ミート・ザ・ペアレンツ
Meet the Parents


2001年03月31日 神奈川 川崎チネチッタCINE2 にて
結婚を決意した男が彼女の両親に会いに行ったら一騒動。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


看護夫グレッグ(ベン・スティラー)には同棲中の恋人パム(テリー・ポロ)がいて、そろそろ結婚を考えてます。でも、そのためにはパパの承諾が必要らしいということで、彼女の妹の結婚式を控えた、彼女の実家へ行くことになります。パパ(ロバート・デ・ニーロ)は、パムにとっては絶対的な存在らしいですが、グレッグと今一つウマが合わないみたい。その上、グレッグのやることなすことがどんどん裏目裏目に出てしまい、パムの妹の結婚式もかなりヤバそうな雰囲気。これじゃあ、パパの御眼鏡にかなうのは難しいぞ、グレッグ。さて、どうする?

脚本、監督としての実績もあり、「メリーに首ったけ」で俳優としてもいいところを見せているベン・スティラーが、ロバート・デ・ニーロと組んでホームコメディをやるというのがまず意外でして、監督がハチャメチャコメディ「オースティン・パワーズ」のジェイ・ローチというのが、一体どういう映画ができ上がるのだろうという期待をさせます。

映画のオープニングは、恋人にプロポーズしようと奮闘する主人公がまず笑いをとって快調に進みます。このタッチの展開かと思っていると、舞台が彼女の実家に移ると、これが舞台劇のような演技と間で見せるドラマに変わっていきます。パパとパムの親密な関係、一家に絶対君主として君臨するパパ、何でもいい方に解釈するママ(ブライス・ダナー好演)、裕福なお屋敷住まいの両親とその友人に対して並の育ちのグレッグのカルチャーギャップなどの設定がきちんとホームドラマとして機能していまして、ナンセンスドタバタ風の展開も見せながら、基本設定をきっちりとしてあるので、観ていてどこか安定感のあるドラマに仕上がりました。

色々な行き違いから、グレッグの立場がどんどん悪い方へ悪い方へ行ってしまうというのは、コメディの常道なのかもしれませんが、これが結構徹底していて、確かにグレッグが悪いんじゃないと思いつつ、「こいつ疫病神なんじゃないか」と言いたくなってしまうところにちょっとブラックな笑いを感じました。特にエピローグで、パパがグレッグのビデオを観て「やれやれ」という顔をするあたりのクスリと笑わせるおかしさがこの映画の隠し味になっているようです。

それにしても、グレッグのドジぶりが徹底していて、それを責めずにマアマアマアとおさめてしまう、ヒロインの家族の方が随分と心が広いと思ってしまいました。ここまでやったら「全部アンタのせいだとは言わないけど、とにかくお引取り願いたい」と思ってしまいますもの。そのあたりのお金持ちの人の良さみたいなところが、この映画の味わいを柔らかいものにしています。しかし、ヒロイン側の知人を、お屋敷住まいの鼻持ちならない連中に描ききることもできたでしょうに、そうしなかったおかげで、ドラマとしてのバランスは、ひたすら迷惑な主人公という見え方になってしまいました。当初は、ヒロインの家族や知人をもっとやな奴に設定していたのが、後からそこそこいい人に変更したような感じなのです。そのせいか、ヒロインの妹は多少グレッグを見下したところもあるけど、結婚式直前にあそこまでひどい目に遭うことはないよなあって、同情してしまいました。ヒロインの両親も、ヒロインよりももっと挙式前の妹を思いやれと言いたくなりましたもの。

ラストはいわゆる予定調和で、安定した展開を安心して観ていることができます。ただ、飛行機の中で暴れる主人公だけは、妙にインパクトのある面白さで、本筋とは直接関係ないのですが、印象に残ってしまいました。まあ、手荷物に預けるとどこに届くかわからず、持ち込めば文句を言われるというあたりに、作者がかつて相当腹立たしい思いをしたとしか思えない展開は唐突ながら、かなり笑えるものがありました。

この映画の中では、娘を他の男にとられるという複雑な親心については、あまり深く突っ込むことはしていません。ですから、デ・ニーロはタイトルではトップですが、ベン・スティラーの方が主役で、デ・ニーロはメインの脇役という扱いです。彼は脇役を演じることが少ない人で、たまに脇にまわっていい味を出した映画というと「バック・ドラフト」「マイ・ルーム」くらいしかないという印象があります。「コップ・ランド」「スリーパーズ」などは、彼のよさが出ているとは私には思えませんでした。今回の役も、うまくこなしているのですが、あまり奥行きのある役ではないので、彼のような演技で見せる役者より、もっとアクの強い役者さんの方がいいかなという気もしてしまったのでした。


お薦め度×そつなくまとめたコメディとしてはマル。
採点★★★
(6/10)
この役をデ・ニーロがやる必然性はなさそうな。

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