ラット・レース
Rat Race


2002年02月02日 神奈川 藤沢キネマ88 にて
あなた、200万ドル獲得レースに出場しません? しない? ホント?


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


ラスベガスでスロットをやったら変なコインが出てきました。そういう連中6組が集められたホテルのレセプションルームに、ホテルのオーナーが現れて言うことには、「シルバーシティの駅のコインロッカーに200万ドルあって、それは早い者勝ちだよ。ヨーイドン!」。と、最初は戸惑ったり、冗談だろうと言っていた連中も何時の間にか金の魔力には勝てず、様々な手段でシルバーシティを目指すのでした。一方、それを見ながらホテルのオーナーは金持ちを招いて賭けを楽しんでいたのですが....

その昔、「ケンタッキー・フライド・ムービー」「フライング・ハイ」などの徹底的アホアホパロディコメディを作っていたチームの一人、ジェリー・ザッカーが久々に劇場映画のメガホンをとるということで、「トップ・シークレット」や「ホット・ショット」のようなパロディ映画の大仕掛けなものを見せてくれるのかなという期待がありました。でも、予告編を観る限りでは、パロディ抜きのストレートで淡白なコメディらしいので、期待が小さくなってしまいました。112分という彼の映画にしては、かなり長い上映時間も不安です。

ところが本編を観ると、最初から最後まできっちり中身の詰まった、お客を飽きさせない笑えるコメディになっていました。濃い役者のキャラクターあり、SFXを使った大仕掛けあり、ブラックな笑いもほどほどに盛り込んで、楽しい時間を過ごさせてもらいました。アクションにしてもラブストーリーにしても、やたらとヒネリを効かせた映画が多い昨今、娯楽の王道のコメディを直球勝負してこれなら、上出来の部類に入るのではないでしょうか。

これは脚本の功績が大きいと思います。アンディ・ブレックマンとクレジットされていますが、オープニングからレースの開始までの展開のうまさはなかなかのものがありました。そこから先は抜け駆け妨害などの攻防が出てくるのですが、初対面の6組で実際にそんなことあるのかよというツッコミを入れる間もなく、ザッカーの演出は快調に飛ばします。登場人物がかなり描き込まれていて、仕掛けも含めて盛りだくさんな脚本を2時間以内に収めたという感じで、途中でダレないあたりのうまさは評価されてよいと思います。

演技陣も、日本ではあまり知られてない面々でもみな好演で、存在だけで笑いをとるローワン・アトキンソン(Mrビーン)以外にも、キューバ・グッテンバーグJrの小心なアホぶりですとか、セス・グリーン、ジョン・ロヴィッツ、ウェイン・ナイトなどの曲者ワキ役が個々のシーンでは主役になるあたりの演出のうまさが光りました。また、「バーシティ・ブルース」のヒロインだったエイミー・スマートのキュートさとブチ切れぶりが、落差の面白さもあって魅力的でした。役者以外でも、色々な趣向が盛り込まれていまして、ルーシーショーのそっくりさんの団体とか、移植用心臓を運搬中のドタバタ、後半ずっと空を飛んでる運の悪い牛など、ブラックな笑いも後味悪くならないようにうまく処理されますし、何よりまず、きちんと笑えるというのがうれしい映画です。

そして、200万ドルは一体どうなるのかという結末が、許容できる強引さでハッピーエンドになるのもいいところです。欲の皮で競い合っていた連中が急にいい人になっちゃうんですが、それもまあ、成り行きでしょうがないなあってところに落ちつくあたりに、脚本のうまさを感じます。そして、ハッピーな気分で劇場を後にすることができるというところで結構点数が上がってしまいました。「スパイゲーム」で釈然としないハッピーエンドを見せられた後だったからかもしれませんが、こういう映画を週末に笑って楽しめるというのは結構幸せなことかもしれないと思ってしまいました。


お薦め度×中身が詰まっていて、多少の毒に悪くない後味。
採点★★★★
(8/10)
こういう直球勝負のコメディが少ないので点数上がってしまいました。

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