザッカーなどによる「フライング・ハイ」の系列は下等だという色分けがあったのですが、今や、その下等なのでも、前2作よりはまともじゃんということになってしまうご時世になりました。それだけ、パロディというものが世間に認知されて、その裾野も広がったという解釈もできましょうし、映画のレベルが下がっているという言い方もできるかもしれません。しかし、その昔だったら「ズーランダー」のようなコメディは全然評価されなかったでしょうから、映画の評価というものは時代によって変わってくると思った方がよさそうです。実際、本作を観た時、何だか懐かしいような、古典芸能を観たような気分になりましたもの。

演技陣では、前作では演技そのものがセクハラみたいなアンナ・ファリスが今回はきっちりとヒロインしていて、なかなかに魅力的でした。前2作では全然かわいいとも思わなかったのですが、「ロスト・イン・トランスレーション」で「え、こんなに魅力的だったの?」とびっくりしたファリスが、この映画ではメジャーな映画のヒロインになっているのですよ。これは、ザッカーの演出によるところ大ではないかと思った次第です。また、チャーリー・シーンのバカっぷりが意外なほどきっちりと決まってまして、最後までペースを崩さないボケっぷりが見事でした。その他、ちょっとだけ出演のデニス・リチャーズが魅力的だったのと、クイーン・ラティファのおかしさが印象的でした。


お薦め度×脚本監督が変わってパロディの芸風が変わりまして。
採点★★★☆
(7/10)
普通の人でもついていける映画にまとまってます。

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