ハウルの動く城
Howl's Moving Castle


2005年01月16日 神奈川 川崎チネチッタ8 にて
魔法でおばあさんにさせられた娘と魔法使いのお話。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


国も時代もわからないのですが、ある国に動く城に乗るハウルという魔法使いがいたんですって。帽子屋の娘がそのハウルと口を聞いただけで、魔女に呪いをかけられて90歳のおばあさんに変身させられてしまいます。家を出て山野をさまよううちにハウルの城に出会い、そこに住み込みのお手伝いとして居座ってしまいます。時は戦争の時代、夜毎日毎に街が戦火に焼かれています。そんな中でハウルは何をしようとしているのでしょう。そして、おばあちゃんになってしまったヒロインの運命は?

宮崎アニメは最初の頃はあまり見てないので、コアなファンではないのですが、「紅の豚」あたりから、ああこういうのは面白いなと思って観続けています。この系列の映画では、宮崎演出ではないのですが、「おもひでぽろぽろ」ですとかがお気に入りで、「千と千尋の神隠し」も面白かったです。「もののけ姫」や「となりの山田君」のような説教くさいのはあまり好きではないというくらいのファンです。今回は原作ものということと、前評判がすごかったので、そこそこの期待を持って臨みました。

要は、魔法をかけられた女の子と、イケメン魔法使いの恋物語のようです。話の核となる部分がラスト近くになってようやく登場するので、それまでに登場したキャラとか設定のほとんどが積み残されたままという印象で映画が終わってしまうのがまず気になりました。そこに至るまでの物語も長いという印象でして、オープニングから、中盤にかけて話がいろいろと膨らむのに、それらの蒔かれた種が摘み取られないまま映画が終わってしまうのは、これはもともと続編を狙っているのかなという気もしてしまいました。原作の一部をピックアップして映画化したのかも。

それにしても、戦争の描き方がかなり変。この映画の中で、舞台となる国が戦争状態にあるのはわかりますが、それはこの物語のサブプロットでしかない筈で、それに対しての奇妙な思い入れと、ぶっちぎりの決着がものすごく居心地の悪さを感じます。最初から物語が内面を向いているのなら、そういう描き方をすればよいのに、話をとっちらかすので、最後には収集がつかなくなったという印象なのです。

場面場面でヒロインが娘になったり老婆になったりするのはもちろん演出なのでしょうが、若い娘が白髪のままなのは、あれは何の意味だったんでしょう。特に、ヒロインの表情が場面によって丁寧だったりラフだったりと統一感がないので、白髪の少女も単なる手抜きじゃないのと勘ぐってしまうのです。

面白い趣向もあるんですが、それがクライマックスと結びついてこないのが惜しまれます。それに、これまでの彼の作品にしては、描写が饒舌というか、あまり観る方のイメージにゆだねる部分がないので、かかしのキャラくらいしか、観客のイマジネーションで遊べる部分がないってのも、ちょっと残念でした。要介護老人になっちゃう魔女のキャラなんて、呪いかけた本人がボケちゃうなんて、なんだかマヌケに素敵な設定で面白いんだけど、これが悲惨な戦争の部分とのバランスがとれてないのですよ。戦時中だから、全てのエピソードを悲惨にせよという気は毛頭ないのですが、老いの生活感と、戦争のいいかげんな結末はやはり水と油のように思えてしまうのでした。

声優では、倍賞千恵子は娘の声でも無理はなかったように思いました。キムタクは、キザなセリフはいいのですが、後半のシリアスな部分に入るとモロにキムタクが前面に出てしまうのが今一つという感じでしょうか。まあ、世間の評価が高いから、色々とケチつけたくなるところが目立ってしまったのかもしれません。


お薦め度×長い、わかりにくいってのは原作読んでないから?
採点★★★
(6/10)
題材をいっぱい盛り込んでるのに消化不良。私が消化できないだけ?

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