レプリカント
Replicant


2002年02月24日 神奈川 横浜西口名画座 にて
ジャン・クロード・ヴァン・ダムの一人二役アクション。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


母子家庭ばかり狙う連続殺人鬼(ジャン・クロード・ヴァン・ダム)を捕えようしていた刑事ジェイク(マイケル・ルーカー)もそれを果たせず退職となりました。そんな彼に声をかけてきたのが、国家安全保障局。殺人鬼のクローンを作ったので、そいつの記憶を引きずり出して殺人鬼を捕まえるのに協力して欲しいとのこと。遺伝子的には記憶があっても、生まれたての子供と同じクローン(ヴァン・ダム二役)は、ジェイクと行動することになるのですが、そのクローンの存在を知った殺人鬼が接近してきます。所詮は分身なのですから、クローンが殺人鬼と同化しないとも限らないのです。果たしてジェイクは恐るべき連続殺人鬼を捕まえることができるのでしょうか。

ジャン・クロード・ヴァン・ダムの映画は、何本か観てきているのですが、ピーター・ハイアムズ監督と組んだ「タイム・コップ」「サドン・デス」あたりがピークで後はB級アクションが並ぶという感じでしょうか。それでも、「レジョネア戦場の狼たち」「コヨーテ」といった近作も劇場でお金を払って観ている私としては、アクション映画のアベレージを維持して欲しいところです。チャールズ・ブロンソンの映画が公開されなくなってから、このジャンルで劇場公開されるのはヴァン・ダムくらいですからね。「レジョネア」も「コヨーテ」もそれぞれ映画としてはきちんとしていたので、彼の映画はある程度の信頼は置けると思っています。それに、今回は、「マキシマム・リスク」でいいところを見せた香港のリンゴ・ラムが監督しているので、ちょっと期待はありました。

オープニングから、何の説明もなくヴァン・ダムが殺人鬼として登場するのには意表を突かれましたが、その後の展開もかなりぶっ飛んだ話になっています。物語の主人公は、マイケル・ルーカー演じる元刑事ジェイクの方で、彼は、殺人鬼のクローンと行動を共にしながら、本体の殺人鬼を追いかけていくのです。クローンの方が一応ヒーローになるのですが、今回は生まれたての子供のようなキャラクターで、何かというと手錠でつながれたり殴られたりで、オドオドしているシーンの方が多いのです。一方の殺人鬼はブチ切れキャラになっているので、今回はいつものようにヒーロー然としたヴァン・ダムは登場せず、そのせいかお約束の全裸尻見せもありません。

ストーリーとしては、かなり無理がありますし、本体とクローンが善と悪の両面を持ち合うという設定も生きておらず、脚本としては手抜きの印象は免れません。でも、映画を観ている時は、あまり気にならず、そして結構楽しむことができたのです。それは、リンゴ・ラムの演出によるものではないかと思った次第です。この人の演出は、そのシーンに必要なカットを全てきちんと押さえているため、観ていてわかりやすくて、流れに乗りやすいのです。こんな話なのに、ラストでホロリとさせるあたりに職人芸のうまさを感じてしまいました。

アクションシーンにしても同様で、今回はヴァン・ダムとヴァン・ダムの格闘シーンが多く、その分、アップの絵が多く、カットも細かく割られているのですが、その流れがスムースで、どこかで引きの絵を挿入するなど、きちんと映画としての絵になっているのです。クライマックスで、病院の駐車場を救急車が暴走するシーンも、それがきちんと見せ場になっているのには感心しました。最近のアクション映画の多くが、スタントですごいことをしていても、そのスゴさが観ている方に伝わってこないことが多いのですが、この映画では、スタントのやっていることを、きちんとドラマの一部に取り込んで盛り上げることに成功しています。

また、主役にマイケル・ルーカーを持ってきたのは正解で、彼の存在感のおかげで、ちょっとしたところにキャラクターの奥行きが出ました。ジェイクがややマザコンぽいところがあるとか、子連れ女刑事と恋仲らしいといったことが、説明なくてもわかるあたりはうまいものです。特に、クローンが自分の意思を持ち始めるところをさりげなく見せるあたりの丁寧な演出が光りました。また、ラストでちょっとホロリとさせる展開にしておいて、最後のオチが結構笑えるのも買いです。このあたりは劇場でご確認下さいって言って、確認する人もいないでしょうねえ、多分。

根本的に設定がムチャクチャなので、この映画が高い評価を得るのは難しいかもしれませんが、それでも映画としての出来は決して悪くなく、丁寧な仕事ぶりが感じられる一編になっています。また、次にヴァン・ダムの映画が公開される時は劇場に足を運ぶことになりそうです。


お薦め度×話はしょぼくても職人監督が手堅い仕事。
採点★★★☆
(7/10)
こういう映画を年に2本くらいは映画館で観たい。

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