マイ・ドッグ・スキップ
My Dog Skip


2000年11月23日 神奈川 平塚シネプレックスシネマ5 にて
第二時大戦当時の少年たちの物語。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


1942年、孤独な弱虫少年ウィリーは、戦争で片足を失ったお父さん(ケビン・ベーコン)と美しいお母さん(ダイアン・レイン)と3人暮し。10歳の誕生日にお父さんの反対を押し切って買ってもらったのが子犬のスキップ。彼はスキップと仲良くなるに連れて、いじめっ子たちとも友達になれるし、ガールフレンドもできちゃいます。ある日、野球の試合で思うようにプレイできなかったウィリーは思わずスキップにやつ当たりしてしまいます。試合後、スキップの姿が見当たりません。一体どこに姿を消してしまったのかしら。

スポーツよりも読書が好きで、孤独でいじめられっ子なウィリーには友達がいません。それを心配したお母さんが誕生日に買ってくれたのが犬のスキップです。お父さんはウィリーに動物が飼えないと反対しますけど、お母さんがふんばって何とか飼えるようにする発端から、登場人物を丁寧に描き込んだ細やかなドラマが展開します。お父さんは、戦争で片足を失い、笑顔を忘れたような厳格な父親です。誕生日パーティでお母さんからプレゼントの犬を取り上げてしまうような人なのですが、でもお母さんを力で押さえ込むことはしません。スキップを飼うようになっても、スキップをまんざら嫌っているようでもありません。戦争でつらい目にあって、ちょっと頑なになってしまった父親をケビン・ベーコンが見事に演じきりました。この人、若手スターから中堅のバイプレーヤー、そしていよいよ名優の域に入ってきたようです。犬を飼うようになってからの彼の態度で、決してこの父親は犬が嫌いだったわけじゃないとわかるあたりは、演出のうまさもあるのでしょうが、あまり表情を変えずに見せたベーコンの腹芸が見事でした。

登場人物の描き方の細やかさは映画全体に流れていて、主人公のおばあちゃんとか、黒人の少年などの出番の少ない脇役も丁寧な扱いです。また、最初いじめっ子として登場する3人の子供が自然に友人となっていくという過程も自然な流れの中でとらえることに成功しています。そして、そんな人間関係の中で成長する主人公が特別なヒーローじゃない普通の少年として描かれているのに、大変好感が持てました。

第二時大戦下という時代設定もきっちりと描かれていまして(と思うのです。とは言うのも、その時代に私も生きていないので。)、隣の家の、近所のヒーローであったお兄さんが戦争に行って人が変わってしまうというエピソードも、子供の視点から見える範囲で描くことで、説得力が出ました。子供のころ、確かにご近所には色々な人がいて、それぞれのエピソードを話半分に聞いていたことを思い出してしまいました。その頃は、大人の世界には自分の計り知れない何かがあるんだなと、なんとなく感じていましたが、子供の世界より向こうの世界があるということを身近に認識できたのは、今にして思えばよかったと思います。

映画は、ウィリーの周囲で起こる色々なエピソードを積み重ねて、ちょっとしたクライマックスの後、主人公が成長して親元を離れてから、スキップが主人を失ってポツンとベッドに坐っているところまでをきっちりと見せます。ヨボヨボになったスキップをウィリーの年をとった両親が看取るというのが妙に心に残ってしまいました。さびしそうで、そうでもなさそうなスキップの姿が何だかホロリとさせるのですよ。ずっと少年を中心に動いていたドラマが、エピローグで初めてスキップをメインに持ってきて締めるあたりが、じんわりとした後味を運んできます。


お薦め度×犬好きな人もそうでもないという人もどうぞ。
採点★★★☆
(7/10)
犬のおかげで成長したわけじゃないってのが好き。

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