written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
ラジオの交通情報キャスター、トム(アシュトン・カッチャー)とお金持ちのお嬢様サラ(ブリタニー・マーフィ)は知り合ってすぐに同棲、一気に結婚、そしてハネムーンに飛んだはいいものの、ホテルで騒ぎを起こすは、ケンカはするはで、帰ってきたときは完全に破局状態。いわゆるアチラ版成田離婚の体なんですが、これで、シリアスドラマにならないところが、まあ、お気楽ラブコメの定番なのでした。
別にラブコメは嫌いじゃないんだけど、日本のその類のドラマは観る気がしません。シングルオヤジから見ると、色恋沙汰を最優先で行動する若者が、うらやましい、気に食わない、うざったいってところがありまして、要は、若いモンのやることは虫が好かないのでございます。何しろ、テレビでやってるのの延長線みたいのを、通勤の帰りの電車なんかで見かけると、「けっ、プータローがいっちょ前に愛だの恋だの、しゃらくせえ」という寂しくも投げやりな気分になってしまうのでした。その点、向こうのラブコメはいいね、日本語話さないし(万一、日本語吹き替えでも「ええ、そうよ、愛してる、私は彼を心から愛してるの」なんて、絶対日本人が話さない日本語ですからね)、出てくる連中も近所でお見かけすることはまずない方々だから、非常に嫉妬も羨望もやっかみもなく楽しむことができるわけです。
でもって、この「ジャストマリッジ」なんですが、いかにもハンサムな好青年と、金持ちのカワイイお嬢が恋に落ちて結婚という発端からして、抵抗なく入ることができるわけです。自分の身近でやられたら、「そんなの出来過ぎだろ」という嫉妬ツッコミが入るところをすんなりとクリアできるのですね。いわゆるツカミの部分でつまづかないってのは、大きいですねえ。そして、その後の展開なんですが、この男の方が見た目の違わすかなりバカなのが、また点数高いのですよ。そうそう、天は二物を与えてはいけない、グッドルッキングなアンちゃんはバカでなくっちゃ。そのバカに若干自覚しているらしくて、妙に気取ったりつっぱることもしないのが殊勝で、よしよし憂い奴よのうって感じ。アシュトン・カッチャーの反省するバカというキャラクターがなかなかにいい味を出してまして、新婚旅行先で見せるバカっぷりも全然弁護の余地なしってところが逆に好感度を上げてます。
一方のヒロインはお金持ちのお嬢様の割にルックスが庶民的(品がないと言うのも可)なブリタニー・マーフィなので、こんなバカな男に惹かれるのもさもありなんの説得力があります。時々、妙に少女趣味になっちゃって落ち込んだりするのもご愛嬌、自分と彼氏とのギャップを若さゆえに扱い損ねている発展途上のヒロインを好演しています。「17歳のカルテ」や「サウンド・オブ・サイレンス」で壊れたヒロインを演じてきた彼女にしては、軽薄キャラを軽々と演じているように見えますが、どうしてどうして、こういうヒロインを好感を持たせるように演じるのはなかなかの才能だと思った次第です。かわいく見せるタイミングを誤るとただのブリッコになってしまいますからね。「8Miles」でリアルなヒロインも演じる力量を見せた彼女ですが、こういうコメデイでの活躍も期待したいところです。
傍目から見ればバカップルな二人を、ショーン・レヴィの演出は突き放す寸前のところまで距離を置いて描いています。主人公に思い入れをせず、困ったお子ちゃまたちに対する視線がそこそこの温度で、冷たくなり過ぎない人肌加減ってところがこの映画のいいところです。観ている方も「やれやれ」「何だこいつら」と思いながらも、ラストの定番のハッピーエンドをいい気分で受け入れることができます。何と言うか、すんごく「のほほん」としてるんですよね。別に二人の間に障害があるわけでもないし、病気持ちでもないし、とんでもない悪役が登場するわけでもない映画なんですが、それでも、紆余曲折はあって、多少の波風は乗り越えて、何となくハッピーエンドにたどり着く、こんな感じなんです。でも、ラブコメのコアな部分ってそんなもんじゃないかなあって思うわけでして、この映画はラブコメの中でもかなり直球勝負な作品ではないでしょうか。そんな直球ラブコメなのに、若い者に嫉妬と偏見を持つオヤジ(つまりこの私のこと)も抵抗なく楽しめるってのは、やはり作りがうまいのかなあって思ってしまうのです。考えてみれば、日本のこの類のドラマで、反省するバカってあんまり観たことないです。まあ、それ以前に、日本の若者の出るドラマが生理的にダメってこともあるんですけど。
お薦め度 | ×△○◎ | お気楽ラブコメの1本だけど、主人公がバカなのが好感度大? |
採点 | ★★★ (6/10) | こういうのを観て若い世代はどういう感想を持つのかしら、共感するのかな。 |
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