written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
恐竜と直にご対面なんてもうこりごりのグラント博士(サム・ニール)ですが、研究の資金不足から、やむを得ず、金持ち風の男ポール(ウィリアム・H・メイシー)に持ちかけられた、ソルナ島のガイドを引き受けてしまいます。チャーター機で向ったソルナ島はいわゆる恐竜の楽園なんですが、ポールはなんとそこへチャーター機を着陸させてしまいます。実は、8週間前にこの島で行方不明になった自分の息子を探しにこの島へやってきたのです。しかし、恐竜の一撃で飛行機はあえなくジャングルに不時着してしまいます。息子どころか自分の命まで危うくなってしまった皆さんの運命やいかに。
前の2作は、スティーブン・スピルバーグ監督がこれでもかと言わんばかりに登場する子供をイジメまくった、稀に見る児童虐待映画だったのですが、今回は監督がジョー・ジョンストンに代わり、映画としては、ライトで見せ場をつないだ単純娯楽映画に仕上がりました。前2作のような大作っぽいところは微塵もなく、また、登場人物と観客を極限まで引っ張るサスペンスもなく、みんなで「おおスゲエ」と言って楽しむ映画になっています。前2作を観て、観終わって疲れるから、このシリーズはもういいやとお思いの方にも、オススメできる内容になっています。
また、前2作では徹底して恐怖の対象であった恐竜たちにキャラクターが与えられ、ラプトルは狡猾で獰猛な悪役、翼竜はさっそうとしたカッコいいワル、でっかいスピノサウルスは愛嬌ある暴れん坊という感じです。もちろん、人を食っちゃう怖い皆様ではあるんですが、ジョンストンの演出は、人間側の視点からそのコワさを描くのではなく、一歩退いた視点で捉えていますので、人間と恐竜の追っかけっこが、時としてコミカルに見えてくるのです。飛行機の機体の中の人間が恐竜に転がされるシーンなど、生きるか死ぬかの場面なのに、これがミョーに笑えてしまうのですね。翼竜の登場シーンは「恐竜百万年」を彷彿とさせるのですが、ここもテンポよく見せて、それがどこか笑いをとってしまうのです。なるほど、こういう見せ方をされることで、どんどん恐竜側のキャラクターが引き立ってくることに感心してしまいました。
前2作は、ジュラシック・パークそのものの存在は肯定的に描かれていたのですが、スタッフからマイケル・クライトンが消えたせいか、それとも宗旨変えをしたのか、ジュラシックパークを神をも畏れぬ人間の所業だと言わせているのは面白いと思いました。それとも、ここ数年でアメリカの自然保護観が変わってきたのかしら。
人間側のドラマも、前作よりはきちんと描かれるようになっていまして、その中心にあるのは、家族の和解というのも意外です。ウィリアム・H・メイシーとティア・レオーニ扮する元夫婦が息子を探すために、恐竜の島にやってきます。最初はぎくしゃくしていた関係も息子探しの中でお互いの存在を認めあうようになるというもの。でも、その見せ方も感動を盛り上げるというよりは、ちょっと退いた演出が、笑いを誘います。周りが恐竜だらけで、いつ襲われてもおかしくない状況なのに、家族で抱き合って昔の思い出話をしてるという絵は、かなりおかしいのですよ。メイシーとレオーニのコミカルな味わいが、この映画に軽快なテンポを与えていまして、うまいキャスティングになっています。
ラストは、「え、これでおしまい?」という呆気なさもあるのですが、93分という短さの中で、見せ場を盛り込んで、登場人物と登場恐竜たちのキャラクターを立たせるのに成功しているのは見事です。結末の唐突な決着もなかなか笑えるものになっていまして、感動とか文明批判といったものとは無縁な、ひたすら娯楽映画にマトを絞った作り方は、賢いと言えますし、まだ続編を作りたいという商売っ気も感じさせます。恐竜はCGとメカニカルなものをうまく使い分けているようで、特にメカニカルな恐竜の質感が見事でした。
音楽は、ジョン・ウィリアムスのテーマを使って、「マトリックス」のドン・デイビスが担当しています。第1作のテーマをあちこちで使いすぎで、一方、デイビスのオリジナルの部分が印象に残るところがないという、前作の呪縛にとらわれてしまったという感じなのです。最近の007シリーズで、デビッド・アーノルドが、「ジェームズ・ボンド」のテーマを絶妙なタイミングに使いながら、自分のオリジナリティも出しているのに比べると、物足りないものを感じてしまいました。今回の映画は、全体を通して、フットワークの軽さ、遊び心といったものが感じられたのですが、音楽だけはそれに乗りきれなかったようです。
お薦め度 | ×△○◎ | 人の生き死にをコメディで見せるあたりすごい。 |
採点 | ★★★☆ (7/10) | 最高の技術でつくりあげたゲテ物娯楽映画。 |
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