written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
マシンが送り込んだセンチネルと呼ばれる殺人メカは、後72時間というところまで、地底を掘り進んできていまいした。このままでは、マトリックスから覚醒した人間の居住するザイオンは全滅の危機です。ネオ(キアヌ・リーブス)たちは、預言者に会うためにマトリックスの中に再び入り込みます。そこで、預言者に会い、全てのマシンのコアであるホストを壊さなければならないことを知り、そのためのキーメーカーを探し出すことになります。そんなネオたちの前に、あのエージェント・スミス(ヒューゴ・ウィービング)が現れます。もはや、彼はエージェントではなく、自分の意思を持つ存在として、マトリックスを闊歩し、次々に自分自身のコピーを創り出せるようになっていました。ネオたちは何とかキーメーカーを見つけて、全てのコンピュータの中心であるホストのいる場所へとたどり着くのですが、そこで驚くべき事実に直面することになるのです。
前作を観た時も、観てある記に書いたのですが、視覚的にはすごいけど、物語としてはどうってことない、という印象を払拭するまでには至りませんでした。視覚的な仕掛けの部分はお金もかかっているのでしょうが、前作を上回る凄さでして、見世物としての映画ということであれば、これはかなりのものだと申せましょう。アクションと視覚効果の融合ということでは、「スター・ウォーズ」の新作とか、「ロード・オブ・ザ・リング」といった映画でも、かなりのレベルになっていますが、人間のアクションを中心に据えて、そこから派手な見せ場に盛り上げるということでは、「マトリックス」の方が勝っていると思います。
今回も、ワイヤーアクションは目にも止まらぬスピードと、要所要所をスローモーションで見せるという仕掛けが有効に作用しあって迫力ある見せ場になっています。また、迫力ということでは、中盤のフリーウェイでのカーチェイスが、こういうハデハデアクションに慣れている目にも新鮮で、迫力満点の見応えがありました。また、非日常の実世界ザイオンの描写はまるで「スターウォーズ」を思わせるもので、ザイオンでのコミュニティのあり方などは、「スタートレック」の如きもので、逆にSF映画としてはありふれたものになってしまいました。
ストーリー的にも、人間がマトリックスという仮想世界で生かされていたという設定以上の展開はなく、人間とコンピュータとの生存競争でもなく、また、コンピュータが人間の何を抑圧しているのかもわからない設定なので、無理やり敵対関係を作ってみたものの、そこから先の物語を作り損ねている印象が強いです。まあ、3部作の2作目なので、次回の展開に期待したいところですが、どうもストーリーが取ってつけたように見えるのは、この映画の弱点と言えるでしょう。特に、これだけ視覚的に趣向を凝らした映画にもかかわらず、その視覚的な仕掛けがストーリーを語るのにほとんど役に立っていないのは、減点でして、ストーリーの一番肝心な部分が、セリフでしか説明されてないってのは、いかがなものかと思うわけです。
皮肉な言い方をすれば、仮想現実である映画は一種のマトリックスとも言えるのですが、その中では、結局見た目の奇抜さを表現できても、理論や物語を語ることはできないとも言えるわけです。でも、視覚的な仕掛けで物語を語るなんてのは、「2001年宇宙の旅」のような先達がいるわけでして、そう考えると、この映画って安いという印象に落ち着いてしまいます。香港アクションをSF世界に取り込んだり、SFアニメっぽく描くことでマトリックスの仮想世界感を表現したりといった、工夫は買うのですが、もともとが1アイデアを仕掛けで肉付けした映画だけに、物語を引っ張るのには無理があったように思えます。
役者も、全体に存在感が乏しく、前作で唯一存在感を見せたジョー・パントリアーノに代わるキャラクターを設定できなかったのは痛いです。モニカ・ベルッチがこの映画の中では浮いたルックスだったのが、印象に残るくらいでした。キアヌ・リーブス以下の出演者のアクションはかなりのものがあり、相当体を使った演技にはなっているのですが、俳優としての演技のしどころがなかったのは気の毒でした。ともあれ、観ている最中は、仕掛けのつるべ打ちを楽しむことができますので、観て元は取れる映画になっていますが、これは映画よりも、ゲームで楽しむ題材なのかもしれません。
お薦め度 | ×△○◎ | アクションや視覚的仕掛けを楽しむ、アトラクション風。 |
採点 | ★★★ (6/10) | 物語の弱さがわかっちゃうのがしんどい。どう決着をつけるのかしら。 |
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