ゴジラ×メカゴジラ
Godzilla x Mechagodzilla


2002年12月28日 東京 日劇PLEX2 にて
対ゴジラ用の究極兵器はメカゴジラだったのです。


written by ジャックナイフ
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1954年に一度は海の藻屑と消えた筈のゴジラがまたしても出現、多大な被害をもたらしました。特殊生物自衛隊としては、ゴジラの再襲撃に備えて、それを凌ぐ兵器として、メカゴジラ機龍を開発します、オペレーションチームにはかつて対ゴジラ戦で失策をした茜(釈由美子)も参加しています。孤児として育った彼女は前回の失策もあってチームの中で孤立しているようです。そして、お披露目の日、何とゴジラが上陸してきたではありませんか。早速、ゴジラを迎え撃つべく発進した機龍ですが、ゴジラの声に誤作動してしまい、暴走した挙句、町を破壊してしまいます。機龍部隊の存続も危ぶまれる一方、人類にはゴジラに対抗する術は、機龍以外には残されていなかったのです。

ハム太郎の併映作品になっちゃった感のあるゴジラシリーズなんですが、それでも、お正月作品になっているあたりは、まだ頑張っているなあって思います。でも、今回は、タイトルからして、新鮮味がありません。「ゴジラ対メカゴジラ」「ゴジラVSメカゴジラ」と過去に2本も同じタイトルの映画があるのですから。要はゴジラとロボットのゴジラが戦うというお話でして、「対」では、宇宙人の侵略ロボットだったのが、今回は自衛隊側の兵器という設定になっています。考えてみたときに、ゴジラと戦うのにゴジラの体型だったら五分五分になっても有利にはならないだろう、対ゴジラ兵器なら別のアプローチがあるだろうという突っ込みは置いとけば、怪獣映画としての段取りはきっちりと踏んでいます。

ただし、私が子供の頃に観た怪獣映画というのとはかなりイメージが違っていまして、自衛隊の制服隊員が主人公ということや、アウトローのヒロイン、そして兵器としてのロボットという設定は、最近の戦隊ものや、ウルトラマンを見るような気分になってしまいます。テレビのスケールアップ版のような印象なのです。テレビでは観ることのできない映画という棲み分けが曖昧になってきているのかもしれません。さらに観ていて思ったのは、孤立するヒロインは「帰ってきたウルトラマン」みたいですし、戦闘ロボットとしてのメカゴジラは「レッドバロン」であり、1970年台の特撮ドラマの集大成のようでもありました。新鮮味がないと言えば、その通りですが、定番を押さえているという見方もできましょう。

1時間半弱の映画になってますので、ゴジラとメカゴジラの闘いをメインにシンプルな展開になっており、映画としてテンポよくまとめているという印象です。今回と自衛隊の特殊部隊とゴジラとの闘いというところに物語が絞り込まれていますので、ヒロインの茜を中心にドラマが展開していくのですが、このヒロインが硬質な印象が強くて、あまり共感を呼びにくいキャラになっています。ところが、これを釈由美子が演じることで、キャラクターに丸みが出て、最終的にバランスのとれたヒロインになっています。登場シーンの彼女を見たときはどうなることかと思ったのですが、ラストではしっかりとヒロインになっているのが意外な発見でした。

そのヒロインが引き立った分、今回のゴジラは影が薄いです。ほとんど、メカゴジラの物語の発端のためだけに登場したような感じなんです。ですから後はメカゴジラを引き立てるためにひたすら悪ぶって、強そうに見せるという、座頭市に出てくる敵のヤクザの用心棒みたいな役回り。ま、釈由美子とメカゴジラが主人公なんだから、ゴジラの扱いはこんなものにならざるを得ないのでしょう。かつて、「メカゴジラの逆襲」でも同じように脇役風の役回りを演じさせられたゴジラですが、あの時はまだヒーローとしての見せ場を与えられていただけ、まだマシだったようです。

手塚昌明の演出は子役のセリフ回しが危なっかしいのを除けば、出てくる人間の居場所をきちんと押さえていて、細やかで丁寧な演出ぶりなのが好感が持てました。ただ、前作「ゴジラVSメカギラス」でブラックホール作成装置というムチャな兵器を使わせたのと同様、今回も絶対零度光線という最終兵器を無造作に登場させているのが気になりました。メカゴジラよりもそっちの方がよっぽどヤバいだろう思うのですけど、その辺の無頓着さは承知の上の開き直りのようにも思えますけど、やはり気になってしまいました。特撮部分は、合成などはよくできているのですが、肝心のメカゴジラに肉弾戦をさせた部分はあまりうまくありません。中に入っている人間の動きにしか見えないメカゴジラのアクションは、やめときゃいいのにという感じでした。

大島ミチルの音楽は、「ゴジラVSメカギラス」と同じテーマを使って、ゴジラを描写していますが、これが大変重量感のある音になっていまして、ゴジラが引き立つのですが、その一方、メカゴジラ側に印象に残る曲がなく、音楽だけはゴジラメインになっているので、映画とのバランスがとれなかったという印象です。


お薦め度×脇の悪役キャラのゴジラをどう見るかで評価が分かれるかな。
採点★★★★
(8/10)
あんまりかわいくないヒロインのキャラを釈由美子が救ってるって感じ。

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