コヨーテ
INFERNO


2000年03月20日 神奈川 平塚シネプレックスシネマ2 にて
B級流れ者アクションの典型、娯楽映画としてはOK。


written by ジャックナイフ
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エディ・ロマックス(ジャン・クロード・ヴァン・ダム)は戦友のジョニー(ダニー・トレホ)にあうために砂漠地帯をバイクで疾走します。かつて兵隊だった彼は自分の死に場所を探していたのでした。エディはホーガン3兄弟と諍いを起こしてバイクを奪われて殺されかかるのですが、ジョニーに命を救われます。バイクを取り戻すべく町にやってきたエディですが、ホーガン一家とヒーズンズが対立中で無法状態。そこで、エディは一計を案じて、町の大掃除を思い立つのですが....。

ジャン・クロード・ヴァン・ダム主演、監督は「ロッキー」のジョン・G・アビルドセンで音楽がビル・コンティというと、そこそこメジャーな印象も受けるのですが、アメリカの映画データベースによるとこれはビデオオンリーだそうで劇場公開はされなかったようです。と、なるとこの映画を劇場の大スクリーン、ドルビーデジタルサウンドで観られたのは、結構自慢できることなのかもしれません。では、映画としてダメなのかというと、確かに「ここがスゴイ」と言えるところはないのですが、「そこそこ面白いんじゃない?」って言えるくらいの映画にはなっています。もともと、ヴァン・ダムは、主演映画はたくさんありますが、どれもいわゆるBクラスの映画ばかり、「サドンデス」「タイムコップ」あたりがメジャーになるのでしょうが、その後が「マキシマム・リスク」がそこそこの出来で後はぱっとせず、「ユニバーサル・ソルジャー2」なんて予告編だけで、もう観る気も起こりませんでした。今度はアヴィルドセン監督作品ということで少しは期待してスクリーンに臨みました。

のっけから、心象風景のような展開です。砂漠地帯をコヨーテと一緒にバイクを走らせる主人公。ウイスキーのポケット瓶を飲みながら「死ぬ赦し」が欲しいと友人ジョニーの幻影に話しかけるあたり、そして、その友人がネイティブアメリカンで、コヨーテがお友達という設定がいかにも神秘的な印象を与えます。でも、ヴァン・ダムの映画にしては、意外な導入部ではありますし、その勿体のつけ方も見様によって期待させるところもあります。そして、話が抗争渦巻く田舎町へ移ると、今度はマカロニ・ウエスタンのノリになってきます。田舎ヤクザが食堂やホテルの老主人たちに集金にやってきては、ついでにやりたい放題をするという典型的な悪役でして、それを見た主人公が抗争中の両陣営を共倒れにさせようというのは、「用心棒」のパクリですが、まあ、もはやシェイクスピアみたいな古典になっちゃってる「用心棒」を今更パクリというには及ばないでしょう。

でも、お話がこの小さな田舎町に来ると、そこに居合せるじいさん連中(含むばあさん一人)が主人公を食ってしまうので、何だか妙な展開になってきます。「カラテ・キッド」の縁で出てるのか、パット・モリタ扮する老人は便利屋と称しながら嬉々として死体の後始末をしますし、ビル・アーウィン演じる雑貨屋のオヤジは酸素ボンベがないと死にそうなのにタバコすぱすぱ吸ってるし、「007トゥモロー・ネバー・ダイ」で妙におかしな殺し屋を演じたビンセント・シアヴェリは、バーの主人のくせに剣術が達者だったり、プリシラ・ポインター扮するホテルのおかみさんは毒蛇抱えて「主をたたえよ」なんて歌っているなど、なんだか変なメンツばっか。一方の悪役側はほとんどその他大勢状態であまり生彩がないのですよ。また、ヴァン・ダムといい仲になる食堂の(トウのたった)孫娘もヒロインとしては華がなかったです。

でも、その老体軍団のインパクトのおかげで結構映画にメリハリがついて面白くなりました。逆に、ワンマンヒーロー映画を支えるには、ヴァン・ダムでは力不足ということにもなりましょう。これまでの彼の映画は設定とかストーリーの面白さがあると、そこそこ面白く観られたですけど、キャラに頼った「ダブル・チーム」は今イチだったですもの。今回の「コヨーテ」はストーリーとしては非常に単純でヒネリも何もない展開でして、さらに派手なアクションを見せるには、ヴァン・ダム自身がもうしんどいのか、体技の部分での見せ場がほとんどなく(お約束の尻見せはありましたけど)、金のかかった仕掛けもないのですが、それでも、アビルドセンの手堅い演出と脇の老体軍団のおかげで、娯楽映画としての水準はクリアしています。チャールズ・ブロンソンが1980年代にJ・リー・トンプソン監督と組んだ一連の作品(「太陽のエトランゼ」「メッセンジャー・オブ・デス」「禁じ手」「地獄で眠れ」など)と似たような印象がありまして、ヴァン・ダムがこの線で進むのは、個人的には歓迎したい気持ちがあります。まあ、ブロンソンとヴァン・ダムの違いは大ヒット作(もしくは代表作)がないということですが、ここは一つ脇役に回ることなく、主役専門で頑張っていただきたいものです。

アクションあり、銃撃戦あり、爆破あり、と一応のメニューはそろっていますが、その程度のことは別にどの映画もやっていることです。他の映画になくてこの映画にあるものというと、結局、定番の展開と、老体軍団の面白さということになってしまうのですが、その「定番」と「老体」がなかなか侮りがたいものがあるのですよ。


お薦め度×元気なじいさん連中がやけに印象的。
採点★★★
(6/10)
2本立なら同時上映だけど捨てがたい味わい。

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