ミッション・インポッシブル2
Mission Impossible 2


2000年07月22日 神奈川 ワーナーマイカルみなとみらいシネマ8 にて
トム・クルーズとジョン・ウーの映画、ただそれだけってのは酷?


written by ジャックナイフ
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イーサン・ハント(トム・クルーズ)の今度のミッションは、彼の名を語って科学者を殺した組織の裏切り者ショーン(ダグレイ・スコット)の陰謀を阻止すること。しかし、そいつの真意がよくわからないことから、彼の恋人ナイア(サンディ・ニュートン)を使って、彼に接近させようとするのですが、イーサンとナイアが恋愛関係になってしまうので、ナイアを巡るイーサンとショーンの三角関係となってしまうのです。ミッションを遂行しながらイーサンはやきもき、ショーンも彼女の変化に気がつきます。果たして、ショーンの企む陰謀の正体とは? そして三角関係の行きつく先は?

前作「ミッション・インポッシブル」は「スパイ大作戦」のファンに言わせると何じゃこりゃの世界だったのですが、それはそれでヨーロッパをまたにかけたスパイものの番外編としての面白さがありました。それでも、チームでミッションを遂行する「スパイ大作戦」ではなく、トム・クルーズの単品ヒーローものになっていたのはいかがなものかという気がしていたのですが、今回の続編は開き直ったかのように、イーサン・ハントが完全に主演という、ほとんどジェームズ・ボンドものと変わらない設定になってしまいました。今回の任務自体も相当シリアスなもので、犯罪の規模はかなり大きくて怖い設定なのですが、ドラマの中心は、イーサン、ショーン二人のスパイによる、いい女ナイアの寝取り合戦になってしまうあたりが、妙におかしな展開になっていきます。

トム・クルーズは、前半のヒロインとの初対面シーンはまるで007のような段取りで、「おや?」と思わせますし、オープニングから見せる体を張ったアクションもなかなかに頑張っているのですが、その頑張りが後半はシュワルツネッガー化してきまして、敵側が機関銃ぶっ放しても一発も当たらない強引ヒーローになっちゃっています。ジョン・ウーの演出は、トム・クルーズをいかにカッコ良く見せるかを重視した演出ではあるのですが、その分、ストーリーが印象に残らないのです。クライマックスもクルーズ中心の演出をしてしまったため、メインの陰謀の方は、かなりおざなりになってしまいました。

とはいえ、ドラマのキーになるのはヒロインの方でして、主人公の行動の動機もラストの陰謀のキーパーソンとなるのも、アイラなのです。サンディ・ニュートンはこのドラマの重要なヒロインを魅力的に演じきりました。笑顔よりも険しい顔の方が映える美形がこの映画を支えていると言ってもいいでしょう。彼女をもう少し、丁寧に描いてくれたら、ドラマとしても面白みが出たのかもしれませんが、ウーの演出は、そこを意外なほどあっさりと流してしまったのが残念です。また、脇役の扱いも同様でして、敵役のダグレイ・スコットがちっとも頭良さそうに見えないし、イーサンのサポートメンバーもまるで見せ場がありません。唯一、ノンクレジット出演のアンソニー・ホプキンスがイーサンの上司役でそれなりの存在感を見せてくれますが、それも役柄というよりは、ホプキンス自身の存在感によるものでしかありません。

じゃあ、この映画はつまらないかというと、そうでもなくって、単純なストーリーで要所要所に見せ場をつないで、なかなかに楽しめる作りになっています。後半には派手なカーアクションもありますし、クライマックスが、イーサンとショーンの素手の格闘になるのも、ちょっと意外性がありました。これまでのジョン・ウーの映画でおなじみのスローモーションショットは主人公とヒロインの出会いで効果的に使われていますし、鳩がやっぱり出てくるあたりも楽しく観ることができます。

ただ、そのアクションシーンがやけに上下に狭い絵になってしまっているのは減点でした。多分スーパー35方式で、スタンダードサイズに近いサイズで撮影して、その上下を切ってシネスコサイズの絵を作っていると思われるのですが、カーチェイスのシーンなどのショットが画面上下の圧迫感が不自然で、カットによっては何が映っているのかがわからないものもありました。また、ハンス・ツィマーの音楽は、サントラCDを聞きなおすと今イチの感があるのですが、ドラマの中では、テンションを高めるのにうまく機能しています。


お薦め度×予備知識も期待もなければ結構面白い。
採点★★★
(6/10)
映画の柱をヒロイン一人に背負わせるのはちょっと。

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