written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
1960年代、ビバリー(ドリュー・バリモア)は15で妊娠してしまいます。相手は自他ともに認めるダメ男のレイ(スティーブ・ザーン)でして、警察官のパパ(ジェームズ・ウッズ)の反対を押し切って二人は結婚。大学に進みたいという希望のあるビバリーですが、レイは仕事もサボりがちのダメ亭主。生まれた子供が男の子でガッカリしたり、その子のおかげで奨学金の面接がダメになったりと、母子の関係はしっくりといきません。その上レイがヤク中とわかって夫婦も崩壊。しかし、何年かして、35歳のビバリーは、自分の半生を本にまとめて出版にまでこぎつけようとしてます。でも、息子とビバリーの間にしこりがまだ残っているみたいなのでした。
最初はキャーキャー言ってるヒロインがいつのまにか街のロクデナシといい仲になって出来ちゃった婚をするということで恋愛系のドラマかと思っていたのですが、中盤から段々とこれが、親子のドラマがメインとなってきたのが意外でした。母親としてのビバリーがなかなかに困ったママなのがこの映画の見所でして、そんな母親にじっと耐え忍ぶわけでもない息子とのやり取りは思わず笑ってしまうのですが、ドキリとさせられるところがありました。そして、親と子の様々なありようが映画の中から浮かび上がってきます。
特に、母親としてのビバリーは日本でいうところの「いいお母さん」キャラとはかなり遠いところにあります。子供よりも自分の方を優先させ、思うようにならないと子供に当り散らすときもあり、でも仲良くやってるときもある、このリアリティは時としてドラマを暗くしてしまうことがあるのですが、ドリュー・バリモアのキャラの強みか、そんな困った母親に共感できて、そして笑えるのですね。彼女の喜怒哀楽は説得力があって、そしてどこか憎めないのです。息子のジェイソンにとってはトラウマになりそうなことも平気で言っちゃうのだけど、それでもドラマのヒロインとしていられるというのは、彼女のキャラに負うところ大と私は見ました。
彼女の前向きな生き方と対照的なのは、ダンナのレイ。もともと、街のろくでなしと周囲からは思われていて、そのことを本人も認めています。そして、向上心のかけらもなく、女に助けを求める才能だけは、少しばかりあるみたい。そんなレイと何とかやってきたビバリーもヤク中になっちゃったレイは許容範囲を超えてしまい、ついに絶縁宣言。でも、ラストそんなレイがまた他の女と一緒に暮らしていて相変わらず女の厄介になりながら、細々を生きているのを見せます。そして、彼がジェイソンのためにしてやれることがあるというあたりに、ドラマとしての面白みがあります。レイが暴力夫だったりしたら、徹底的な悪役になれたのですが、そうなれないところに、レイという男のペーソスが感じられました。スティーブン・ザーンの情けない演技がこのドラマに不思議なユーモアとやさしさを与えています。
ラストで彼女はそれなり自分のやりたいことを実現させている「ささやかな成功者」のように見えます。それでも、若い頃と何か変わっているのかというと、何も変わっていない、いいところも困ったところも、昔のまんまです。息子を送り出した彼女を迎えに来る人は、そんな彼女のドラマを見届けるにふさわしい人なんですが、それは本編でご確認下さい。変わらない自分、ありのままの自分を利害関係なく受け入れてくれる人がいるってことは幸せなことだと実感できるラストは、これが「癒し」と呼ばれるものなのかなって思ってしまいました。
お薦め度 | ×△○◎ | ちょっと自分の親子関係を見直すきっかけになるかも。 |
採点 | ★★★ (6/10) | ドリュー・バリモアって結構怖い系の人かもね。 |
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