written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
恋人と同棲中のアリス(ヘザー・グラハム)は、ある日、街で目が合った男と一瞬にして恋に落ち、そのまま、彼の家でコトに及んでしまいます。彼の名はアダム(ジョセフ・ファインズ)といい有名な登山家ですが、山岳事故で恋人を失っていました。でも、二人は一気に燃え上がり、アリスは恋人とも別れ、遂にアダムのプロポーズを受け入れてしまいます。しかし、幸せ絶頂のアリスに無言電話や、アダムの過去をほのめかす脅迫状が舞い込んできます。それでも、二人は結婚式を挙げ、夫婦になるのですが、アリスの中で、彼の過去への疑惑が段々と頭をもたげて来ました。彼のことを何も知らずに結婚したんだけど、この人、ちょっと変かも。
陳凱歌(チェン・カイコー)監督のアメリカでの初監督作だそうです。この人の映画は「始皇帝暗殺」しか観ていないのですが、歴史絵巻のようで、結局3人の登場人物に絞り込んだ演出が印象的でした。この映画でも、主演二人以外はほとんど印象に残らない演出で、普通だったら、曲者イアン・ハートをあんな使い方はないよなあって思いましたもの。
物語としては、よくあるパターンと言っていいと思います。結婚してみたらダンナには何か秘密があるらしいということ。古くは「断崖」から、「幸せの向こう側」など、2時間ドラマでもお目にかかるパターンです。この映画の場合、そこにセックスの要素が大きく関わってきます。アリスを引きつけたのは、何と言ってもアダムとのセックスなのですから。そして、その部分をかなり丁寧に描写した結果、R-18指定、昔風に言うと成人映画になってしまいました。話題がそれますが、R-18ってのはつまらない表現ですねえ。成人映画という時のワクワク感のかけらもありません。
ともあれ、この映画は、その部分の描写に結構時間を割いていまして、ヘザー・グラハム嬢も気前よく脱いでくれています。ところが、意外なほどこれがいやらしくないのですよ。決して誉めてるわけじゃないですよ。この映画は、アダムとのちょっと変態入ったセックスが疑惑のカギにもなるのですから、その部分はきっちりエロに撮ってくれないと成立しないのです。なのに、その部分が淡白に見えてしまうのです。これは、ヘザー・グラハム嬢のキャラのせいかもしれません。すごく、普通っぽくて、かわいい系のヒロインになっているので、性の深淵(我ながら、レトロな表現)にはまりこむという設定にリアリティが出なくなってしまいました。普通のOLが素人ナンパエッチビデオに出てしまったような感じなんですよ。さらに困った事に、そのヘザー嬢の普通キャラがドラマをかなり救っているのです。
ミステリーの部分は、かなり無理のある展開でして、オープニングの登山シーンなど、後半の展開への伏線ともなり得ませんでしたし、疑惑を持ちながらもなかなか行動を起こさないヒロインには、かなりイライラさせられるところありました。でも、ヘザー嬢の持つ、そんじょそこらの軽いOL風キャラのおかげで、あまり賢くないヒロインに説得力が出たのですから、皮肉なものです。一体、ダンナの正体は何者なのか、どういう過去を持っているのか、ヒロインに脅迫状を送りつけてくるのは誰なのか、一応、謎は登場するのですが、その結末は、2時間ドラマ慣れしている私には、予定調和にしか見えませんでした。また、陳凱歌の演出が、このミステリーの部分に重きを置いていないような演出で、スリルとかサスペンスといったものが、あまり感じられないのが残念でした。
マイケル・コールターのキャメラはスリリングな絵を切りとっていますし、パトリック・ドイルの音楽は、かなり不安感を煽るような前面に出る音作りをしています。それらのサポートを無視するような演出、展開に、何かバランスの悪さを感じてしまいました。まあ、女性客は、二枚目ジョセフ・ファインズを楽しめれば、男性客は、ヘザー・グラハムのかわいさと脱ぎっぷりを楽しめれば、モトは取れるというところでしょうか。それとも、私の観方が浅いのかなあ。
お薦め度 | ×△○◎ | ヒロインの普通っぽさにかなり救われてますけど。 |
採点 | ★★★ (6/10) | エッチかミステリーか、どっちか片方でもきっちりしてくれれば。 |
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