ゴジラ・モスラ・キングギドラ・大怪獣総攻撃
Godzilla Mothra Kinggidotrah


2000年12月19日 東京 109シネマズ木場1 にて
ゴジラと護国神獣の一大決戦なのだ。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


日本をゴジラが襲ってから50年の平和な時間が流れ、人々の心からその前の大戦の記憶も薄れた頃、突如、ゴジラは目を覚ますのです、誰かの怨念と怒りをその瞳のない目に秘めて。BS放送局のレポーター由里(新山千春)は日本の伝説の取材から、「護国聖獣傳説」という日本を守る怪獣の存在を知ります。そして、彼女の行く先々でその怪獣、バラゴン、モスラ、キングギドラが封印を解かれてその姿を現し、ゴジラに立ち向かっていきます。果たしてゴジラから日本の国を守ることができるのでしょうか。いよいよ横浜みなとみらいでの決戦の火蓋は切って落とされたのでした。

今度のゴジラはまたしても、お話をリセットして、第1作の続編ということになっちゃいました。こんなにお話のつながりがないんじゃ、もはやシリーズとは言いがたいゴジラシリーズなんですが、今回は何と平成ガメラの金子修介が監督として、大谷幸が音楽として参加という、またしても特別編みたいな一品です。役者も平成ガメラのメンバーやゴジラシリーズの関係者のカメオ出演とかもあって、かなりマニアを意識した作りと言えましょう。

今回のゴジラの出現は、忘れられた魂たちの怒りということらしくて、それが放射能で狂暴化した爬虫類であるゴジラに乗り移り、東京目指してやってくるというのです。一方、昔の人は国を守るための備えとして3匹の怪獣を持っていて、その謎を知る老人がその封印を解いて回っているようなんです。その結果、進撃するゴジラの前に次々に怪獣が立ちふさがるのですが、ゴジラを倒すことは容易ではありません。と、いうわけで、今回のゴジラは何だか怨念と神様の代理戦争みたいな図式になります。とはいえ、基本的な見せ方は怪獣対決ものということになりますから、理屈の部分を取っ払えば、怪獣の出番がかなり多い映画ということになります。

人間側のドラマはヒロインとその父親である防衛軍の司令官の葛藤をメインに、なかなかドラマチックな展開を見せます。新山千春と宇崎竜童という濃い親子なんですが、父親が完全に軍人でして、こういうのが主人公の映画ってのはかなり珍しいですが、結構かっこよく見えましたし、クライマックスはなかなか盛り上がりましたもの。また、個々の登場人物の描写も丁寧で、これまでのゴジラ映画とは一線を画す出来栄えとなっています。防衛軍の面々が、それぞれ小さい役でもキャラを与えられているのは好感が持てました。ゴジラの描写もこれまでになく容赦のないもので、多分ゴジラシリーズの中でもっとも犠牲者の数が多いのではないでしょうか。今回のゴジラは黒目がないというのが不気味な印象を与えるのですが、その一方、ゴジラが何か別のものに動かされているという感じがして主役としてのキャラが弱くなってしまったようです。

ただ、肝心の怪獣対決となると、これが今一つ迫力に欠けるのですよ。前座マッチとでもいうべき、ゴジラとバラゴンの箱根での闘いは、群衆や実景との合成カットが見事で、迫力ある見せ場になっていたのですが、モスラやキングギドラの闘いとなると、怪獣の巨大感をあまり出ていないのです。また、後半はやたらと魔法、奇蹟の展開になってしまい、怪獣同士の肉弾戦というのとは違う展開になってしまうのです。まるで、RPGを観ているような気分になってきて、何かこれ怪獣映画と違うぞって気がしましたもの。別に怪獣映画はかくあらねばという理屈は、言いたくないのですが、怨念と護国神の代理戦争だったはずの怪獣戦争が、もろに怨念と護国神の闘いに変わってきてしまうので、そこにいる怪獣が将棋の駒みたいにちっちゃく見えてきてしまうのです。やられては甦るキングギドラを見てるうちに、怪獣の存在がどんどん後ろに引いてしまうのを感じました。

この作品で登場する、モスラ、バラゴン、キングギドラの3匹の怪獣は、過去の映画を無視した新設定、新怪獣ということになりますので、前のモスラシリーズを観ていた人とか、さらに昔のゴジラシリーズを観ていた人には、かなり奇異な印象を与えることでしょう。普通ならシリーズものというのは一見さんに敷居が高いというのが相場なんですが、これは逆に、昔からのごひいき客を無視した作りになっています。併映に「とっとこハム太郎」を持ってきたのも、これまでのごひいき客よりも、お子ちゃまたちを優先した結果なんでしょうね。でも、その割には、盛大に人が死ぬ映画になってるし、一体どこにターゲットを置いた映画なのかしらん。ミニハムズ目当ての、モーオタ(モーニング娘。オタク)だったりして。


お薦め度×人間部分のドラマは結構盛り上がるぞ。
採点★★★☆
(7/10)
怪獣がRPGのキャラ化しているのが今イチ。

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