written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
大学の人気者エル(リーズ・ウィザースプーン)は、彼氏にプロポーズされる期待で一杯のデートで別れ話を切り出されて大ショック。ブロンドの頭パー風の女の子は、ハーバードで法律を学ぼうとする彼の妻にはふさわしくないんですって。そこでエルはもともと優秀だった学力でハーバードに入学し、彼氏を取り戻そうとするのですが、既に彼にはフィアンセまでいたのでした。それでもメゲないエルは、頑張って成績を伸ばして、弁護士でもある教授にも認められ、ある事件の手伝いをすることになります。そこには彼氏もそのフィアンセも一緒に参加するのですが、果たしてエルの恋の行方はいかに?
リーズ・ウィザースプーンという女優さんはあちらでは結構人気あるらしいのですが、いわゆる美女タイプではないし、かわいい系ともちょっと違うキャラクターなので、どこがいいんだろうって思ってました。「カラー・オブ・ハート」や「完全犯罪」などを観た感じでは、そんじょそこらのネエちゃんをうまくこなす女優さんだなってところでした。今回は、堂々の主演ですが、なるほどポジティブで明るいキャラクターがこの映画を弾ませるのに貢献していました。
ヒロインはいわゆる派手めなブロンドのお嬢さん、その見た目のせいか、法科へ進んでエリートコースへ進もうとする彼氏から、「釣り合いがとれない云々」という理由で振られてしまいます。ここで、彼氏がウジウジと言い訳するあたりは、日本もアチラも変わらないようで、「ウチは名門で、家族の期待も大きいし」というあたりは、妙に納得できるものがありました。ここで、どうせあなたとは住む世界が違うのよと引っ込んでしまわないのが、ポジティブシンキングでして、じゃあってんで、自分も彼氏と同じ大学を受験して合格してしまうのです。ここは映画のファンタジーなのでしょうが、自分も彼氏と同じ境遇になればヨリを戻せるという短絡発想から、実際に即行動に出るあたりはかなり笑える展開になっています。
そして、ハーバードに進んでからは、その派手ないでたちで完全に周囲から浮いてしまい、「ここはお前なんかが来るところじゃない」と言わんばかりの意地悪もされてしまいます。そういう時、このヒロインは頭に血が昇ることはあるんですが、復讐しようとは思わないあたりがなかなか偉い。その分、頑張って学業で見返そうというところが大変好感の持てるキャラクターになっています。見た目も考えることもハデハデネエちゃんなんですが、基本的な考え方は至極まともで前向きというのがいいところです。決して他力本願じゃないし、ブリッコでもなく、自分の価値基準で物事を見て判断する彼女に対して、公私混同して彼女をモノにしようとする大学教授だとか、見た目でヒロインをトロいと決め付けてかかるモト彼氏とか、男性陣の情けないこと。賢明で一生懸命な女性と、アホな男性という図式はありがちなのかもしれないですが、ロバート・ルケティックの演出は男性陣に容赦がありません。まあ、原作と脚本が女性だからかもしれませんが、あきらかに女性優位なこの物語を、ルケティックがうまくコメディの枠に落としこんだという感じです。ホント、この映画の男性陣は隅から隅まで情けないのばっかです。一方の女性陣は、色んなのがいるんですが、最終的にみんなハッピーエンドになります。男性保護団体なんてのがあったらクレームが来そうな映画ですよ、ホント。
後半は、殺人事件の裁判となり、エルが意外な活躍をすることになるのですが、このあたりはいわゆるご都合主義的な展開ではあります。でも、もともと軽いコメディなので、不自然な感じはありませんし、ルケティックの演出も余分なところをとんとんと省いてテンポよくドラマを進めています。ラストでは、アメリカ映画の定番とも言うべき、主人公が演説をぶつシーンがあるのですが、この映画では、卒業式総代という設定で、スピーチをするので、まあ無理矢理な感じはなかったです。しかし、どんな映画でも、ラストで主人公にスピーチさせるんですよね、アメリカの娯楽映画って。まるで、スピーチできることが人間的成長の証明、一人前の証しだと言わんばかりです。このあたりに、日本との文化とは、かなり違うことを強く感じます。シャイな日本人は、こちらが思っている以上に、向こうではなめられているのかもしれないです。
ヒロインは衣装やヘアスタイルをとっかえひっかえ登場し、これがなかなかファッション雑誌を見るような趣があります。でも、私は、ヒロインよりも、地味目の恋敵セルマ・ブレアの方が魅力的でした。最初はどっかの名門お嬢様(=イヤな奴)として登場するのですが、ヒロインの真摯な行動に敬意を表するようになるという儲け役なんですが、ハデなヒロインに比べてイモっぽい感じ、でもマジメなお嬢さんという役どころを魅力的に演じきりました。次には主演作も控えているようで、注目したい女優さんです。
お薦め度 | ×△○◎ | 深読みしないで素直に観れば、かなり楽しめますよ。 |
採点 | ★★★ (6/10) | 男性陣が色ボケとバカばっかのはちょとつらいかな。 |
|
|