written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
メイン州の山の中。湖を調査していたダイバーが突然下半身を何者かに食いちぎられて死亡。死体から見つかった歯は恐竜みたいだけど、化石じゃない。狩猟監視官ジャック(ビル・プルマン)と保安官に、博物館から送りこまれたケリー(ブリジット・フォンダ)たちは、この事件の調査を開始します。そこに現れたのはワニの専門家の富豪ヘクター(オリバー・プラット)、てことはここにいるのはワニなの? てなこと言ってるうちに調査中の船がひっくり返されるは、保安官助手がやられちゃうは、もう大変な状況になってしまっているんですー。(ASAYAN風に読んで下さい。)
その昔といっても20年近く前でしょうか。一時期、この類のゲテモノ映画が、ホラーブームの影響で色々と公開された時期がありました。「ピラニア」「モンスター・パニック」「アリゲーター」「プロフェシー」などのゲテモノホラーは今でなら即ビデオリリースというレベルなのでしょうが、これが結構拡大公開されて、私みたいな怪獣オタクを楽しませてくれました。その後、この類のゲテモノホラーは細々と作られ続け、中には「トレマーズ」「レリック」のような佳品もあったのですが、最近は「アナコンダ」以来、お目にかからなくなっていました。今回の作品は、田舎の湖が舞台でかつ最初正体不明の何かが次々に犠牲者を出していくという展開と聞いて、まるで「13日の金曜日」だと思ったら、なんと、監督が「13金」のプロデューサーであり、パート3も監督した実績のあるスティーブ・マイナーだというので、ちょっと興味が出てきました。出来あがった作品は、ちょっとレトロな味わいもある典型的B級ゲテモノ映画になっていますが、それはそれでなかなか面白い作品に仕上がっており、ショックシーンや残酷シーンもあることはあるのですが、作品全体を流れる雰囲気はどこかのどかで、そのおっとりした味わいは捨てがたいものがありました。
ダイバーが下半身を食いちぎられて絶命するというショッキングなオープニングから、映画はテンション高く突っ走るのか思いきや、話は博物館の社内恋愛のゴタゴタになってしまうという妙な展開なんですよ。ブリジット・フォンダ演じる研究員は、プロフェショナルというよりは、OLの延長線で、恋人に振られた傷心旅行込みの出張という設定が笑わせてくれます。調査チームに後から合流するヘクターという男もワニにはくわしいらしいけど、ルックスも言動も完全にオタクが入ってます。狩猟監視官のジャックは一応マトモ風だけど颯爽としたヒーローには程遠いキャラですし、保安官はいつも文句タラタラの顔で一行と行動をともにするのです。このあたりの人物設定はいかにもというパターンですが、そこをきっちりと作ってあるので、ドラマが破綻しません。マイナーの演出はハッタリは少なめにして、この類の冒険アクションの定番を過不足なく積み上げていきます。
一体、その怪物の正体はというと、映画が始まってまもなくヘクターが登場してしまうので、でかいワニらしいということはすぐにわかってしまいます。まあ、もともとそういうサスペンスで引っ張る作りにはなっていませんので、後は、め一杯モンスターを暴れさせてくれればいいのですが、予算の都合でしょうか、期待したほどには、このモンスター君はスクリーン上で大暴れしてはくれません。そのあたりが、B級ゲテモノなのでしょうが、それでもストーリーは面白く展開していきますから、映画全体としては、期待を裏切るものではありません。
また、全体を流れるユーモアの部分も、多少「ユルイ」と思いながらも楽しく観ることができました。登場人物が、みんな1テンポ外したような連中ばかりというのも面白い趣向でしたし、岸の近くでエサを待つモンスターの絵というのが妙にマヌケで笑えてしまいましたし、泳いでいるヘクターの背後にいつの間にかいましたという絵のおかしさも、いかにもB級テイストがいっぱいという感じです。
視覚効果のチームに、デジタルドメイン、シネサイト、VCEといったチームが名を連ね、モンスター効果はスタン・ウィンストンのチームが担当して、それなりの迫力あるシーンを作っていますが、「アナコンダ」や「グリード」のような、主人公の生死を賭けた壮絶な見せ場にはなっていません。むしろ、モンスターを生かすか殺すかを中心にしたどこかのどかな展開になっているのが、これまた妙なおかしさを運んできます。牛をヘリでつるしてモンスターを誘い出す餌にしようというのも、妙にコミカルですし、結局、最後まで牛は食われず仕舞で、ラストシーンできちんと画面を横切るあたりの気配りもなぜか笑えてしまいます。全体として、大変行儀のよいゲテもの映画になっていると言えばよいのでしょうか。また、人間側に悪役を設定せず、無駄なドラマを極力排して1時間22分にまとめあげた点も評価したいと思います。
お薦め度 | ×△○◎ | 人が死んでも全体の雰囲気はどこか「のどか」。 |
採点 | ★★★☆ (7/10) | 定番をきっちり詰め合わせた1時間22分は悪くないです。 |
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